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第31話 マタル商会
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マタル商会はタダンの街で古くからある店で、タダンを中心に手広く商売をし、タダンで一二を争う商会だった。
しかし、ダルマリオ商会の支店が開店してから、取引先を次々と奪われてしまい、今や厳しい状況に置かれていた。
そこでダルマリオ商会の信用を落とす策を仕掛けることにした。
マタル商会の一室。
商会長マタルがガニマ一家のボス、ガニマに仕事の内容を説明していた。
「王都から、ここタダンへ、貴重な魔術具が輸送される。それを奪ってほしい」
「その貴重な魔術具って何だ?物騒な物か?」
「『従魔の印』だ」
「おいおい、それは城主様に献上されるって噂の品だろ?略奪がバレたら死刑だぞ!」
「ダルマリオ商会が城主様から依頼されたものだ。大変だからこそ、おまえたちに頼むんだ。報酬ははずむ」
ガニマは最初渋い顔をしたが、報酬の額を聞きニヤリと笑い引き受けた。
彼は身を乗り出して、さらに要求を付け加えた。
「ダルマリオ商会の護衛に金髪の女がいて、そいつを痛めつけたい。力を貸してくれるよな?」
「ダルマリオ商会の力を削ぐことなら、何だって協力しよう」
二人の思惑は一致し、満足そうな笑みをそれぞれ浮かべて話し合いは終わった。
その数日後ダルマリオ商会タダン支店では上を下への騒動になっていた。
城主へ献上する「従魔の印」が輸送途中で奪われてしまったからだ。
このままではタダン支店は閉店、そればかりかダルマリオ商会全体の信用もがた落ちになってしまう。
トーマンは焦燥した顔で机に頭を埋めていて、そこにランセリアが現れた。
「トーマン、大変な事になっているようね」
「ランセリア、今は君に構っている余裕がない。すまないが出立は延期して欲しい」
「商会全体の信用に関わることだから、少しは我慢するわ。それで「従魔の印」はどうするの?」
「元々は会長が持っている「従魔の印」を献上する予定だったんだが……」
「ゼノアさんたちなら飛んで行けるから、すぐに「従魔の印」を取りにいけるはずよ。依頼してみたら?」
「ほ、本当か?」
トーマンは、すぐにゼノアに依頼を出した。暗殺する相手に頼むのは気が引けたが、背に腹は代えられなかった。
「シリル、みんなを守ってね。それから人殺しはダメ、喧嘩もダメよ」
「は~い!分かってるよ」
その日の内にゼノアは迷宮都市ザーランドへ飛び立っていった。
途中盗賊らしき集団やワイバーンも見つけたが、今回はできるだけ早く着きたかったので無視した。
休みなしで全速力で飛行したので、3日後に迷宮都市に到着し、ダルマリオ商会に直行した。
ゼノアが応接室で待っていると、商会長の長男で店長をしているドランが現れた。
「妹のランセリアを助けていただいたそうで、ありがとうございます」
「ところで会長の具合はどうですか?ランセリアさんは大変心配していますが」
「それなら病状は安定しており、じきに起き上がれるとのことです。妹には心配しないようお伝えください」
「それを聞いて安心しました。それで「従魔の印」は?」
「これが、そうです。よろしくお願いします」
ドランは厳重に魔法で封印された箱と鍵をゼノアに渡した。
「くれぐれも失くさないようお願いします」
「分かりました。必ず無事にお届けします」
ゼノアは直ぐに飛び立つと、ドランは祈るように、その後姿を見つめていた。
ゼノアがタダンへ戻っている途中、ワイバーンの群れと人間の血の匂いを感知した。
魔物を倒し人を救う事、それはゼノアの信条のひとつだ。
迷いの一瞬も許されない状況だった。
ゼノアは瞬時に決断し、全力でワイバーンに突っ込んでいった。
ワイバーンの一体に体当たりしようとしたが、ワイバーンはゼノアの気配を感じて、風の守りを強化し回避した。
「あら、このワイバーンは賢いのね。甘くみすぎていたわ。でも残念でした」
ゼノアが「ドレイン」を唱えるとワイバーンは墜落し絶命した。
他のワイバーンは恐れをなしたのか、すぐに逃げ出していった。
「ワイバーンより怪我した人を助けるのが先ね」
ゼノアは襲われた人たちの元に降り立った。
冒険者らしき四人の男たちの内、三人は手遅れだった。
まだ息のあるひとりも重症だった。
ゼノアは眉をひそめた。
割れたワイバーンの卵があったからだ。
彼女は男に回復薬を飲ませ、尋ねた。
「ワイバーンの卵を巣から盗んできたの?」
「そうだとも」
「どうして、そんな危険なことをしたの?」
男は沈黙したが、ゼノアが睨みつけると白状した。
「城主様に献上すれば大金が手に入るんだ」
「タダンの城主がワイバーンの卵を?」
男は黙って頷いた。
ゼノアは呆れかえった。
城主は「従魔の印」とワイバーンの卵を欲している。
ワイバーンを従魔にしたいのだろう。
「従魔の印」は魔物を支配する魔術具だが、幼少時からつけないと完全に支配することは難しい。
だから卵も求めたのだろう。
しかし、ワイバーンの卵への執着が相当なものである。
タダンに卵を持ち込めば、ワイバーンの大群が襲ってくるかもしれない。
「ワイバーンもだけど、城主も放置できないわね。本当に困ったこと……」
ゼノアは、ため息をつきながら帰路を急いだ。
しかし、ダルマリオ商会の支店が開店してから、取引先を次々と奪われてしまい、今や厳しい状況に置かれていた。
そこでダルマリオ商会の信用を落とす策を仕掛けることにした。
マタル商会の一室。
商会長マタルがガニマ一家のボス、ガニマに仕事の内容を説明していた。
「王都から、ここタダンへ、貴重な魔術具が輸送される。それを奪ってほしい」
「その貴重な魔術具って何だ?物騒な物か?」
「『従魔の印』だ」
「おいおい、それは城主様に献上されるって噂の品だろ?略奪がバレたら死刑だぞ!」
「ダルマリオ商会が城主様から依頼されたものだ。大変だからこそ、おまえたちに頼むんだ。報酬ははずむ」
ガニマは最初渋い顔をしたが、報酬の額を聞きニヤリと笑い引き受けた。
彼は身を乗り出して、さらに要求を付け加えた。
「ダルマリオ商会の護衛に金髪の女がいて、そいつを痛めつけたい。力を貸してくれるよな?」
「ダルマリオ商会の力を削ぐことなら、何だって協力しよう」
二人の思惑は一致し、満足そうな笑みをそれぞれ浮かべて話し合いは終わった。
その数日後ダルマリオ商会タダン支店では上を下への騒動になっていた。
城主へ献上する「従魔の印」が輸送途中で奪われてしまったからだ。
このままではタダン支店は閉店、そればかりかダルマリオ商会全体の信用もがた落ちになってしまう。
トーマンは焦燥した顔で机に頭を埋めていて、そこにランセリアが現れた。
「トーマン、大変な事になっているようね」
「ランセリア、今は君に構っている余裕がない。すまないが出立は延期して欲しい」
「商会全体の信用に関わることだから、少しは我慢するわ。それで「従魔の印」はどうするの?」
「元々は会長が持っている「従魔の印」を献上する予定だったんだが……」
「ゼノアさんたちなら飛んで行けるから、すぐに「従魔の印」を取りにいけるはずよ。依頼してみたら?」
「ほ、本当か?」
トーマンは、すぐにゼノアに依頼を出した。暗殺する相手に頼むのは気が引けたが、背に腹は代えられなかった。
「シリル、みんなを守ってね。それから人殺しはダメ、喧嘩もダメよ」
「は~い!分かってるよ」
その日の内にゼノアは迷宮都市ザーランドへ飛び立っていった。
途中盗賊らしき集団やワイバーンも見つけたが、今回はできるだけ早く着きたかったので無視した。
休みなしで全速力で飛行したので、3日後に迷宮都市に到着し、ダルマリオ商会に直行した。
ゼノアが応接室で待っていると、商会長の長男で店長をしているドランが現れた。
「妹のランセリアを助けていただいたそうで、ありがとうございます」
「ところで会長の具合はどうですか?ランセリアさんは大変心配していますが」
「それなら病状は安定しており、じきに起き上がれるとのことです。妹には心配しないようお伝えください」
「それを聞いて安心しました。それで「従魔の印」は?」
「これが、そうです。よろしくお願いします」
ドランは厳重に魔法で封印された箱と鍵をゼノアに渡した。
「くれぐれも失くさないようお願いします」
「分かりました。必ず無事にお届けします」
ゼノアは直ぐに飛び立つと、ドランは祈るように、その後姿を見つめていた。
ゼノアがタダンへ戻っている途中、ワイバーンの群れと人間の血の匂いを感知した。
魔物を倒し人を救う事、それはゼノアの信条のひとつだ。
迷いの一瞬も許されない状況だった。
ゼノアは瞬時に決断し、全力でワイバーンに突っ込んでいった。
ワイバーンの一体に体当たりしようとしたが、ワイバーンはゼノアの気配を感じて、風の守りを強化し回避した。
「あら、このワイバーンは賢いのね。甘くみすぎていたわ。でも残念でした」
ゼノアが「ドレイン」を唱えるとワイバーンは墜落し絶命した。
他のワイバーンは恐れをなしたのか、すぐに逃げ出していった。
「ワイバーンより怪我した人を助けるのが先ね」
ゼノアは襲われた人たちの元に降り立った。
冒険者らしき四人の男たちの内、三人は手遅れだった。
まだ息のあるひとりも重症だった。
ゼノアは眉をひそめた。
割れたワイバーンの卵があったからだ。
彼女は男に回復薬を飲ませ、尋ねた。
「ワイバーンの卵を巣から盗んできたの?」
「そうだとも」
「どうして、そんな危険なことをしたの?」
男は沈黙したが、ゼノアが睨みつけると白状した。
「城主様に献上すれば大金が手に入るんだ」
「タダンの城主がワイバーンの卵を?」
男は黙って頷いた。
ゼノアは呆れかえった。
城主は「従魔の印」とワイバーンの卵を欲している。
ワイバーンを従魔にしたいのだろう。
「従魔の印」は魔物を支配する魔術具だが、幼少時からつけないと完全に支配することは難しい。
だから卵も求めたのだろう。
しかし、ワイバーンの卵への執着が相当なものである。
タダンに卵を持ち込めば、ワイバーンの大群が襲ってくるかもしれない。
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ゼノアは、ため息をつきながら帰路を急いだ。
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