婚約破棄は蜜の味

1話

　ハインリーケ・フォン・ヘルツベルクは退屈だった。何がと聞かれればこう答えるしかない--

「すべて。」

そう、彼女にとって今まで生きてきた中での怒ったあらゆる事象がつまらない、取るに足らないものだったと言えるものだったのである。そして彼女はそれがこれからもずっとそれまでのような日々が続くということが安易に予想できたのである。だからある日部屋のドアノブにタオルをかけた。理由は言うまでもないだろう、そして輪になるよう結びそこに頭を収める、高さは腰まではあるので問題ない。あとは自重に委ねるだけである・・・・・・と、そのときであった・・・・・・。