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それから1週間後。

那智さんからの荷物が届く予定の今日、私は受け取り場所として指定したコンビニに足を運んでいた。

今日は『藤沼さんの奥さんと出かける』と圭一さんや陽太さんには伝えてあるからバレることはないのだ。

もちろん、本当に藤沼さんの奥さんに付き合ってもらってる。


「荷物だけ配達業者さんからもらったらすぐに帰りますので・・・付き合ってもらってほんとすみません・・・。」

「いえいえ、全然大丈夫ですよー?今日のことはナイショにしときますし。」

「助かりますー・・・。」


配達の指定時間は『13時から14時』でお願いしてある。

『1時間くらいならいいですよ』と言って仕事を抜けてきてくれた藤沼さんに感謝しながら、コンビニの前で立っていた。


(もう来るかな・・・?)


近くをトラックが通るたびに『あれかな?』と見てしまう。

付き合ってくれてる藤沼さんを早く解放してあげたくて気持ちだけが焦っていくのだ。


(時間ギリギリとか困るよぉー・・・。)


ドキドキしながらトラックを待ってるとき、私の名前を呼ぶ声が聞こえてきたのだ。


「柚香さーん・・・!」


その声に、私は隣にいる藤沼さんを見た。


「?・・・え、藤沼さん、呼びました?」

「いいえ?私じゃないですけど・・・」


そんな会話をしてる時にもまた私の名前を呼ぶ声が聞こえてくる。


「柚香さーん!」


声がしたほうを見ると、私は驚いた。

そこに・・・那智さんの姿があったのだ。


「えぇぇ!?那智さん・・・!?」

「へへっ、お届け物ですよー!」


そう言って那智さんは大きな箱を持っていた。

隣には長谷川さんもいる。


「わざわざ持ってきてくれたんですか・・!?」

「ちょっと旅行も兼ねて?かな?」


『旅行』という割に那智さんの側に真那ちゃんの姿がない。

気になった私が辺りを見回してると、那智さんが気づいたようで答えてくれた。


「真那は長谷川さんの仕事場の人が預かってくれてるの。1泊が限界だけど・・・どうせならと思って二人で来ちゃった。」

「そうなんですか!!」

「ざざっと観光して帰ろうと思うから・・・これ。」


そう言って那智さんは私に大きな箱を手渡してくれた。

この中に私と圭一さんのお揃いの着物が一式入ってる。


「・・・ありがとうございます!無茶なお願いを引き受けてくださったことにも感謝してますし、こうしてわざわざ来ていただいて・・・本当にありがとうございます・・・!」

「ふふ。・・・また柚香さんのデザインで服を縫わせてね?私、柚香さんのデザイン、すごく好きなの!」

「!!・・・はいっ!是非っ・・!」


那智さんと長谷川さんは駐車場にあった車に乗り込み、出発していった。

その姿が見えなくなるまで手を振り続け、藤沼さんと一緒に家に帰ったのだった。




ーーーーー



そしてさらに数日の時間が流れ、私はタワマンの仕事部屋で圭一さんにプレゼントする着物たち一式を確認していた。

別で取り寄せた雪駄や扇子なんかも一緒にし、風呂敷で包んでいく。


「特別な日までは少し遠いから・・・今、渡してもいいよね・・?」


日ごろの感謝も込めたものだ。

ナイショにして作ってきたからバレるのも時間の問題だし、できるだけ早く渡したくなった私はこれらを持って帰ることにした。

今日は陽太さんが私の運転手さんだ。


「陽太さん、ちょっと荷物運ぶの手伝ってもらっていいー?」


そう電話して陽太さんを呼び、一緒に運んでもらうことに・・・。


「これ、なんです?」

「へへっ、ナイショっ。」

「?」


体が大きい陽太さんは軽々と全ての荷物を持ち、車に運んでくれた。

その荷物たちと一緒に家に帰り、私は圭一さんの部屋で彼が帰ってくるのを心待ちにしたのだった。


そして・・・



「ただいまー。」

(帰ってきた!!)


普段通りを装うようにして家事を済ませた私は、圭一さんの部屋の隅っこに座っていた。

圭一さんは家に帰ってくるとまず最初に部屋に入ってジャケットとネクタイを外す。

だから部屋で待ってると確実に出会えるのだ。


「・・・あれ?柚香どした?」


読み通り部屋に入ってきた圭一さんは私がいることに気が付いた。

できるだけ隠れるようにして座っていたつもりだけど、たぶん・・・部屋に入る前から私がいることに気が付いていたのだろう。


「ちょっと・・・話?があって・・・?」

「?」


私はベッドを指さした。

そこに、圭一さんの和服セット一式が置いてある。


「え・・?あれ何?」

「あのね?圭一さんにお礼が言いたくて・・・準備したの。」


私は立ち上がり、ベッドの上に置いておいた着物を包んである風呂敷をゆっくり解いた。

着物を入れてある桐の箱を、圭一さんに差し出す。


「私を・・・救ってくれてありがとう。そして好きになってくれてありがとう。大事にしてくれてありがとう。・・・これは私がデザインしたの。圭一さんが着てくれたら・・・嬉しいです。」


