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第36話
魔性の令嬢は、王国を脅かすほどの恐ろしい存在でありながら、慌てふためく王の姿を目の前にして満足そうに微笑んだ。彼女はその満ち足りた表情で、ゆっくりと頷き余裕を漂わせた。その瞳の奥に秘めた思惑を感じさせると同時に、まるで自分がすべてを支配しているかのような威圧感を放った。
「最初から素直に従いなさい。反抗しないでくださいね」
「な……っ」
隷属の首輪が持ってこられるまで、私は悠然とおしゃべりを続けた。王は怒りと屈辱で、奥歯をギリギリと噛みしめ、その音が私にも聞こえた。しかし、彼は何も言えない。口を開こうとするたびに、その怒りと無力さが彼の言葉を飲み込んでしまっているのがわかる。
「カタリーナ、無礼にも程があるぞ! 我に向かって、そのような口をきくとは!」
それでも、さすがに王という立場にある者として、反論しなければならないと感じた。その声には、震えるような怒気とともに、必死に保とうとする威厳がにじみ出ていた。
大勢の貴族たちに見守られているとなると、王としての誇りやメンツが彼の中で強く働くのは当然のことだろう。無能な者ほど、そのメンツにこだわり、何としてでも保とうとするものだということを、私はこれまでの経験からよく知っている。
自分の立場を守り、威厳を崩さないためには、どんなに無理をしてでも強がりを見せようとするのだ。彼がどんなに内心で動揺していても、その姿勢を崩すことなく、必死に王としての威厳を保とうとするのが目に見えてわかった。
「母上を助けてって、泣き叫んだのを貴族たちも見ていますわ。あなたは、もう恥ずかしい王なんだから。私の言う通りにしておけばいいのよ。ね?」
子供に言い聞かせるように、私は優しくも残酷に言葉を重ねていった。王のプライドが少しでも残っているなら、その一片も無駄にしないように、徹底的に踏みにじってやるつもりだった。私の心の中で、アーロンの傷ついた心が絶え間なく痛み続けている。
「くっ……!」
王は悔しさを隠すことなく、低い声を漏らしながら歯を食いしばった。手のひらがわずかに震え、息を整えようとするその姿勢からは、彼のプライドがどれほど傷ついているのかが感じ取れた。
アーロンの心を引き裂いた王太后の息子。その罰として、彼の誇りやプライドがいかに高くても私は妥協しない。冷徹な言葉を一つ一つ響かせることで、王の心を確実に砕いていく。彼がどれほど苦しんでも、私はそれを楽しむことができる。
(アーロン様、あなたの苦しみを無駄にはさせません。私がその無念を晴らしてあげるから、安心していて)
カタリーナは、魂を抜かれたようになって無力に座り込んでいるアーロンを、切ない気持ちで見つめながら心の中でそう誓い、冷徹に目の前の障害を取り除く決意を固めた。
その時、侍従が桐の箱を運んできた。その箱は少々重く、まるで何か重要なものを預けられたかのように、侍従の動きはどこかぎこちなく見えた。手に力が入らないのか、箱を持つ手がわずかに震えているのがわかる。
それでも、侍従は慎重に歩を進め、決して箱を落とすことなく、カタリーナの前にその箱を静かに置いた。その箱に何が入っているのかカタリーナはすぐに察しがついたが、何かを告げるように深く息をついた。
桐の箱が目の前で、ゆっくりと箱が開かれていく。その瞬間、箱の中に収められていたものが徐々に姿を現した。二つの首輪が、黒曜石で精巧に作られており、暗闇の中でも禍々しい光を放ちながら静かに鎮座していた。その光は、まるで何かを引き寄せるかのように強烈で、見る者を圧倒する威圧感を放っている。
首輪の表面には、見たこともない複雑なルーン文字がびっしりと刻まれており、その模様は生き物のように動いているかのように感じられる。これが、隷属の首輪。目の前にあるだけで、見る者の魂を本当に吸い取られそうな、言葉にできないほどの恐ろしい存在感が漂っていた。私の心の中に、暗い恐怖がじわじわと広がっていくのを感じる。
私は、冷静な手つきで、そのうちの一つを静かに手に取った。触れた瞬間、ひやりとした冷たさが指先を伝い、まるで氷のように冷たい感触が全身に広がっていった。その冷たさは一瞬で心まで凍らせるような不気味な感覚を伴い、思わず息を呑んだ。首輪の硬さと冷たさが手にじっと感じられ、私の心に警告を鳴らすかのようだった。
