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8話:勇者のプロローグ
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「では勇者様行きましょう」
ベッドから出てきた勇者とこれから三日間の計画を相談して了承をもらった。
一日目は町へ行く。
「異世界観光へ」
「うん。 その前に敬語じゃなくていいよ。 堅苦しいの苦手なんだ」
「分かった。 じゃあ佐々木くん行こうか」
「異世界なのに名字呼びなんだ……」
この世界では名前呼びが普通だけれど、勇者相手だと日本の感覚が蘇ってしまって気恥ずかしくなったんだ。
この町は中央に城があり、そこからすり鉢状に建物が立ち並んでいる。
全部を一気に回るのは足が死ぬので、勇者の希望と俺のオススメを回るつもりだ。
~いくつかの店と反応をダイジェスト
冒険者ギルド、奴隷商、魔法店、武器屋→勇者
ポータル広場、道場、職業紹介店、精霊石
まずは異世界の大定番、冒険者ギルドだ。
「おお~思ったよりでかい!」
石造りの堅牢な三階建ての建物を見上げて勇者が楽し気に叫ぶ。
「ここはギルドの本部だからね」
しかし中へ入ると勇者はがっかりするかもしれない。
「思ったより静かだ」
「うん、冒険者は荒くれで野蛮なイメージを持たれがちだけど、実際は国が管理している団体だからかなり教育水準が高い。 みんな国家試験を突破しているから当然だけど」
物語のように誰でもなれる職業ではない。 戦い生業としているのだ。 国だって危険な人物に剣を持たせたくはないし、国民も安心して眠れないだろう。
「じゃあ国家公務員ってこと!?」
「そうだよ。 王に仕える騎士と、民を守る冒険者って感じ」
「ええ……全然自由じゃないじゃん」
確かに物語ほど自由ではないが、手続きを行えば好きな場所へ所属を変えることもできるから強い資格を持っている派遣社員のようなものだろうか。
俺は少し意気消沈した勇者佐々木を連れて、奴隷商へやってきた。
「やっぱり楽園はあったんや」
ごくり、生唾を飲んでいそうな佐々木を生暖かい目で見つつ、俺は中へ入る。
「すみません、奴隷のリストを見せていただきたいのですが」
ジャンル別に別れた何冊かのリストを佐々木に渡すと、彼は「これが奴隷……?」と言って首を傾げた。
「昔に行われていたような人身売買のようなものは今はないんだ」
ここでは物語にあるような人を物のように売り買いする奴隷制度はなく、奴隷商とは終身雇用の人材を斡旋する場所となっている。
「ここで雇った人材はちゃんと面倒を見ないといけないし、奴隷商も信用のある人しか相手にしない。 その変わり教育もちゃんとされてて即戦力になるんだ」
「思ってたのと違う……」
「佐々木が思い描いているような奴隷はまともな国ではないんじゃないかな? 王の声が届かない辺境の奥地の集落とかならあるかもしれないけど」
元の世界の正社員と同じようなものだ。 安定した収入を求めた人は奴隷になりたがる。 その代わり自由は制限されることは変わらない。
「こっちも見る?」
「これは」
「娼婦のリスト」
「い、いや大丈夫です!!!」
奴隷に夢を描いているわりに佐々木はピュアな性格らしい。
俺が商人と会話をしている隙にこっそりページを開いていたのは黙っておいてあげよう。
「隣に職業紹介ギルドもあるよ」
奴隷商の隣ではスポット的に使える人材が集まる場所がある。
アルバイトのようなものだろうか。 それと希望の職種に就くための技術講習なども行われていて、この辺は日本と変わらない。
「夢がない……こんなの異世界じゃない」
俺も同感だ、とは現地人としては言えないので苦笑いして次へと向かう。
「ここはポータル広場。 ポータルを使えば国内外に転移できる」
「ええ? じゃあ馬車で次の街へ!とかないの?」
「お金がなければそうなるかな。 あとは審査に通らない場合も」
物語の異世界と違ってここでは気軽に遠出することが可能だ。 だからちゃんと旅行という文化も存在している。
それから武器屋や魔法具店でウィンドウショッピングして、途中で休憩がてら屋台で食事を摂った。
そして最後にやってきたのは巨大な岩が置かれた広場だ。
その岩を守るように騎士が立っているので、初見でもそれが重要なものだと分かるだろう。
「これは?」
「精霊石。 大きな町には置かれているもので、魔除けの効果があるんだ」
これがないといつの間にか町に魔物が入って来たり、住み着いて繁殖したりしてしまう。
「ええ? じゃあ勇者なんていらないんじゃ」
「勇者の必要性は分からないけど、これが効果を発揮するのは力の弱い魔物くらいだから。 強いのは超えてくるよ」
それと戦うのが騎士であり、冒険者の役目だ。
「そうか~現実なんてこんなもんだよな……」
佐々木はすっかり異世界に失望したらしい。
しかし本番はここらだ。
「じゃあ日も暮れてきたし、泊まるところへ案内するよ」
「あ、うん分かった」
俺はそう言いいながら宿屋通りを過ぎ、自宅を過ぎ、町の入り口までやってきた。
「ねえ、どこに向かってるの??!」
「佐々木くんが冒険をしたがってるって聞いたからね」
俺は門の外を指してほほ笑んだ。
「外だよ」
ベッドから出てきた勇者とこれから三日間の計画を相談して了承をもらった。
一日目は町へ行く。
「異世界観光へ」
「うん。 その前に敬語じゃなくていいよ。 堅苦しいの苦手なんだ」
「分かった。 じゃあ佐々木くん行こうか」
「異世界なのに名字呼びなんだ……」
この世界では名前呼びが普通だけれど、勇者相手だと日本の感覚が蘇ってしまって気恥ずかしくなったんだ。
この町は中央に城があり、そこからすり鉢状に建物が立ち並んでいる。
全部を一気に回るのは足が死ぬので、勇者の希望と俺のオススメを回るつもりだ。
~いくつかの店と反応をダイジェスト
冒険者ギルド、奴隷商、魔法店、武器屋→勇者
ポータル広場、道場、職業紹介店、精霊石
まずは異世界の大定番、冒険者ギルドだ。
「おお~思ったよりでかい!」
石造りの堅牢な三階建ての建物を見上げて勇者が楽し気に叫ぶ。
「ここはギルドの本部だからね」
しかし中へ入ると勇者はがっかりするかもしれない。
「思ったより静かだ」
「うん、冒険者は荒くれで野蛮なイメージを持たれがちだけど、実際は国が管理している団体だからかなり教育水準が高い。 みんな国家試験を突破しているから当然だけど」
物語のように誰でもなれる職業ではない。 戦い生業としているのだ。 国だって危険な人物に剣を持たせたくはないし、国民も安心して眠れないだろう。
「じゃあ国家公務員ってこと!?」
「そうだよ。 王に仕える騎士と、民を守る冒険者って感じ」
「ええ……全然自由じゃないじゃん」
確かに物語ほど自由ではないが、手続きを行えば好きな場所へ所属を変えることもできるから強い資格を持っている派遣社員のようなものだろうか。
俺は少し意気消沈した勇者佐々木を連れて、奴隷商へやってきた。
「やっぱり楽園はあったんや」
ごくり、生唾を飲んでいそうな佐々木を生暖かい目で見つつ、俺は中へ入る。
「すみません、奴隷のリストを見せていただきたいのですが」
ジャンル別に別れた何冊かのリストを佐々木に渡すと、彼は「これが奴隷……?」と言って首を傾げた。
「昔に行われていたような人身売買のようなものは今はないんだ」
ここでは物語にあるような人を物のように売り買いする奴隷制度はなく、奴隷商とは終身雇用の人材を斡旋する場所となっている。
「ここで雇った人材はちゃんと面倒を見ないといけないし、奴隷商も信用のある人しか相手にしない。 その変わり教育もちゃんとされてて即戦力になるんだ」
「思ってたのと違う……」
「佐々木が思い描いているような奴隷はまともな国ではないんじゃないかな? 王の声が届かない辺境の奥地の集落とかならあるかもしれないけど」
元の世界の正社員と同じようなものだ。 安定した収入を求めた人は奴隷になりたがる。 その代わり自由は制限されることは変わらない。
「こっちも見る?」
「これは」
「娼婦のリスト」
「い、いや大丈夫です!!!」
奴隷に夢を描いているわりに佐々木はピュアな性格らしい。
俺が商人と会話をしている隙にこっそりページを開いていたのは黙っておいてあげよう。
「隣に職業紹介ギルドもあるよ」
奴隷商の隣ではスポット的に使える人材が集まる場所がある。
アルバイトのようなものだろうか。 それと希望の職種に就くための技術講習なども行われていて、この辺は日本と変わらない。
「夢がない……こんなの異世界じゃない」
俺も同感だ、とは現地人としては言えないので苦笑いして次へと向かう。
「ここはポータル広場。 ポータルを使えば国内外に転移できる」
「ええ? じゃあ馬車で次の街へ!とかないの?」
「お金がなければそうなるかな。 あとは審査に通らない場合も」
物語の異世界と違ってここでは気軽に遠出することが可能だ。 だからちゃんと旅行という文化も存在している。
それから武器屋や魔法具店でウィンドウショッピングして、途中で休憩がてら屋台で食事を摂った。
そして最後にやってきたのは巨大な岩が置かれた広場だ。
その岩を守るように騎士が立っているので、初見でもそれが重要なものだと分かるだろう。
「これは?」
「精霊石。 大きな町には置かれているもので、魔除けの効果があるんだ」
これがないといつの間にか町に魔物が入って来たり、住み着いて繁殖したりしてしまう。
「ええ? じゃあ勇者なんていらないんじゃ」
「勇者の必要性は分からないけど、これが効果を発揮するのは力の弱い魔物くらいだから。 強いのは超えてくるよ」
それと戦うのが騎士であり、冒険者の役目だ。
「そうか~現実なんてこんなもんだよな……」
佐々木はすっかり異世界に失望したらしい。
しかし本番はここらだ。
「じゃあ日も暮れてきたし、泊まるところへ案内するよ」
「あ、うん分かった」
俺はそう言いいながら宿屋通りを過ぎ、自宅を過ぎ、町の入り口までやってきた。
「ねえ、どこに向かってるの??!」
「佐々木くんが冒険をしたがってるって聞いたからね」
俺は門の外を指してほほ笑んだ。
「外だよ」
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