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心を無くした魂の音は何時奏でる
しおりを挟む……人の心を色付けする時、貴方ほど無色が似合う娘はいないでしょうね。
かつて私は誰かにそう言われた。何故言われたのかは全く覚えてないが、その言葉だけは覚えてる。
この世に生きる全ての人類に、能力があるこの世界で私は、糸に関わる能力を代々具わる十操の家に生まれた。
私は、糸に関わる能力の中でも、最もと言っても良いほど弱い人形を操る能力を授かった。
周囲の者は私を落ちこぼれと呼び、蔑んでいた。
父と母は、それでも私を愛してくれた。
貴女って誰とでも仲良くなれるのね。
誰かが私が小さい頃そう言った。その通りだなと思ったし、そうであるようにしていた。そんな私だけれども、1人だけ仲良くなる事が出来なかった娘がいた。
その娘は、隣の昔からのお屋敷に住んでる娘だった。初めて会った時から何度会っても、ずっと挨拶しかしてくれなかった。
そんなある日、彼女の両親が
「2日だけ、この娘を預かってくれないか」
と私のパパとママに頼んできた。
私は彼女と仲良くなれるチャンスだ!と思って私からもお願いした。
そのおかげか、パパ達も許してくれた。
だけど、彼女は知らない3人の家に泊まらないといけないことが怖かったのか。端っこの方でずっと動かないでいた。だから、
「私ね、紫藤奏って言うの。貴女のお名前教えて?」
っと言った。
両親が、実家で行う家族会議に行くために、私を隣の家に預けてもらうことになったが、顔しか知らない3人の家に行くのは、怖かった。でも、
「私ね紫藤奏って言うの。貴女のお名前教えて?」
と純粋な笑顔で笑う彼女に心惹かれ、何時の間にか、
「十操命音」
と答えてしまった。
気づいた時には、奏に抱きつかれながら、
「可愛いお名前!ね、あそぼ?」
と言われた。普通なら、初対面の相手にこんなことされたら嫌な筈なのに、奏だけは嫌じゃなかった。
「十操命音」
そう、初めて私に返してくれて、嬉しくて抱きついてしまった。
「可愛いお名前!ね、あそぼ?」
私がそう言うと、命音はし少し困った顔をしてしまった。無理もない。いきなり抱きつかれて、それでいて遊びに誘われえるなど、普通に考えたら誰だって困ったり、嫌だったりする筈だから。
それでも、
「……奏は何して遊びたいの?」
嗚呼、命音はどうして私をこんなにも喜ばせてくれるのだろう。どうしてこんなにも心惹かれるのだろう。
私はどんな顔をしていたのか、きっとダラしない表情だったのだろう。
この娘の、奏の笑顔がもっと見たい。一緒に遊んだら、もっと笑ってくれるのかな?
そんなことを考えている私がいた。
「……奏は何して遊びたいの?」
私がそう言うと、奏は先程よりもっと眩しい笑顔でチェス!と言ってくれたが、
「チェスって何?」
と、聞くと奏は、
「チェス分からないの?じゃあ、じゃあ将棋は?」
と今度もボードゲームを提案した。
「将棋は分かる」
「じゃあやりましょう!ふふ、私のダイヤモンド美濃囲いを崩せるかしら?」
命音と過ごした2日間はずっと一緒にいた。ご飯の時も、お風呂の時も、寝る時もずっと一緒だった。
将棋も最初は私が勝ってたけど、段々と負けるようになって、夜遅くまで指してママに怒られてしまった。
命音のお父さんが迎えににきた時、私は泣きじゃくってしまった。
「命音ちゃんと一緒に居たい!やだやだー!」
そう駄々をこねる私に、命音は
「お父さん、お休みの日は奏の家にお泊りしたい」
と、言った。
命音のパパは「しかしな、紫藤さんに迷惑をかけてしまうだろうし……」
と困ったように言うと、ママが、
「あら、別に良いわよ。命音ちゃん良い子で、お手伝いとこか物凄くしてくれるもの。いつでも泊まりにいらっしゃい。あ、それなら毎週金曜日はどちらかの家にお泊まりしに行くなんてどうかしら?十操さんがよろしければの話ですがね」
と、命音のパパに言った。最後のほうになんか黒いもや(?)が纏っているように見えたのは言わないほうが良いよね?
「え、ええ良い、ですよ、あははははははは」
そうして私達は一週間に一回はどちらかの家でお泊りすることになった。
奏と毎週、お泊りできて、私はどんなに嫌な事があっても関係なかった。
奏と一緒にいれるのなら、なんだって良かった。
彼女とその生活を許してくれた両親と、おじさん、おばさんがいれば、他の人はどうでも良かった。
しかし、そんな生活は黒服の男達によって、奪われた。
「奏、奏、奏!おじさん達、なんで奏を連れてくの?奏、何も悪いことしてないよ!」
私の事を無視して男達は、私の両親に、
「我々は、政府の者だ。紫藤奏の能力が希少値SSSを超える能力であったことがわかった。よって、紫藤家を政府の監視下に置くことに決まった」
そして1人の男が奏を抱き抱えて、車に乗せようとしてた。
「嫌だ嫌だ!命音ちゃんと離れたくないの!命音ちゃん、命音ちゃん!」
「奏を連れてかないで!」
しかし、無情にも、3人を乗せた車は、行ってしまった。
その日から私は何も感じない、人形と化した。
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