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「あ、そうそう、このマンションまで来るときはうちの誰かに車出してもらって?一人で来ちゃだめだよ?」
タワマンを出た後、車に乗り込むと同時に圭一さんがそう言って来た。
「いや・・一人で来るも何も遠すぎてちょっと無理かと・・・?」
「まぁそうだろうけど、このマンションを出るときも誰かつけて。一人にはならないこと。いい?」
「?・・・はい。」
これは家でも言われてることだった。
ゴミ出しや掃除、ちょっとした買い物でも一人で行くことは許されてなく、全て家の人にお願いしないといけないのだ。
(一平さんがしてくれてるけど・・・わざわざお願いするのも申し訳ないんだよね・・・)
なぜそう言われてるのかはわからない。
でもみんなが『ダメだ』というから・・・仕方なくお願いするしかないのだ。
「柚香、どっか行きたいとことかある?俺、夜まで空いてるからデートできるんだけど・・・」
「デート!!」
「ははっ、嬉しそうだな。欲しいものとかない?見たいものとか・・・」
「欲しいもの・・・・」
正直、欲しいものはない。
服は圭一さんがたくさん用意してくれ、和服だって溢れるくらいある。
用意してくれた部屋にはベッドもクローゼットも机もあって、何一つとして不自由してないのだ。
(仕事のお金も使うところないし・・・これ以上欲しいものなんて無いんだけど・・・)
特に何もないことを伝えるのが心苦しかった私は、ふと思い出した場所があった。
「あ・・・!藤沼さんのお店、行ってみたいです!」
「藤沼の?・・・あぁ、妻の方か。」
「はいっ。前に『遊びに来てね』と言って頂いたので・・・・」
手を痛めたとき、お世話になった藤沼さん。
まるで『お姉さん』ができたように思い、一度お店に行ってみたいと思っていたのだ。
「いいよ?すぐ近くだし。」
「本当ですか!?」
「うん。タワマンから歩いても行ける距離だな。」
「そんな近く!?」
「ほら、もう見えてきた。」
あっという間についてしまった藤沼さんのお店。
真っ白の外壁に濃い黄色のライトが当たっていて、『高級感』が溢れていた。
「空いてそうだな。」
お店の裏手にある駐車場に車を止め、植物で溢れた小道を抜けて表に回る。
ちょっとしたところだけどオシャレに作られていて、私の目は輝く一方だ。
「店長いる?」
大きな自動ドアをくぐるなり、圭一さんはそう声をかけた。
すぐに受付の人が飛んでやってきて、頭を深く下げてる。
「園田さま、いらっしゃいませ。すぐに藤沼をお呼びいたします。」
「頼むよ。」
そう伝えたあとすぐ、藤沼さんが奥から現れた。
「園田さま・・・!柚香さん!」
「藤沼さん!」
「柚香が来てみたいっていうから連れてきたんだよ。」
「そうなんですか!?ありがとうございますー!うれしいです!ご案内させていただきます!」
藤沼さんがそう言ったとき、圭一さんのスマホが鳴った。
「もしもし?・・・は?・・・あー・・・・・」
ちらっと私を見る目は少し困ったような目だった。
きっと急な仕事が入ったのだろう。
「お仕事だったら行ってきてください。」
そう小声で伝えると、圭一さんは藤沼さんを見た。
「お預かりいたしますよ。どれくらいのお時間ですか?」
「・・・悪い、3,4時間ほど・・・」
「かしこまりました。」
「柚香、ごめん。すぐ戻るから・・・」
「気にしないでください。気を付けて行ってきてくださいね?」
「悪い・・・」
圭一さんは申し訳なさそうにしながらお店を後にした。
「さ、柚香さん!」
「は・・はい?」
「今の間にしちゃいましょうか!!」
「へ・・?何を・・・・」
張り切る藤沼さんは私の手を引きながらお店の奥に入っていく。
「わ・・個室?みたいになってるんですか?」
奥は廊下を挟んで右左にと個室のような空間あった。
圧迫感をださないようにか、目の高さまでのスイングドアのような扉がある。
「そうなんです。こちらは一般のお客さま用で、奥にVIP専用のお部屋があるんですよ?」
「へぇー・・・・」
真っ白の壁に、木でできたスイングドア。
観葉植物が所々に置かれていて、壁に絵画も飾られていた。
若干オープンだからか、個室の中からスタッフさんの声が少し聞こえてくる。
「3時間、みっちり磨きましょうねっ。」
そう言って藤沼さんは完全な個室の扉を開けた。
「磨く・・・?」
個室の中はワインレッドのベッドが一つあった。
ヘッド部分には洗面台のようなものがあり、まるで美容院の洗髪台みたいに見える。
「あちらのお部屋でお着替えしてきてくださいね♡」
「へっ!?」
「ささっ、早く♡」
「ちょ・・!?」
ぐぃぐぃと押され、私は着替えの部屋に入れられてしまった。
その部屋には大きな鏡が一枚と、服を入れるバスケットが一つ。
あと『これに着替えるんだろうな』と思わせる紙でできた下着がワンセット置かれていた。
「~~~~っ。」
押し込められてしまった以上、断ることができない私はため息を一つ漏らしてから自分の服を脱ぎ始めた。
「はぁー・・・。」
圭一さんが戻って来るまでの3,4時間、私はここで時間を潰さないといけない。
そう考えたらエステを受けるのもいいかもしれないのだ。
「お金は結構あるし、足りる・・・よね?」
そう思いながら私は着替えを済ませ、扉を開けたのだった。
