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愛人の男の楽しみ方
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「リーシャ様のように、か弱い姿と言いますか病弱を装えば、殿方は心を寄せやすいのでしょうか?」
セフィーナの問いに、リーシャは小さく笑みを浮かべた。
「そうですね……弱みをちらりと覗かせるといいますか、心の隙間を見せるような感じです」
「それで、たくさんの殿方はリーシャ様の虜になってるということですか?」
「はい」
「なるほど……」
セフィーナの質問に、リーシャはやんわりとした口調で、少しばかり思わせぶりに答えた。なるほど、とセフィーナは目を丸くしながらも、感心したように呟いた。どうやら、病弱を装うことは男性たちの心を揺さぶるのに『有効な手段』らしい。それは、リーシャの長きにわたる経験が導き出した結論であり真実だった。
「だから、リーシャ様は病弱のふりをしてると?」
「そうですね」
リーシャは、男心を引き寄せる手段として、病弱を演じているのだと打ち明けた。リーシャは言葉を続ける。
「私は日々、愛人の男たちを……増やすことばかりを考えて過ごしています」
リーシャは、より多くの男を手元に置くために徹底していた。私の生きる目的は、常に愛人の数を増やすことに尽きますと、リーシャは純粋さに満ちた真っ直ぐな瞳でセフィーナを見つめて言った。
「愛人の方々は、どんな感じなのですか?」
「セフィーナ様、どんな感じとは?」
セフィーナは、少し緊張した面持ちで問いかけると、リーシャは軽く眉を上げて聞き返す。
「リーシャ様の、愛人の殿方たちの好みやこだわりについて、教えていただけますか?」
「こだわり……ですか?」
セフィーナは、具体的な質問へと続けた。リーシャは、眉を寄せて目を細める。
「私は、細くて少し筋肉質がいいですね。背は特に気にしていません」
「ムキムキすぎる体格は、いただけませんか?」
「筋肉がありすぎるのは、ちょっと困りますわね」
リーシャの愛人の男たちは、細身でありながら適度に筋肉がついているらしい。リーシャは自分の好みを隠すことなく語った。真剣な表情で相槌を打つセフィーナを見て、リーシャは話を続けた。
「百人以上の愛人の男たちは、皆そこそこ以上の顔をしているのですよ」
「それは凄いですね。それだけの人数で、理想の殿方を揃えるのは大変だったのでは?」
「ええ、そうなのです。私が男好きと聞きつけて、妙なタイプの者もたくさん寄ってきましたから」
「妙なタイプ?」
リーシャは苦笑を浮かべつつ、肩を小さくすくめた。節度を知らぬ男食いだと評判を聞きつけ、彼女の周りには日に大勢の男が群がったという。その中から、自分の好みに合う者だけを選び抜くのは容易なことではなかった。中には、全然タイプではない不細工な男たちも混じっていた。
「やはり、私のタイプの男じゃないと……関係は持ちたくありませんからね」
「それは……そうですね。うふふふふ」
「身だしなみの整わない男は好みませんわね」
リーシャは。一段と真剣な面持ちで告げた。その言葉に、セフィーナは納得すると軽く笑った。二人は、身だしなみの整い方という『清潔感』が重要だと理解し合った。そして、リーシャは得意げに眉を跳ね上げて続ける。
「愛人の男たちの服装に髪型も、それぞれ違いますわね」
「さまざまな格好をさせて、楽しんでいらっしゃるのですね」
「ええ、そうですわ」
「それが、リーシャ様の愛人の殿方との接し方であり、遊び方なのですね」
思わず問い返したセフィーナに、リーシャは愉快そうに微笑み頷いた。百人以上もの愛人を抱えるのなら、それぞれ服装や髪型を変え、個性豊かに揃える方がいい。愛人の男の数を増やすことに関して、この女は一切の妥協を許さなかった。そして、そうやって様々な男を楽しむことが好きなようだ。
――数日後、アルディンとリーシャの運命は決定した。二人は幼馴染でありながら、共に『奴隷』という道を歩むことになったのだ。二人の家は貴族の地位を失った。
朝の霧に包まれた広い庭園で、アルディンとリーシャは無言のまま膝をつき、草むしりに追われていた。手は泥にまみれ、爪の隙間まで土が入り込む。それでも止まることは許されない。
「おい、靴が汚れているぞ」
主人の声が背後から落ちると、二人はすぐに顔を上げた。命令に逆らうことはできない。アルディンは歯を食いしばりながらも膝をにじらせ、靴を黙々と布で磨き始めた。その横でリーシャもまた、視線を伏せたまま泥を拭う。わずかに歪む表情には、屈辱と悔しさがにじんでいた。
泥に濡れた裾を気にする余裕もなく、彼らはただ黙々と雑草を抜き靴を磨く。貴族として育った日々は遠い幻のように消え去り、今あるのは命じられるままの労働だけだった。
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
