夫と愛人が共謀して私を陥れようと不倫をでっち上げて離婚と慰謝料を要求してきた。ひどい義家族と戦いの記録。

ぱんだ

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第6話 妹の血に怒りに燃える兄

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「私の大事なエリザベートに何をしている!」

部屋に入ったレオンは雷のような怒鳴り声をあげた。小さい頃から甲斐甲斐かいがいしく世話を焼いていた自分の命より大切な妹の顔に血のあとが付いているのが見えた。その瞬間エリザベートに向けて一直線に走っていく。

エリザベートを囲むように立っていた公爵家の義家族など払い飛ばす勢いだった。公爵家一同はレオンが通るとき体を避けて道をあけた。鋭い気迫のようなものが感じられて本能的にひよってしまった。

「お兄様……」
「口から血が出てるじゃないか。誰にやられたんだ!」
「……それは……」
「私が来たから怖がることも誰に遠慮することもない。教えてくれるね?」

白馬に乗った素敵な王子様が助けに来てくれた。エリザベートには心のどこかでそんな思いがあり、ほっと安心したような様子で柔らかい眼差しで見つめるとはかなく笑った。

レオンは妹が口から血を流しているのを見て冷静に考える暇はなかった。義家族に顔を叩かれたのだろう。レオンが誰に叩かれたのか聞いても何か言いよどんでいるのかエリザベートは答えなかった。

そんな妹に兄は力強く抱きしめて言う。この人なら自分がどんな苦しい状況でも守って助けてくれる。エリザベートは威風堂々とした兄の姿にすっかり魅せられてしまいました。

「アイラです。アイラに頬をぶたれました」
「よくもアイラああああああ!」
「ひぃーっ」

エリザベートの言葉を聞いた直後レオンは後ろを振り向いて叫んだ。憤慨ふんがいしたように声を尖らせて凄まじい殺気を放った。ひぃ、と義妹のアイラから臆病な悲鳴が漏れて心臓の音が一気に騒がしくなる。アイラは床にぺたんとしゃがみ込んで小さく震えている。公爵家の親族も不安と恐怖で身をすくませていた。

レオンは愛する妹の姿に痛々しいものを感じずにはいられなかった。傷口にハンカチを当てていた妹の手を優しく握り回復魔法を唱えた。エリザベートの顔は光に照らされアイラに叩かれて受けた鼻と口の傷が塞がりものの数秒で完全に治った。

「お手をわずらわせて申し訳ありません」
「そんなことはいい」
「お兄様ありがとうございます」

エリザベートの実兄レオンは伯爵家の当主で精霊魔法士。小し難しい話になりますが精霊の力を借りて魔法を発動する。精霊の恩恵を受けた数少ない人物である。レオンは国の中でも戦闘能力に優れたトップクラスの精霊魔法士で、その強さは普通の魔法士の千人分にも相当するほど能力を秘めている。

この国アルノール帝国で先代に代わって政治を取っているのは若き皇帝ロバート。国民を思いやることができる人格者で、レオンとロバートは幼馴染で子供のころから親交は続き今は無二の親友の間柄である。共に相手を認め合う男同士深い絆で結ばれていた。

レオンも普段はおだやかで物腰の丁寧で温かい心を持つ人柄が備わっている男性だが、エリザベートを大切にするあまり妹のこととなると冷静さに欠ける。見た限りでは細身の体と繊細な指に騙されて荒事をこなすとは想像もつかぬほど、女性的な顔立ちで年上女性にモテそうな優男だった。
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