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4 婚約者の人間性

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「アイラはこの世界で天下を取りたい?それともある程度普通の人生で命の花を散らす?」

この世界でどのように生きたいのか……?青年は先ほどまでと違って真顔でアイラに問う。

「それならアイラとして、私はこれからどんな生涯を過ごすのか教えてくれる?」

そんなこと聞かれても意味不明だし、なにより転生したばかりで自分の置かれている状況すらも訳が分からない。これから先の未来を教えてほしい。アイラは思ったことを素直に尋ねてみた。

「いいよ」
「えっ!……いいの?」
「うん。そのくらいなら全然支障はないからね」

すると青年は他愛もない事のように問題ないと答える。正直なところ無理だろうな……と感じていたアイラは仰天して青年は語り始める。


「現在アイラは、この国のフレディ王子と婚約していて、それにジェラシーを感じるエミリアっていう侯爵令嬢に結構しつこく絡まれて嫌がらせされるかな?」
「えっ!うそ……私王子様と婚約してるの?」
「そうだよ」
「やったー!……でも嫉妬されるんだよね?」
「うん」

王子様と結婚――多くの女性がそんな夢を描いているのではないだろうか?アイラはその言葉が耳の中に入り込んできたら、無意識に躍り上がるように喜ぶ。

でも青年の言葉が頭をかすめる。王子との婚約に悪魔みたいにねたみ深いエレノアという令嬢に、相当いたぶられ思い悩む日々が続くらしい。

「でもエレノアからの意地悪に我慢したら、私は王子様と結婚できるんだよね?」

アイラは多少虐げられても最終的には、幸せになれるのならと受け入れる覚悟で尋ね返しました。ところが青年からは期待を裏切る返事が戻ってくる。

「だけど女性関係が派手な王子だから苦労するよ?」
「そ、そうなの?まぁ王子だし幾らかは……」
「フレディ王子はいつでも女の子のお尻を追いかけている人だから、将来的には愛人も両手に収まらないほどで数えきれないね」

平気な顔をして意外なほどあっさり答える青年に、アイラは騙し討ちにあったように絶望的な感情になる。婚約者は予想を上回る女ぐせの悪い人で、突然頭に冷水をかけられたみたいな衝撃を受けるのです。
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