22 / 25
22話:転生者は夢を見る
しおりを挟む(あっつ)
燃え盛る屋敷に入っていく。
このままではペレネールの元へたどり着く前に干上がってしまいそうだ。
(まじでどうしよ)
カッコつけて来たものの、プランなんて全くない。
モブらしく簡単に死ぬ未来が想像できた。
しかし何もしなくとも違う意味で無事では済まないだろう。 俺の平穏な生活が守られる道はペレネールを助けるしかないのだ。
(もしも本当に彼女を助けることが出来たら)
かつて妄想したような異世界生活に近づけるのだろうか。
困った女の子を助けて、惚れられて、自由に楽しく暮らすそんなーー
「アアアアアア」
「ははは、甘い考えは捨てた方が良さそうだ」
三階から燃え落ちて来たのだろう。
階段を登るまでもなかった。
(ラスボスかよ)
思わず笑ってしまうくらいに恐ろしい見た目だ。
炎に包まれたソレは顔が影で塗り潰されたように黒く、目が爛々と光っている。
――死にたくない
一歩近づくと、どこからか声が聞えてきた。
――生きるのも辛い
脳に直接心の声が響いてくる。
――もっと普通に生きたかった
――学校に行ってみたかった
――お姉ちゃんともっと色んな話がしたかった
――お父さんに自慢されるよう立派な魔法使いになりたかった
――だけどもう全部無理だ
――私のせい私の私の私私私の私の私のせい私の私の私私私の私の私のせい私の私の私私私の私の私のせい私の私の私私私の私の私のせい私の私の私私私の私の私のせい私の私の私私私の私の私のせい私の私の私私私の私の私のせい私の私の私私私の私の私のせい私の私の私私私の私の私のせい私の私の私私私の私の私のせい私の私の私私私の私の私のせい私の私の私私私の私の私のせい私の私の私私私の私の私のせい私の私の私私私の私の私のせい私の私の私私私の私の私のせい私の私の私私私の私の私のせい私の私の私私私の私の私のせい私の私の私私私の私の私のせい私の私の私私私の私の私のせい私の私の私私私の私の私のせい私の私の私私私の私の
――全部私の、自分のせい
――こんな私なんか誰にも必要としない
――いない方がみんな幸せに決まってる、だから
――消えろ消えろ消えろ……
剥き出しの感情は、聞いているだけでこっちまで苦しくなる。
人には誰だって心が沈んでしまう時がある。
俺だって前世でも、今世でもあった。 だけど失敗を引きずって、自分を傷つけても誰も、自分だって救われないことを俺は良く知っている。
二度目の人生を生きる俺だから、確信を持って言える。
「君はきっと幸せになれるよ」
「それでも言葉が欲しいなら言ってやるよ」
――お前が俺には必要だ
――俺のために生きろ
俺はそう言いながら、業火に手を伸ばす。
(こんなこと最初で最後だ)
主人公ぶって無茶するのも、気障なセリフも嫌いだ。
手が、顔が、体が業火に焼かれていく。
(あ、むり)
そして一瞬で意識が遠のいていく。
俺みたいなモブには女の子一人救うことすら難しいらしい。
最後に炎の揺らぎの向こうで、泣きじゃくった女の子がこっちを見ていた――気がするけれど、確認する間もなく俺の意識は途切れた。
〇
「夢……?」
目が覚めると知らない部屋にいた。
爽やかな風が吹く。
窓際のカーテンが緩やかに靡単語いた。
「いや、病院か」
自分の包帯まみれの腕を見て思い至る。
ということは炎に焼かれたのも、あの気障なセリフも現実。 そしてあの絶体絶命の状況から不思議と生還したということだ。
「ところでこの子は誰だろう?」
椅子に座って壁にもたれて寝息を立てる美少女。
状況からして俺の見舞いに来てくれたんだろうけれど、見覚えがない。
真っ白な肌。
暖色系の長髪はところどころ水色にも見えて不思議な髪色だ。
「まあなんでもいいか」
今回の顛末も、これから俺がどうなるのかも分からない。
けれど
「平和でいいや」
とりあえずもうひと眠りしようと、瞳を閉じたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜
犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。
この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。
これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる