異世界勇者のトリセツ~勇者の扱いに困る王女と転生者(モブ)な俺~

すー

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13話:王女と珈琲

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「アリストテレスちょっといいかな」

 次の日の放課後、佐々木が休みのためか少し静かな教室。 俺は王女を連れ出した。

「報酬の件でしょうか?」

 空き教室へ入るやいなや王女は前置きもなく言った。

「うん、察しがいいね」
「フランツくんが私をデートに誘うとは思えませんから」

 確かに俺は王女を口説く対象として見てはいないが、少し嫌味な言い方だ。

 それとも遠回しに最近アドバイザーとしての怠慢を指摘しているのだろうか。 なんだかストレスが溜まっている様子だ。

「デートしようって言ったら?」なんてふざけたらウザいだろうな。 彼女が怒る姿には興味はあるけれど、それよりも報酬の話が先だ。

「最高ランクの魔石を一つ融通して欲しい。 それと国家級の魔工技師を紹介してもらいたい」
「約束は果たします。 いつまでに?」
「急がなくていいよ。 来週以降ならいつでも」

 思っていたよりも淡々と了承がもらえて良かった。 さて用事は終わった。 今日は何をしようかと思って――少し、魔が差した。

「この後、デートする?」

 ただのジョークのつもりだった。

 しかし王女は表情一つ変えず「いいですよ」と言った。

「はい?」
「ですからデートの申し出をお受けします」
「いやいやいや、いくらなんでもダメでしょう? クラスメイトといえどあなたはこの国で最も尊き一族の一員なんですから」

 なんで俺がこんな心配しなきゃいけないのか。 王女は俺に淡い想いを抱いていたのか。 そんな物語みたいな都合のいい話あるわけ、

「その代わり相談に乗っていただきたいのですが」

 あるわけなかった。
 動揺する俺の醜態を見て、王女は愉しそうに笑う。

「心臓に悪いって」
「あなたから仕掛けたんでしょう?」

 ほんの少し、毛ほど期待した俺がバカだった。
 分かっていたはずじゃないか、この世界に物語のように都合の良いことは存在しないってことを。

 俺は何も言い返すことも出来ず、粛々と王女をエスコートするのだった。
 





――からん、からん

 軽快な音ともに行き付けの喫茶店へ入る。

「珈琲二つ」

 王女様は「一緒のもので」というので、俺は内心ほくそ笑んだ。
 この国では珈琲はマイナーな飲み物だ。 過去、知り合いのオーナーに頼み込んで俺がメニューにしてもらったのだ。
 ちなみに残念ながら流行る様子はないらしい。

 テーブルに置かれたカップの中身に驚きつつも、王女は一口珈琲を飲んで「……良い薫りですね」と微笑んだ。

「さて、今日勇者様はお休みだったみたいだけどどうかしたの?」

 それ以降カップに全く手を付けない王女は、深いため息を吐いた。

「友人とは何でしょう?」
「哲学的だね」

 友人と一言に言っても価値観は人それぞれだ。
 気が合えば友人であったり、話したことがあれば友人だったり、長い時を共に過ごしたから友人だったり、金で繋がる友人だっているだろう。

「勇者様が仰ったのです。 仲間が欲しい、友人が欲しいと」

 王女曰く、勇者のその願いを叶えるために彼を学校へ入学させた。 そして思惑通り勇者はクラスの人気者になっている。 ように見えるのに、

「あんなの友人でもなんでもない。 本当の友達が欲しいと言うのです」
「それで今日は休んだんだ」
「はい……ですが勇者様のおっしゃっていることが私には理解できず、異世界物語にも書かれていなかったので……」
「なるほど」

 佐々木の言っていることは転生者の俺にはよく理解できる。
 しかし生まれた瞬間から王族というフィルターを通して見られ、貴族と関わってきた王女にとっては、自分に関わろうと近くづく者に下心があることはきっと日常だ。 故に理解できない。

「理解はできるけど」
「本当ですか!?」
「でも明確な解決策は思い付かないよ」

 だって佐々木が勇者であることは公表されてないが、周知の事実になってしまった。

 もっと時間をかけてクラスメイトと関わって、クラスに馴染むしかない。

「勇者は潔癖すぎる。 打算で近づく相手は下心しかないと思い込んでいるんだよ」
「誰しも多少の打算は持ち合わせているのでは? あなただってそうでしょう?」

 確かにそうだ。
 利益がなければ王女にも、佐々木にも関わっていなかっただろう。

「クラスの連中はちょっとあからさまですけど」
「そうなんですか」

 王女はあまり府に落ちていないようだ。 人の価値観は簡単には変えられない。

「明確な解決法はないですけど、アドバイザーとして一つ提案します」



「修学旅行しましょう」



 人と手っ取り早く距離を縮めるには非日常と団体行動がいいだろう。 共同生活をすることによって普段とは違う一面が見れたり、関わりのない人と接する機会も増えるはずだ。

 これが諸刃の剣であることは理解している。
 けれど俺はアドバイスすることが役割で、勇者のお世話係ではない。

「行くならば魔法工学のメッカであるエジン国がおすすめですよ。 修学旅行といっても学校の行事ですから、学びがないといけませんし、それにあそこは治安も良く、ゴーレムコンテストというイベントもありますから」

 ちなみに俺がコンテストのために、学校を休むことを両親に反対されていることと関係はない。

 ないったらない。


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