私よりも幼馴染を選んだ王子の末路

佐藤 美奈

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第2話

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「……嘘でしょう?」

絞り出した声は、自分のものではないみたいに掠れていた。ショック、という言葉では足りない。全身の血が逆流し、指先が氷のように冷たくなっていく。

エリザは、私の手をぎゅっと握りしめた。その温かさだけが、辛うじて私をこの場に繋ぎとめていた。

「ミリア、大丈夫。落ち着いて」
「なんで……なんで、あの女が……」

エリザは悔しそうに唇を噛んだ。

「社交界の連中は、好き勝手言ってるわ。『殿下は真実の愛を選ばれた』ですって。『公爵令嬢という地位よりも、幼い頃からの純粋な愛を取ったのね』なんて、吐き気がする」

噂話の情景が、目に浮かぶようだった。扇で口元を隠しながら、煌びやかなドレスを着た令嬢たちが、面白おかしく私とカタリーナを天秤にかける。惨めだった。火傷を負ったあの日からずっと、私は彼女たちの好奇と同情の的だったけれど、ここまで残酷な仕打ちはなかった。

アーロン。あなたの声が、記憶の底から蘇る。

火傷の手当てがある程度終わり、包帯で顔の半分を覆われた私を、あなたは病室の扉の前から、まるで汚物でも見るかのような目で見つめていた。

「すまない、ミリア」

その声には、以前の温かさも柔らかさも、まったく感じられなかった。代わりに、何もかもを切り裂くような冷徹さだけが感じられた。

「この婚約は、なかったことにしてほしい」
「アーロン様……? 何を、おっしゃって……」
「わからないのか!?」

王太子殿下の怒声が、静かな病室に響き渡った。

「そんな醜い顔をした女を、王太子妃として迎えられるわけがないだろう! 我がシュトラウス王家の血に、傷物を入れることは許されない。公爵令嬢としての務めも果たせぬお前は、もはや何の価値もない!」

醜い。傷物。価値がない。

放たれた言葉の一つ一つが、鋭いナイフとなって私の心を抉った。涙さえ出なかった。ただ、目の前の男が、昨日まで愛を囁いてくれていた婚約者と同一人物だとは、到底信じられなかった。

「私の不注意でした。でも、この傷はいつか……」

「いつか治るだと? 馬鹿を言うな! その顔を見るたびに、民が何を思うか考えたことがあるのか? 国の恥だ! これ以上、私や王家の名誉を傷つけるな!」

そう言い捨てて、あなたは背を向けた。一度も、振り返ることなく。

あの冷たい瞳。あの残酷な言葉。それが、アーロン・シュトラウスという人間の本性だった。そして今、彼は私からすべてを奪った女、カタリーナを選んだ。

これは、罰なのだろうか。真実を隠し、嘘をつき続けてきた私への。それとも、単なる悪趣味な喜劇? だとしたら、神様はずいぶんと意地が悪い。
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