そう言うと圭一さんは両手を出して、そっと桐の箱を受け取ってくれた。

ベッドに置いて蓋を開け、中身を見て目を丸くして驚いてる。


「・・・着物・・・?」

「うん。圭一さんが着てるの見たことないけど・・・絶対かっこいいと思う。私がプレゼントできるものってあまりないと思って・・・これにしたの。」


圭一さんは桐の箱から着物を取り出して広げて見た。

そして・・・


「これ・・・大島紬?」

「!!・・・わかるの?」

「一応・・・な。ちょっと着てみていいか?」

「うんっ。」


圭一さんは服を脱ぎ、少しぎこちない動きをしながら着物を着て行った。

その着方を知ってることにも驚いたけど、那智さんが作ってくれた着物は圭一さんにぴったりで、想像以上にかっこよかったのだ。


「どう?」

「・・・かっこいい。」

「ははっ、ありがとな?・・・てかこれ・・・めっちゃ高かったんじゃないか?柚香がデザインしたって言っても生地とか仕入れるのに金かかるだろうに・・・。」

「あ、それは那智さんにお願いして・・・」


私はこの着物たちが出来上がるまでの経緯を圭一さんに話していった。

メールやビデオ通話で打ち合わせを重ねたことや、那智さんに制作の依頼をかけたこと。

それにこの近くまで届けに来てくれたことなんかを。


「わざわざ来てくれたのか・・!?」

「うん・・・。『観光して帰る』って言ってたけど・・・申し訳ないから依頼料を上乗せして振り込んどいたの。あと、お菓子を少し送ったんだけど・・・また何かいいのがあったら送ろうかなって・・・。」

「そうだな。俺も何か考えとくよ。」


そう言った後、圭一さんは私の前に来た。

そして手を大きく広げて、私の体をぎゅっと抱きしめたのだ。


「?」

「何か企んでそうだなとは思ってたけど・・・まさか俺の物を作ってるとは思わなかった。本当にありがとう。」

「!!・・・へへ、やっぱりバレてた?」

「んー・・『何か』まではわからなかったけどな。」

「ならよかった。・・・あ、ちなみにその着物、お揃いで私のもあるんだよ?」

「!!・・・見たいから着てきて?」

「はーいっ。」


私は自分の部屋に戻り、那智さんに仕立ててもらった着物を着ていった。

なめらかな生地は袖通りがよく、着心地も最高にいい。


「生地でこんなに変わるんだ・・・知らなかった・・・。」


今後のデザインにも影響がありそうなこの体験。

私は一通り着てから圭一さんの部屋に戻った。


「・・・どう?」


少しだけお揃いになるように作った着物。

圭一さんはそのことに気が付いたのか、優しい笑みを零しながら私を見つめてくれた。


「・・・うん、よく似合ってる。かわいい。」

「へへっ。」


着物がよく見えるように体を右に左にと振ってみる。

すると圭一さんは手を広げ、私をじっと見たのだ。


「ほら・・おいで?」


呼ばれた私は圭一さんの腕の中に行く。

すると圭一さんはまた私を優しく抱きしめてくれたのだ。


「こんなかわいいことされたらお返ししないとな。」


その言葉を聞いて、私はぎょっとした。

今までもらったものはどれもこれも高価すぎるものだったことから、これ以上のものは恐怖でしかないのだ。


「いっ・・いらないよっ・・・!?」

「えー・・・。」

「ほっ・・ほんとに大丈夫だからっ・・!ねっ・・!?」

「・・・。」


なんだか不服そうな表情をしてる圭一さんだけど、これ以上は私の身が持たないことは私自身が一番よくわかっていた。

どうにかして気を反らさせようと私は彼の体にぎゅっと抱きついた。

・・・これが私の身を大変なことにさせるきっかけになるとも知らずに。


「・・・柚香?」

「・・・大好きだよ?圭一さん。圭一さんだけじゃなくてこの家のみんなも好き。いつも大事にしてくれて・・・本当にありがとう。」


プレゼントを渡すと同時に、ずっと思ってることも言葉にして伝える。

何度言っても足りないものだけど、何度伝えたっていいことだ。


「・・・俺も好きだよ。いい物をもらったことだし・・・もうちょっともらおうかな?」

「?・・・それってどういう・・・」


意味が分からずに聞き返すと、圭一さんは不敵な笑みを漏らしながら私をベッドに押し倒した。


「こういうこと。」

「!?!?」


器用に帯を緩められ、着物を淫らに脱がせていく圭一さん。

私はそれを阻止しようと手で頑張って支えるものの腰紐を抜き取られ、私は手首を拘束されてしまったのだ。


「ちょ・・・!?」

「とろとろに蕩けるまではいつも軽く抵抗してくるからな。無駄な抵抗だけど今日は全身舐めたいから手は上な?」

「舐めっ・・・!?」

「全身の力が抜けるまでいろんなところ舐めてやるよ。ちゃんと『気持ちイイ』と『イく』が言えたらご褒美やるから・・・。」

「!?!?・・・あっ・・!」


せっかく着た着物だったけどすぐに脱がされ、私は陽が昇るまで圭一さんに抱かれ続けたのだった。
















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