私を大切にしなかった貴方が、なぜ今さら許されると思ったの?

佐藤 美奈

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皇帝一家の食卓 前編

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皇宮の最も陽当たりの良い場所。そこからは、鮮やかな花々が咲き誇る美しい庭園が一面に広がっている。白いテーブルの上には、銀の食器が整然と並び、見る者を魅了するほど麗しいお菓子が繊細に配置されている。その光景は、まさに優雅そのもので、来訪者を迎えるための準備が整い、華やかさに満ちていた。

その場には、皇帝陛下と穏やかな微笑みを浮かべた皇后陛下、そして二人の聡明な息子、レオポルト皇太子が席に着いていた。

「――ずいぶん、遅いな」

アレフガルド帝国の最高権力者であるレオニード皇帝が、不安そうにその声を漏らす。自ら招待したが、約束の時間をとっくに過ぎても現れないことに、心中の不安が募るばかりであった。レオニードは深く考え込む。招待状に記した時間を守ることは当然の礼儀であり、今その約束が守られないことが気掛かりで仕方がない。

「レオポルト、本当に茶会への招待状を送ったのだな?」
「はい、父上。私がしっかりと手配いたしました」
「うむ。お前のことは信頼している。それなら……なぜ現れないのか」

レオニードが思い起こすのは、先日家族で食事をしていた時のこと。レオポルトが、夜会のパーティーで素晴らしい令嬢と出会ったことを話し、それに微笑ましく応じていたとき、家族の雰囲気は和やかそのものであった。

しかし、すぐにその家族の幸福な空気は破られた。その時、隣でふくれっ面をしていたマリーヌが口を挟んだ。娘が機嫌が悪いときにいつもする顔だ。レオニードは、多少甘やかしすぎたかもしれないと感じながらも耳を傾けた。

「お兄様を誘惑していたあの、貧乏な男爵家の令嬢のことですね」
「マリーヌ、彼女のことを悪く言うなと忠告したはずだが?」
「まあ、怖い。お兄様、そんなに怒らないで」
「ですがその女は、私の幼馴染の大事なヴィクトルと婚約破棄したのですよ!」
「だから、それはハリントン伯爵家に全面的に責任があると言っただろう」

その言葉に、食卓の空気が一変する。温かな食事の時間に、兄妹の言い争いが巻き起こった。だが、すぐに皇后クローディアが、その柔らかな声で言葉を挟む。

「お二人とも、どうか落ち着いて、喧嘩はもうおよしになさって」

その一言に、食卓はようやく静けさを取り戻す。クローディアはその美しさと冷静さで、どこまでも品格を漂わせている。歳を重ねたとはいえ、その肌は若々しく、身体は引き締まり、年月が彼女を一層魅力的にしたかのようだ。

実際、初対面の相手には何度もマリーヌの姉だと間違えられたことがある。しかし、彼女が皇后であるからといって、相手がお世辞を言っているわけではない。そのような人物も一部にはいるが、ほとんどの人は本心からそう思っているのだ。

クローディアが若いころ、恋多き女性であったことは周囲も知っているが、今ではすっかり落ち着き、理想的な淑女の姿を体現している。彼女の存在は、家族の中で確かな力を持つ一方で、その優しさと気配りで周囲を和ませていた。彼女の目の前では、誰もが一歩引き、心が穏やかになる。

(母上が家族の中にいらっしゃることが、どれほど心強いことか。心から、母上に感謝します)

レオポルトは、クローディアの言葉にすっと心を落ち着けると、ありがたいと感謝を込める。陛下と皇后の視線に、妹との言い争いを反省した表情で、申し訳なく思いながらうなずいた。
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