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「え・・・まだ外にいたんですか・・・!?」


私の生理が重たい日が終わり、陽太さんと出会った翌々日。

久しぶりにみんなにご飯を作ろうと思って食堂に入ると、庭の木に陽太さんが括りつけられてるのが目に入ったのだ。


「あー!柚香さん、もう体調は大丈夫っスか?」


窓の外を見てると、一平さんが私に駆け寄ってきた。


「一平さん・・・私は大丈夫だけどあれ・・・・」

「陽太は気にしなくていいっスよ。今、組長と藤沼さんがどうするか考えてますから。」

「でも外は寒いよ!?風邪ひいたりとか・・・・」


昼間はまだ温かいにしても、夜や明け方はぐっと冷え込むのが秋。

木に括られてることから食事だって取れないだろうし、立ったまま寝ることになってしまうのだ。


「姐さん、あれは構う必要ありませんから。」

「・・・。」


一平さんや他のみんなが私を名前ではなく『姐さん』と呼ぶときは『この家の事情』の時だ。

がっつり関係してなくても私をこの家の一員だと認めてくれてるから、そう呼んでくれて察させてくれてるのだ。


「構う・・わけじゃないけど、ちょっと放っておけないっていうか・・・」

「いいんです。」

「でも・・・」

「組長の言いつけですからね?」

「う・・・・」


『圭一さんの言いつけ』と言われたら私は何もすることができない。

この家の主は圭一さんなのだから。


「・・・わかりました。」

「よかったです。ところでどうしたんです?」

「あ・・元気になったからみんなにご飯作ろうと思って来たんだけど・・・」

「マジっスか!?やったぁ!・・・あ、久しぶりに買い物行きます?組長から許可もらってくるんで!」

「えっ!!いいの!?」

「久しぶりの柚香さんの料理っスからね!ちょっと待っててください!」


そう言って一平さんはスマホを取り出して圭一さんに電話をかけ始めた。


「あ・・!一平です!柚香姐さん連れて買い物行きたいんですけどいいっスか?・・・はい!・・はい!大丈夫っス!俺とあと何人かで行きますんで!・・・あざーす!!」


どうやら圭一さんがオッケーを出してくれたようで、一平さんはにこやかな顔で電話を切った。


「準備してきてください!行きましょうっ!」

「!!・・・うんっ!」


こうして私は久しぶりに買い物に『行く』ということができることになり、準備を済ませて一平さんたち3人と家を出た。


いつも行くモールまでは車だ。


「姐さん、何買います?」


モールの駐車場に車を止めながら聞いてきた一平さん。

私は今必要なものをざっと考えた。


「えーっと・・・食材はいくつか欲しいのがあって・・・あ、あと色鉛筆と新しいらくがき帳と・・・」

「ホームセンターの方も行きますか?俺も欲しいものあって・・・」

「あ、じゃあ先に一平さんの欲しいもの見いに行こうか。らくがき帳はホームセンターの方がありそうだし・・。」

「そっスね。冷凍とか先に買っちゃうと溶けちゃいますし。」


いつも行くモールはたくさんのお店がある。

食べ物のお店はもちろんのこと、ホームセンターや映画館、カラオケにボーリングなんかの施設まであり、すごく大きなモールなのだ。


「ホームセンターの中で一旦分かれる?レジ前くらいで集合でもいいし・・・」

「いや、それはダメっス。先に柚香さんのやつ探しに行きましょ。」


一平さんの強い押しに負け、私たちはホームセンターの中で一緒に行動することになった。

最初に私の欲しいらくがき帳を何冊かと、色鉛筆を取り、次に一平さんが欲しいといったものを探しに行く。


「一平さん、何欲しいの?」

「俺は『釘』っスね!」

「く・・ぎ・・・?」

「そうっス!」


日曜大工でもするのかと思いながらDIYのコーナーに行き、希望の釘を探していく。


「どのサイズの釘?」

「えーっと、できるだけ太いの探してるんスけど・・・」

「太いの?うーん・・・」

「あと長いのがいいっスね!」

「太くて長い・・・」


一平さんの希望のものが見つかるように探し、なんとか太くて長い釘を見つけてそれをレジに持って行った。

私のものと一緒にお会計を済ませ、次はスーパーに足を向ける。


「あ、ちょっと待って?トイレ行ってきてもいい?」


大きいモールは移動するだけで結構時間がかかる。

一旦トイレを済ませておきたいと思い、一平さんに声をかけたのだ。


「いいっスよ?ここで待ってるんで行ってきてください。」

「ありがとうっ。」


トイレの近くにあるベンチに腰かけた一平さんたちに荷物を預け、私はトイレに向かった。

釣り下げ看板を目印に歩いていき、通路を曲がっていく。

そしてさらに奥まで歩き、また通路を曲がり・・・と歩いてると、トイレまで結構遠いことに気が付いた。


「なかなか着かないなぁ・・・」


そう思いながら角を曲がった時、私は出合い頭に誰かとぶつかってしまったのだ。


「ひぁっ・・・!?」

「ぅわっ・・・!」


どんっ・・・!と、ぶつかってしまい、私は思わず自分の鼻を押さえた。

そして手で鼻をさすりながら見上げると、私より少し背の高い男の人が立っていたのだ。


「わ・・・すみません・・・。」


前をしっかり見てなかったことが原因でぶつかってしまったのだ。

素直に謝ってやり過ごそうと思ったのだけど、その男の人は私の手をがしっと掴んだのだ。


「へ・・・?」

「お前・・・柚香か・・・?」




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