「さあ、こっちにきなさい。あなたの大事な母上とお揃いで、これをつけてあげるから」
私は冷徹な笑みを浮かべながら、王に向かって静かに手を差し伸べた。その言葉には、冷ややかな楽しげな響きがあり、王の心をじわじわと締め付けるような恐ろしい予感が漂っていた。彼女の目はどこまでも冷酷で、王がどんな反応を示しても絶対に手を抜かないという決意が感じられる。その一言に込められた意味が、王には痛いほど伝わっていた。
「最初から素直に従いなさい。反抗しないでくださいね」
「な……っ」
隷属の首輪が持ってこられるまで、私は悠然とおしゃべりを続けた。王は怒りと屈辱で、奥歯をギリギリと噛みしめ、その音が私にも聞こえた。しかし、彼は何も言えない。口を開こうとするたびに、その怒りと無力さが彼の言葉を飲み込んでしまっているのがわかる。
「カタリーナ、無礼にも程があるぞ! 我に向かって、そのような口をきくとは!」
それでも、さすがに王という立場にある者として、反論しなければならないと感じた。その声には、震えるような怒気とともに、必死に保とうとする威厳がにじみ出ていた。
大勢の貴族たちに見守られているとなると、王としての誇りやメンツが彼の中で強く働くのは当然のことだろう。無能な者ほど、そのメンツにこだわり、何としてでも保とうとするものだということを、私はこれまでの経験からよく知っている。
自分の立場を守り、威厳を崩さないためには、どんなに無理をしてでも強がりを見せようとするのだ。彼がどんなに内心で動揺していても、その姿勢を崩すことなく、必死に王としての威厳を保とうとするのが目に見えてわかった。
「母上を助けてって、泣き叫んだのを貴族たちも見ていますわ。あなたは、もう恥ずかしい王なんだから。私の言う通りにしておけばいいのよ。ね?」
子供に言い聞かせるように、私は優しくも残酷に言葉を重ねていった。王のプライドが少しでも残っているなら、その一片も無駄にしないように、徹底的に踏みにじってやるつもりだった。私の心の中で、アーロンの傷ついた心が絶え間なく痛み続けている。
「くっ……!」
王は悔しさを隠すことなく、低い声を漏らしながら歯を食いしばった。手のひらがわずかに震え、息を整えようとするその姿勢からは、彼のプライドがどれほど傷ついているのかが感じ取れた。
アーロンの心を引き裂いた王太后の息子。その罰として、彼の誇りやプライドがいかに高くても私は妥協しない。冷徹な言葉を一つ一つ響かせることで、王の心を確実に砕いていく。彼がどれほど苦しんでも、私はそれを楽しむことができる。
(アーロン様、あなたの苦しみを無駄にはさせません。私がその無念を晴らしてあげるから、安心していて)
カタリーナは、魂を抜かれたようになって無力に座り込んでいるアーロンを、切ない気持ちで見つめながら心の中でそう誓い、冷徹に目の前の障害を取り除く決意を固めた。
その時、侍従が桐の箱を運んできた。その箱は少々重く、まるで何か重要なものを預けられたかのように、侍従の動きはどこかぎこちなく見えた。手に力が入らないのか、箱を持つ手がわずかに震えているのがわかる。
それでも、侍従は慎重に歩を進め、決して箱を落とすことなく、カタリーナの前にその箱を静かに置いた。その箱に何が入っているのかカタリーナはすぐに察しがついたが、何かを告げるように深く息をついた。
桐の箱が目の前で、ゆっくりと箱が開かれていく。その瞬間、箱の中に収められていたものが徐々に姿を現した。二つの首輪が、黒曜石で精巧に作られており、暗闇の中でも禍々しい光を放ちながら静かに鎮座していた。その光は、まるで何かを引き寄せるかのように強烈で、見る者を圧倒する威圧感を放っている。
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「さあ、こっちにきなさい。あなたの大事な母上とお揃いで、これをつけてあげるから」
私は冷徹な笑みを浮かべながら、王に向かって静かに手を差し伸べた。その言葉には、冷ややかな楽しげな響きがあり、王の心をじわじわと締め付けるような恐ろしい予感が漂っていた。彼女の目はどこまでも冷酷で、王がどんな反応を示しても絶対に手を抜かないという決意が感じられる。その一言に込められた意味が、王には痛いほど伝わっていた。
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