異世界勇者のトリセツ~勇者の扱いに困る王女と転生者(モブ)な俺~

すー

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17話:解決と妖しい笑み

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――アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

 新たにやってきた人間を威嚇するようにゴーレムは唸り声を上げた。

 そして俺はカリストロの横を通りすぎ、ゴーレムへ突貫する。

 ゴーレムが腕を振り上げた。

「右」

 俺はそう呟いて右側に放たれた攻撃をかわした。

「左」

 再びかわす。 まるで未来予知だ。

「フランすげえすげえ!」

 カリストロの歓声が聞こえてくる。

 そして俺はゴーレムに飛び付き、

「危ない!」

 振り抜かれたゴーレムの腕が俺の腹にめり込む。
 俺は吹き飛び壁に激突した。 感じたことのない強い痛みに息が詰まる。

 しかしちゃんと王女は腕の中にいる。

「佐々木いいいいいいやれええええええええ」

「これで思う存分やれる」勇者佐々木は剣を振り上げた。


――必殺!最強ウルトラ勇者剣!!!!


 いつか見たダサい技名を佐々木が叫ぶと、眩い光がゴーレムに放たれた。





 事件は無事収束した。

 ゴーレムは勇者の必殺剣(笑)によって跡形もなく消え、俺たちは無事に帰国できた。

 それから数日経った教室はいつもの穏やかな時間が流れていた。

 変わったことは佐々木と王女が休んでいる。 それと群れていた勇者の取り巻きが静かなことくらいだろうか。

「平和だ」


 

 しかし授業が終わると、執事がやってきて俺は連行された。

「お久しぶりですね」

 俺の行きつけの喫茶店で優雅にカフェオレを飲む王女は窓の外を眺めていた。

「うん、そろそろ学校には復帰できるの?」
「ええ、私も勇者様も明日から登校する予定です」

 日本の喫茶店みたいに洒落た音楽なんて流れていない。 いつかBGMを流せる魔道具を作ろうと俺は密かに決めた。

「勇者召喚をしておきながら私も平和ボケしていたんでしょうね。 何もできませんでした」
「平和な時代なんだからしょうがないんじゃない?」
「いいえ。 これを機に勇者様の訓練など進めることになりました」
「勇者様は?」
「了承済みです」

 淡々とした事務連絡だ。 しかしどこか白々しい空気が漂う。

「今回は本当に助かりました。 どう考えてもアドバイザーという役職からは逸脱した素晴らしい働きでした」
「勲章なんてやめてくれよ?」
「分かってます。 何か欲しいものはあれば考えておいてください、常識の範囲内で」

「話が早いね」と平静を装って俺は笑った。 罪悪感はあるけれどもらえるものはもらっておきたい。

「話は変わりますけれど、あなたが戦闘が得意だとは知りませんでした。 これでも調査は行っていたのですが」
「なんかあの日は絶好調だったんだよ」
「そうですか」

 王女は気づいているのだろうか。

「それと今回の事件ですが犯人の捜索は難航しており、目的すらも分からないそうです」
「そうなんですね」

 俺の行動は穴だらけだった。
 物語ではなく現実を生き、考えることのできる王女はおそらく分かっていて見逃している。

「そういえば宿にあった荷物はどうされたのですか」

 そんな気がした。

「さあね」

 王女の妖しい笑みに、俺は顔を背けて答えた。





「ちゃ、です」
「紅茶、ね」

 自室にて、俺は変わった服を着た少女の言葉を繰り返した。 彼女の服はまるで民族衣装のようで珍しいものだ。

「こう、ちゃ、です」
「そうそう。 うーん、まだ言葉が滑らかじゃないね」
「もうし、わけ、あり」
「いいんだ。 これから改良していくから」

 そう言うと少女は使用人のように礼をすると、静かに部屋の隅に置かれた椅子に座った。 そしてまるで人形のように動かなくなった。

「面倒ごとも片付いたし、これでしばらく平和になるかな。 佐々木には悪いけど」

 けれど今回の件で取り巻きが関わるだけ無駄なことが分かったのだし、周囲が静かになるから以前よりかは普通に友人を作りやすい空気にはなったはず。

「あとは自分で頑張ってくれ」

 これで平穏な日常が取り戻せる安堵。
 誰にも言えない秘密を抱えた心の違和感。
 友人への罪悪感。

 色々な感情が渦巻いていた。

 今日の夢はきっとカオスだろうな、と一人笑って俺は目を閉じるのだった。


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