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第32話
「クロエーーー! ローラを助けてくれえええええーっ!!」
静寂な空間に予兆もなく響き渡る獣の遠吠えのような悲鳴を聞いて、廊下を歩いていた二人の看護師の女性が足を止めた。
「今の変な声は何?」
「先輩、あそこの病室から聞こえてきたようです!」
看護師は患者がどの病室に入院しているのか、全て把握している人は少ないであろうが、ある程度はわかっている。
後輩が何気なく指さした方向に目をやった。その病室は、先輩と呼ばれた女性が受け持った患者の部屋ではないが、おぼろげな記憶をたどってみる。
「思い出した! 確かあそこは……」
看護師の女性は、あの病室に現在入っているのが誰なのか脳裏に鮮明によみがえった。貴族の男性でかなりルックスが良くて看護師の間で噂になっていたのだ。
小耳にはさんだ話によると、貴族の奥さんに離婚されて精神のバランスが耐え切れなくなって病んでしまい、今では魂を吸い取られたみたいにほとんど抜け殻状態らしい。
あの人は、まともな会話は一生望めないかもしれない……。医師からそんな話も聞いたことがあって、何だか可哀想に思えて眉間にしわを寄せて悲しそうな表情になる。
「先輩? 泣いてます?」
「ちょっとね……ごめん」
この看護師の女性は、少しばかり強気で曲がったことの嫌いな正義感に溢れた性格で、仕事に対する責任感が人一倍強い。
思いのほか涙もろく同情的すぎる心の持ち主でもあるが、後輩たちの面倒見が非常によく、尊敬の眼差しを向けられており多くの人に慕われている。
「そういえば妹さんがいましたよね?」
「そうだったね。最近は全然見かけないけど……」
「少し前までは妹さん毎日来て、お兄様あああっ!早くお目覚めになってえええええ!!ってずっと騒いでましたよ」
「あなた、やけに詳しいわね」
「だって私の担当してる患者さんですもん」
後輩は何か思い出したらしく、急に意地悪げなニヤリとした笑みを口角に浮かべて言った。その患者には妹がいた。先輩も思い返して同意するように相槌を打つのだが、ここしばらくは面会には来られていないようだと口にする。
妹は日々、兄の様子を見に来て異様な悲鳴をあげていた。それなのに、ある日からぱったり顔を見せなくなったことに後輩は不思議な気さえした。
「行ってみます?」
「ちょっと気になるから確認してみましょう」
飛びぬけた美人ではないが、可愛いと思わせる類の二人の看護師は、心に引っかかる所があり病室の方向に歩き出していた。この後、踏み込んで衝撃の現場を目撃するのだった。
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
この物語を、皆さまと共有できたことが何よりの幸せです。
またどこかの物語でお会いできますように。
静寂な空間に予兆もなく響き渡る獣の遠吠えのような悲鳴を聞いて、廊下を歩いていた二人の看護師の女性が足を止めた。
「今の変な声は何?」
「先輩、あそこの病室から聞こえてきたようです!」
看護師は患者がどの病室に入院しているのか、全て把握している人は少ないであろうが、ある程度はわかっている。
後輩が何気なく指さした方向に目をやった。その病室は、先輩と呼ばれた女性が受け持った患者の部屋ではないが、おぼろげな記憶をたどってみる。
「思い出した! 確かあそこは……」
看護師の女性は、あの病室に現在入っているのが誰なのか脳裏に鮮明によみがえった。貴族の男性でかなりルックスが良くて看護師の間で噂になっていたのだ。
小耳にはさんだ話によると、貴族の奥さんに離婚されて精神のバランスが耐え切れなくなって病んでしまい、今では魂を吸い取られたみたいにほとんど抜け殻状態らしい。
あの人は、まともな会話は一生望めないかもしれない……。医師からそんな話も聞いたことがあって、何だか可哀想に思えて眉間にしわを寄せて悲しそうな表情になる。
「先輩? 泣いてます?」
「ちょっとね……ごめん」
この看護師の女性は、少しばかり強気で曲がったことの嫌いな正義感に溢れた性格で、仕事に対する責任感が人一倍強い。
思いのほか涙もろく同情的すぎる心の持ち主でもあるが、後輩たちの面倒見が非常によく、尊敬の眼差しを向けられており多くの人に慕われている。
「そういえば妹さんがいましたよね?」
「そうだったね。最近は全然見かけないけど……」
「少し前までは妹さん毎日来て、お兄様あああっ!早くお目覚めになってえええええ!!ってずっと騒いでましたよ」
「あなた、やけに詳しいわね」
「だって私の担当してる患者さんですもん」
後輩は何か思い出したらしく、急に意地悪げなニヤリとした笑みを口角に浮かべて言った。その患者には妹がいた。先輩も思い返して同意するように相槌を打つのだが、ここしばらくは面会には来られていないようだと口にする。
妹は日々、兄の様子を見に来て異様な悲鳴をあげていた。それなのに、ある日からぱったり顔を見せなくなったことに後輩は不思議な気さえした。
「行ってみます?」
「ちょっと気になるから確認してみましょう」
飛びぬけた美人ではないが、可愛いと思わせる類の二人の看護師は、心に引っかかる所があり病室の方向に歩き出していた。この後、踏み込んで衝撃の現場を目撃するのだった。
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
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