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第12話
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ここのところ、学園にいても二人で会った時でもお決まりのレールに乗っているみたいに、顔を合わせればアダム殿下に謝罪をされる。
床に額をこすり付けて許しを乞うのです。でも浮気や不倫のことでそういう態度をしているわけではなく、エレナ令嬢に平手打ちしたことや今までの冷たい態度についての詫びです。
「エレナのことを酷い扱いして悪かった」
「……」
「友人との遊びを優先させて婚約者の君をほったらかしていた」
「……」
「これからはエレナと前のようにやり直したい。好きだという気持ちが溢れてきた」
非常にすまなさそうな口調で詫び言を述べるアダム殿下は、恋人の手を握り指先を通して気持ちを伝えようとした。
「馴れ馴れしい! どのような理由で心境の変化があったのか分かりませんが、今さら手のひらを返すようなことを言われても私達は割れた皿のように二度と戻りません」
「そんなものは皿をくっつければいい!」
「亀裂が生じて、いびつなヒビが入っていますが?」
「そこを何とか…許してくれエレナ」
「中途半端な謝罪など一切受け付けないと言っているのです」
「僕はこんなに謝っているじゃないか!」
「心がない気持ちはけっこうです。後はご自分の胸に聞いてください」
「ずっと不愉快な思いをさせて反省している……」
「あなたのことが嫌いなのです。もう目の前から消えてほしい」
黙って聞いていたエレナ令嬢は自然に腹立たしい思いで眉を動かし、小鳥のような美しい声で引導を渡すように叱責する。
アダム殿下の頭上に激しくきつい言葉を投げかけられる。真実を話そうとしない見せかけの謝罪をする彼を眺め美少女の顔は前触れなく歪み上品に顔をしかめた。
アダム殿下は浮気や不倫はバレていないと思っているのか、そのことについてほんの僅かでも触れないことに苛立った憤りが胸の奥に食い込む。
好きだったかわいく見える派手な顔も、今は頭のからっぽな俗物という思いと紙切れのように見捨てる存在でしかない。
頑固な汚れのように執念深くしつこく関係を修復しようとしていますが、頭を垂れられても不快感が募るばかりで完膚なきまでに愛情はない。
目の前で謝る恋人とエレナ令嬢の間には既に壊せない壁があり、護符のように光って寄せ付けたくない気持ちで心の中がダイヤモンドみたいに固く彼を拒否するのです。
「我がまま言わないから僕を捨てないで!」
かつて愛していたのに、ここまで愚かで哀れみを越える馬鹿さに呆れたような顔をしてその場を離れようとした時に、だだっ子のように足にしがみついてきました。
「汚い!」
エレナ令嬢は同情を誘われることなく一喝して空気を引き裂く鈴のように涼しい声が響き渡る。その瞬間パーンとほっぺたに渾身の力を込めた一発を食らわす。
後ろに倒れて吹っ飛び転がるアダム殿下は、おもむろに身を起こすが足元がおぼつかない様子。
「よくも僕のかわいい顔を叩いたね!」
「この前叩かれたのでお返しです。私に触れることは金輪際許しません!」
泣き崩れた美少年を放置して美しく気高い令嬢は振り向くことはない。自分には恋人への未練の糸なんて消えたという気分爽快な表情でその場を去る。
床に額をこすり付けて許しを乞うのです。でも浮気や不倫のことでそういう態度をしているわけではなく、エレナ令嬢に平手打ちしたことや今までの冷たい態度についての詫びです。
「エレナのことを酷い扱いして悪かった」
「……」
「友人との遊びを優先させて婚約者の君をほったらかしていた」
「……」
「これからはエレナと前のようにやり直したい。好きだという気持ちが溢れてきた」
非常にすまなさそうな口調で詫び言を述べるアダム殿下は、恋人の手を握り指先を通して気持ちを伝えようとした。
「馴れ馴れしい! どのような理由で心境の変化があったのか分かりませんが、今さら手のひらを返すようなことを言われても私達は割れた皿のように二度と戻りません」
「そんなものは皿をくっつければいい!」
「亀裂が生じて、いびつなヒビが入っていますが?」
「そこを何とか…許してくれエレナ」
「中途半端な謝罪など一切受け付けないと言っているのです」
「僕はこんなに謝っているじゃないか!」
「心がない気持ちはけっこうです。後はご自分の胸に聞いてください」
「ずっと不愉快な思いをさせて反省している……」
「あなたのことが嫌いなのです。もう目の前から消えてほしい」
黙って聞いていたエレナ令嬢は自然に腹立たしい思いで眉を動かし、小鳥のような美しい声で引導を渡すように叱責する。
アダム殿下の頭上に激しくきつい言葉を投げかけられる。真実を話そうとしない見せかけの謝罪をする彼を眺め美少女の顔は前触れなく歪み上品に顔をしかめた。
アダム殿下は浮気や不倫はバレていないと思っているのか、そのことについてほんの僅かでも触れないことに苛立った憤りが胸の奥に食い込む。
好きだったかわいく見える派手な顔も、今は頭のからっぽな俗物という思いと紙切れのように見捨てる存在でしかない。
頑固な汚れのように執念深くしつこく関係を修復しようとしていますが、頭を垂れられても不快感が募るばかりで完膚なきまでに愛情はない。
目の前で謝る恋人とエレナ令嬢の間には既に壊せない壁があり、護符のように光って寄せ付けたくない気持ちで心の中がダイヤモンドみたいに固く彼を拒否するのです。
「我がまま言わないから僕を捨てないで!」
かつて愛していたのに、ここまで愚かで哀れみを越える馬鹿さに呆れたような顔をしてその場を離れようとした時に、だだっ子のように足にしがみついてきました。
「汚い!」
エレナ令嬢は同情を誘われることなく一喝して空気を引き裂く鈴のように涼しい声が響き渡る。その瞬間パーンとほっぺたに渾身の力を込めた一発を食らわす。
後ろに倒れて吹っ飛び転がるアダム殿下は、おもむろに身を起こすが足元がおぼつかない様子。
「よくも僕のかわいい顔を叩いたね!」
「この前叩かれたのでお返しです。私に触れることは金輪際許しません!」
泣き崩れた美少年を放置して美しく気高い令嬢は振り向くことはない。自分には恋人への未練の糸なんて消えたという気分爽快な表情でその場を去る。
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