「あ、そうそう、このマンションまで来るときはうちの誰かに車出してもらって?一人で来ちゃだめだよ?」
タワマンを出た後、車に乗り込むと同時に圭一さんがそう言って来た。
「いや・・一人で来るも何も遠すぎてちょっと無理かと・・・?」
「まぁそうだろうけど、このマンションを出るときも誰かつけて。一人にはならないこと。いい?」
「?・・・はい。」
これは家でも言われてることだった。
ゴミ出しや掃除、ちょっとした買い物でも一人で行くことは許されてなく、全て家の人にお願いしないといけないのだ。
(一平さんがしてくれてるけど・・・わざわざお願いするのも申し訳ないんだよね・・・)
なぜそう言われてるのかはわからない。
でもみんなが『ダメだ』というから・・・仕方なくお願いするしかないのだ。
「柚香、どっか行きたいとことかある?俺、夜まで空いてるからデートできるんだけど・・・」
「デート!!」
「ははっ、嬉しそうだな。欲しいものとかない?見たいものとか・・・」
「欲しいもの・・・・」
正直、欲しいものはない。
服は圭一さんがたくさん用意してくれ、和服だって溢れるくらいある。
用意してくれた部屋にはベッドもクローゼットも机もあって、何一つとして不自由してないのだ。
(仕事のお金も使うところないし・・・これ以上欲しいものなんて無いんだけど・・・)
特に何もないことを伝えるのが心苦しかった私は、ふと思い出した場所があった。
「あ・・・!藤沼さんのお店、行ってみたいです!」
「藤沼の?・・・あぁ、妻の方か。」
「はいっ。前に『遊びに来てね』と言って頂いたので・・・・」
手を痛めたとき、お世話になった藤沼さん。
まるで『お姉さん』ができたように思い、一度お店に行ってみたいと思っていたのだ。
「いいよ?すぐ近くだし。」
「本当ですか!?」
「うん。タワマンから歩いても行ける距離だな。」
「そんな近く!?」
「ほら、もう見えてきた。」
あっという間についてしまった藤沼さんのお店。
真っ白の外壁に濃い黄色のライトが当たっていて、『高級感』が溢れていた。
「空いてそうだな。」
お店の裏手にある駐車場に車を止め、植物で溢れた小道を抜けて表に回る。
ちょっとしたところだけどオシャレに作られていて、私の目は輝く一方だ。
「店長いる?」
大きな自動ドアをくぐるなり、圭一さんはそう声をかけた。
すぐに受付の人が飛んでやってきて、頭を深く下げてる。
「園田さま、いらっしゃいませ。すぐに藤沼をお呼びいたします。」
「頼むよ。」
そう伝えたあとすぐ、藤沼さんが奥から現れた。
「園田さま・・・!柚香さん!」
「藤沼さん!」
「柚香が来てみたいっていうから連れてきたんだよ。」
「そうなんですか!?ありがとうございますー!うれしいです!ご案内させていただきます!」
藤沼さんがそう言ったとき、圭一さんのスマホが鳴った。
「もしもし?・・・は?・・・あー・・・・・」
ちらっと私を見る目は少し困ったような目だった。
きっと急な仕事が入ったのだろう。
「お仕事だったら行ってきてください。」
そう小声で伝えると、圭一さんは藤沼さんを見た。
「お預かりいたしますよ。どれくらいのお時間ですか?」
「・・・悪い、3,4時間ほど・・・」
「かしこまりました。」
「柚香、ごめん。すぐ戻るから・・・」
「気にしないでください。気を付けて行ってきてくださいね?」
「悪い・・・」
圭一さんは申し訳なさそうにしながらお店を後にした。
「さ、柚香さん!」
「は・・はい?」
「今の間にしちゃいましょうか!!」
「へ・・?何を・・・・」
張り切る藤沼さんは私の手を引きながらお店の奥に入っていく。
「わ・・個室?みたいになってるんですか?」
奥は廊下を挟んで右左にと個室のような空間あった。
圧迫感をださないようにか、目の高さまでのスイングドアのような扉がある。
「そうなんです。こちらは一般のお客さま用で、奥にVIP専用のお部屋があるんですよ?」
「へぇー・・・・」
真っ白の壁に、木でできたスイングドア。
観葉植物が所々に置かれていて、壁に絵画も飾られていた。
若干オープンだからか、個室の中からスタッフさんの声が少し聞こえてくる。
「3時間、みっちり磨きましょうねっ。」
そう言って藤沼さんは完全な個室の扉を開けた。
「磨く・・・?」
個室の中はワインレッドのベッドが一つあった。
ヘッド部分には洗面台のようなものがあり、まるで美容院の洗髪台みたいに見える。
「あちらのお部屋でお着替えしてきてくださいね♡」
「へっ!?」
「ささっ、早く♡」
「ちょ・・!?」
ぐぃぐぃと押され、私は着替えの部屋に入れられてしまった。
その部屋には大きな鏡が一枚と、服を入れるバスケットが一つ。
あと『これに着替えるんだろうな』と思わせる紙でできた下着がワンセット置かれていた。
「~~~~っ。」
押し込められてしまった以上、断ることができない私はため息を一つ漏らしてから自分の服を脱ぎ始めた。
「はぁー・・・。」
圭一さんが戻って来るまでの3,4時間、私はここで時間を潰さないといけない。
そう考えたらエステを受けるのもいいかもしれないのだ。
「お金は結構あるし、足りる・・・よね?」
そう思いながら私は着替えを済ませ、扉を開けたのだった。
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