漆黒の魔女と暴風のエルフ

あきとあき

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第59話 新たな旅へ

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迷宮都市の攻略に失敗すると、帝国はタダンからも撤退した。
タダンを占拠したのに何も要求せずに撤退したのだ。
誰もが不思議に思ったが、誰もその理由は分からなかった。

実は帝国の皇帝には代々伝えられている不文律があった。
それはカナン帝国時代から伝承されていた。

「漆黒の魔女ゼノアに敵対してはならない」


皇帝はエトニア併合を諦めることを御前会議で宣言し、タダンからの撤退も決まったのだった。




それから一週間後、ゼノア、シリル、聖女、ダニエトロは迷宮最下層、地下100階に来ていた。

全員が地面に空いた漆黒の裂け目を見つめていた。

シリルが興味深そうに穴に手を伸ばし触れようとしたので、ゼノアがシリルの頭を叩いて止めさせた。

「馬鹿なことしないの、シリル。大人しくしてなさい」
「痛てぇ! 暴力反対!」

聖女とダニエトロは呆れた顔でシリルを見て、クスクスと笑った。

「普通の人は怖くて近づくこともできませんよ。まして触ろうなど」
「ええ? だって今は聖域の中にいるから平気でしょ?」

シリルが「普通じゃない」と言われて不貞腐れた。

「あなたは常識がないから、下手に手を出さないで」
「ひでぇ! 姉ちゃんだって常識ないくせに」

もう一度ゼノアはシリルを叩いた。

「痛てぇ! 暴力反対!」
「あなたよりは、あります!」
「へぇ、どうだか?」

ゼノアがシリルを睨むと、シリルはそっぽを向いて舌を出した。

「聖女様、そろそろ封印をお願いします」
「はい」

ダニエトロが聖女にお願いすると、聖女は祈りを捧げた。

「封印」

すると漆黒の穴の周りに置かれた結界装置が作動して、裂け目を覆うように結界が発生した。

「これでスタンピードは起こらないと言われています」
「魔物は以前と同じように出るのですか?」
「数も強さも半減するそうです。それと宝箱が出ようになるようですよ」
「宝箱ですか? 興味深いですね」
「女神様からの贈り物らしいです」
「へえ、女神さまも粋なことをしてくれるんだね」
「そうですね。さて終わりましたので、地上に戻りましょう」




それからは、穏やかな日が続き、ゼノアとシリルは旅立つことにした。

ダルマリオ商会の会長に、ダンとミミの身元引受人になってもらい、二人は商会で暮らすことになった。
「黒と金の風」四人組の面倒と訓練は「金の木漏れ日」のブリオニーに頼んだ。

そして別れの日が来た。

ゼノアとシリルは、ミミを抱きしめ頭を撫でた。
そして「黒と金の風」四人組ひとりひとりに同様に抱きしめ頭を撫でた。

ミミは泣いていた。

「1年1回は必ず帰るから」
「必ず帰ってきてね。約束だよ、ゼノアお姉ちゃん、シリルお姉ちゃん」
「ええ、約束するわ」

ダンは涙を堪えて笑っていた。

「姉ちゃんたちが帰って来た時は、もっと強くなってるから」
「ふふ、期待してるわ。みんなも頑張ってね」
「はい!」

メル、アルバ、ガダルも頷いた。

「会長さん、ブリオニーさん、ダンとミミのこと、よろしくお願いします」
「ゼノア殿、任せて下さい」
「シリル様、この子らは私が必ず守ります」
「頼んだよ、ブリオニー」

ゼノアとシリルは飛び立っていた。何度も何度も振り返りながら。




二人は街から離れた山間の神殿跡地に降り立った。

「ここが新しい転移陣の場所か」
「ええ、迷宮都市の近い場所に神殿跡を見つけたので設置できたの」
「これで簡単に戻ってこれるね」
「ええ、かなり時間短縮できて便利ね」

「これからどこに行くの、ゼノア姉ちゃん」
「ダンジョンを探しましょう。魔人とダンジョンは関係があるから、シリルの仇の魔人も見つかるかも」
「よし! ダンジョンへ行こう」
「まずは、探さないとね」
「は~い」

ゼノアは指輪を取り出し指に嵌め、魔力を流した。
すると地面に魔法陣が現れ、二人の姿は消えた。

漆黒の魔女ゼノアは、勇者の血を継ぐ者を探すだけでなく、ダンジョンも攻略し封印しようと考えていた。
シリルはガーランドの仇を絶対に見つけて倒すと新たに誓いを立てた。
こうして、二人の長い長い旅が再び始まった。
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