この物語を、皆さまと共有できたことが何よりの幸せです。
またどこかの物語でお会いできますように。
セフィーナの問いに、リーシャは小さく笑みを浮かべた。
「そうですね……弱みをちらりと覗かせるといいますか、心の隙間を見せるような感じです」
「それで、たくさんの殿方はリーシャ様の虜になってるということですか?」
「はい」
「なるほど……」
セフィーナの質問に、リーシャはやんわりとした口調で、少しばかり思わせぶりに答えた。なるほど、とセフィーナは目を丸くしながらも、感心したように呟いた。どうやら、病弱を装うことは男性たちの心を揺さぶるのに『有効な手段』らしい。それは、リーシャの長きにわたる経験が導き出した結論であり真実だった。
「だから、リーシャ様は病弱のふりをしてると?」
「そうですね」
リーシャは、男心を引き寄せる手段として、病弱を演じているのだと打ち明けた。リーシャは言葉を続ける。
「私は日々、愛人の男たちを……増やすことばかりを考えて過ごしています」
リーシャは、より多くの男を手元に置くために徹底していた。私の生きる目的は、常に愛人の数を増やすことに尽きますと、リーシャは純粋さに満ちた真っ直ぐな瞳でセフィーナを見つめて言った。
「愛人の方々は、どんな感じなのですか?」
「セフィーナ様、どんな感じとは?」
セフィーナは、少し緊張した面持ちで問いかけると、リーシャは軽く眉を上げて聞き返す。
「リーシャ様の、愛人の殿方たちの好みやこだわりについて、教えていただけますか?」
「こだわり……ですか?」
セフィーナは、具体的な質問へと続けた。リーシャは、眉を寄せて目を細める。
「私は、細くて少し筋肉質がいいですね。背は特に気にしていません」
「ムキムキすぎる体格は、いただけませんか?」
「筋肉がありすぎるのは、ちょっと困りますわね」
リーシャの愛人の男たちは、細身でありながら適度に筋肉がついているらしい。リーシャは自分の好みを隠すことなく語った。真剣な表情で相槌を打つセフィーナを見て、リーシャは話を続けた。
「百人以上の愛人の男たちは、皆そこそこ以上の顔をしているのですよ」
「それは凄いですね。それだけの人数で、理想の殿方を揃えるのは大変だったのでは?」
「ええ、そうなのです。私が男好きと聞きつけて、妙なタイプの者もたくさん寄ってきましたから」
「妙なタイプ?」
リーシャは苦笑を浮かべつつ、肩を小さくすくめた。節度を知らぬ男食いだと評判を聞きつけ、彼女の周りには日に大勢の男が群がったという。その中から、自分の好みに合う者だけを選び抜くのは容易なことではなかった。中には、全然タイプではない不細工な男たちも混じっていた。
「やはり、私のタイプの男じゃないと……関係は持ちたくありませんからね」
「それは……そうですね。うふふふふ」
「身だしなみの整わない男は好みませんわね」
リーシャは。一段と真剣な面持ちで告げた。その言葉に、セフィーナは納得すると軽く笑った。二人は、身だしなみの整い方という『清潔感』が重要だと理解し合った。そして、リーシャは得意げに眉を跳ね上げて続ける。
「愛人の男たちの服装に髪型も、それぞれ違いますわね」
「さまざまな格好をさせて、楽しんでいらっしゃるのですね」
「ええ、そうですわ」
「それが、リーシャ様の愛人の殿方との接し方であり、遊び方なのですね」
思わず問い返したセフィーナに、リーシャは愉快そうに微笑み頷いた。百人以上もの愛人を抱えるのなら、それぞれ服装や髪型を変え、個性豊かに揃える方がいい。愛人の男の数を増やすことに関して、この女は一切の妥協を許さなかった。そして、そうやって様々な男を楽しむことが好きなようだ。
――数日後、アルディンとリーシャの運命は決定した。二人は幼馴染でありながら、共に『奴隷』という道を歩むことになったのだ。二人の家は貴族の地位を失った。
朝の霧に包まれた広い庭園で、アルディンとリーシャは無言のまま膝をつき、草むしりに追われていた。手は泥にまみれ、爪の隙間まで土が入り込む。それでも止まることは許されない。
「おい、靴が汚れているぞ」
主人の声が背後から落ちると、二人はすぐに顔を上げた。命令に逆らうことはできない。アルディンは歯を食いしばりながらも膝をにじらせ、靴を黙々と布で磨き始めた。その横でリーシャもまた、視線を伏せたまま泥を拭う。わずかに歪む表情には、屈辱と悔しさがにじんでいた。
泥に濡れた裾を気にする余裕もなく、彼らはただ黙々と雑草を抜き靴を磨く。貴族として育った日々は遠い幻のように消え去り、今あるのは命じられるままの労働だけだった。
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
この物語を、皆さまと共有できたことが何よりの幸せです。
またどこかの物語でお会いできますように。
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