1 / 20
~1章~逃げ遅れた商人と異世界マーケットと
第1話:現代がファンタジー
しおりを挟む突如現れたモンスターとダンジョンによって、日常は崩壊した。
「おらの畑が……」
「おじいちゃん! 逃げるよ!」
どこかの畑にはダンジョンの入り口に飲み込まれ、
「頼む! 俺も乗せてくれ!」
「もうこれ以上無理だ!」
どこかの町ではモンスターから人々が逃げ惑い、
「嘘だろ……」
「こんなのどうしろって言うんだよ」
自衛隊は巨大な怪物を前に絶望した。
「ようやく俺が本気を出す時が来た!」
「異世界きたーーーー!!」
ネット掲示板は密かに沸いていた。
人類は滅ぶのか、誰しもの頭に過ったが神は人々を見捨てていなかった。
『職業を選択してください』
「なんだこれ……?」
人々はこの職業の選択が自身の未来を決めると気付き、慎重に決断していくのだったーーどこかの誰かを除いて。
「ん?」
『職業:商人が選択されました』
「ふぁ~、寝よ」
この時、山河蟹男は自分が大事な選択を誤ったことをまだ気が付いていなかった。
○
山河蟹男、蟹好きの父が付けたその名前は同級生に散々からかわれたためあまり好きではなかった。
いつか改名しようと心に誓って十数年、今やその名前をからかってくる人もおらず、六畳一間の安アパートで一人寂しく暮らしている。
夢はない。
三十路となって夢を見ることさえ敵わないほど、現実を知ってしまった。
つまらない人生だ、けれどそれが努力も才能もない自分には相応しいのだと自身に言い聞かせる日々。
仕事をこなし、少ない給金をやりくりし、漠然とした不安を抱えながらも穏やかに過ごす。 それは死ぬまで続くはずだった。
しかしそんな日常はある日を境に終わった。
蟹男は理解していた。
大きな変化が起こった時、速やかに正しい選択をした者は大きな利益を得ることができると。
「職業か……やっぱり戦闘職が良いよな」
世間の話題はモンスターやダンジョン一色だった。 東京の辺鄙な町に住んでいたためか、蟹男の近所では騒ぎは起きていない。
故に実感はないが、ニュースやSNSでは現代が物語の異世界のように変わったと理解できた。 それなのに、
『職業:商人』
鏡で見た自分の横に表示される文字。
「どうしてこうなった……」
異世界化した現代で、人間も変化したらしい。
ゲームのように職業を選ぶことができて、それによって魔法が使えたり、人知を越えた怪力になったりーーまるで世界がアップデートされたようなことが起こっていた。
職業の選択は今後の人生を決める。
そんなこと子供でも分かる。 それなのに蟹男は戦うことも、守ることもできない。
わざわざ選ぶ必要もない商人となっていた。
「ああ、昨日寝惚けてやっちまったのかなあ」
蟹男は四つん這いになって絶望した。
「終わった……」
物語のように成り上がるなんてもはや不可能。 そもそも生き残れるかも難しくなってしまった。
その時、
ーーgruuuuuuu
部屋の外から何かの唸り声が聞こえてきた。
10
あなたにおすすめの小説
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた
ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。
今の所、170話近くあります。
(修正していないものは1600です)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。
みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。
勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。
辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。
だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
学生学園長の悪役貴族に転生したので破滅フラグ回避がてらに好き勝手に学校を魔改造にしまくったら生徒たちから好かれまくった
竜頭蛇
ファンタジー
俺はある日、何の予兆もなくゲームの悪役貴族──マウント・ボンボンに転生した。
やがて主人公に成敗されて死ぬ破滅エンドになることを思い出した俺は破滅を避けるために自分の学園長兼学生という立場をフル活用することを決意する。
それからやりたい放題しつつ、主人公のヘイトを避けているといつ間にかヒロインと学生たちからの好感度が上がり、グレートティーチャーと化していた。
ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中
あ、まん。@田中子樹
ファンタジー
仕事一筋40年。
結婚もせずに会社に尽くしてきた二瓶豆丸。
定年を迎え、静かな余生を求めて山奥へ移住する。
だが、突如世界が“数値化”され、現実がゲームのように変貌。
唯一の趣味だった15年続けた積みゲー「モリモリ」が、 なぜか現実世界とリンクし始める。
化け物が徘徊する世界で出会ったひとりの少女、滝川歩茶。
彼女を守るため、豆丸は“積みゲー”スキルを駆使して立ち上がる。
現金化されるコイン、召喚されるゲームキャラたち、 そして迫りくる謎の敵――。
これは、還暦オジが挑む、〝人生最後の積みゲー〟であり〝世界最後の攻略戦〟である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる