王子に婚約破棄されて国を追放「魔法が使えない女は必要ない！」彼女の隠された能力と本来の姿がわかり誰もが泣き叫ぶ。

第40話

「それにイライジャは私にいくら借金してると思いますか？こんなのあんまりだわ」
「それはひどいですね」

クロエは母親的な気分でうんうんとうなずいていた。道のど真ん中で言い合いをしていたので場所を移動して、今は街角で見つけた洒落たカフェに入っている。イライジャの愚痴ぐちをこぼすシャーロットの聞き役にクロエは徹している。

文句を言われている帳本人のイライジャはクロエの隣に座り大きなあくびをした。丸テーブルの向かいに一人で座るシャーロット。普通は恋人の隣に座るんじゃないの？どうして私の隣にあなたがいるの？クロエはそんな思いを抱いていた。

「イライジャ！婚約破棄の慰謝料も貰うからね！いいの？」
「わかった。僕が悪いからきちんと払うよ」
「調子のいいこと言わないで！借金まみれで貧乏人のあなたに払えるわけないでしょ！」

シャーロットは強がって責めるような事を言いますが、浮気を繰り返す遊び人のイライジャに惚れているので別れるつもりはない。

「何年かかっても分割して払うから許してくれ」
「このバカ男！ふざけたこと言わないで！」

その上にギャンブルが原因で多額の借金を背負っているどうしようもない男のイライジャ。でも自分の非を認めて謝ればシャーロットは許す気でいる。なのに今回はどうして頭を下げないの？シャーロットは不安な思いが膨らむ。

「クロエを好きになった僕の気持ちは止められないんだ！」
「私の目を見なさいよ。さっきから涙が止まらないわ！」

イライジャは男女の交流会でクロエを見た瞬間に顔が熱くなって心のときめきを感じた。魔法がかかったように本気でクロエを好きになり、クロエと交際するために恋人のシャーロットに別れを切り出した。

シャーロットは涙をこぼし癇癪かんしゃくを起こしてキーキーと叫んだ。イライジャは困った顔でやれやれというように首を振っている。

「私はあなたと付き合うつもりはありませんよ？」

クロエは眉間の間を曇らせていた。シャーロットを悲しませるイライジャの反省の見られない態度に、ガツンと言っておきたい気持ちになった。

「ひうぇっ！？僕と付き合うってクロエは言ってくれたじゃないか？お父さんに婿むこを連れてくるように言われているんだよね？」

イライジャはふいに調子はずれの声をだした。話が違うじゃないか。恋人になってくれる約束だろう？恋人を捨ててまで君を選んだのにどうしてなんだよ！イライジャの瞳孔どうこうは異常に拡張して険しい顔でクロエに厳しく詰め寄ってきた。