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第8話

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「なんで鍵がかかってるの?カミュ!」

部屋の前にいたのはシルビアだった。いつものようにカミュと同棲生活をしている部屋に帰ってきた。

今日は学園は休みでカミュと別行動。シルビアは友人づきあいをしている相手と予定があったので、少し遅れてでの帰宅になったわけである。

だが様子がおかしい。鍵が閉まっていたのだ。最近はこんなことは一度もなかったのに……どうして?不安な胸騒ぎを感じたシルビアは、在宅を確認しておく必要があるのでカミュに呼びかけた。

「いないのかな?」

いくら大声で呼びかけてもやはり中からは応答する気配はない。仕方なくシルビアはどこかで時間を潰そうと思い移動しようとしていた時である。ドアが開いてカミュが顔を出す。

「いるのなら早く開けてよ!」
「ごめん……ちょっと寝てて気がつかなかったよ」

本音を言えば、腹がたってならなかったシルビアは不満そうに口をとがらせて威勢よく言い放ち、恨みのこもった視線を向けて睨んで見せると、カミュはがっくりと頭を垂れて謝罪した。

「ところでシルビアどうしたの?」
「は?」

一緒に暮らしているカミュから、いきなり異様な質問をされたシルビアは、困惑気味の少し間抜けな声を発してしまう。

「何ふざけてるの?ずっと毎日ここで二人で過ごしてるでしょ?」
「あのさ、今日は無理かな……」
「今日は暑かったから汗びっしょりだから早く流したいの。分かるでしょ?部屋に入れてよ!」

同じ屋根の下で肩を寄せ合って甘い生活を送っているのに、今日は駄目などと意味不明の言葉で話しかけられ、シルビアの心はますます苛立ってくるばかりでした。

この日は暑い日射しが照りつけてきた。体が汗だらけなので、大至急お風呂に入って汗を洗い流して服を着替えたい。

それなのに恋人のカミュは、一生懸命な顔でシルビアの進路をふさぐように体で押し返してきて、全力を尽くして部屋の中に入れてくれないのです。

「それじゃあ時間潰してきて」
「なんで?」

なおも目の前に立ちふさがるカミュの顔からは、焦りのようなものを感じられて、間違いなく何か隠しているとシルビアの直感が告げる。

どこまでも食い下がるカミュだが、無論それでおとなしく引き下がるシルビアではない。らちが明かないので強引な方法をとることにした。

シルビアは落ち着いて態勢を整えると、狙いを定めて突然カミュの股間をつま先で蹴り上げてやった。

「ひぎゃあああーっ!ぁあぁあぁあ……ああぅ……ぁぁ……」

股間に恐ろしい激痛が走り、驚きと絶叫に似た声が合わさって一瞬跳び上がった。そのまま倒れたカミュは大事な部分を手でおさえながら情けなくうずくまる。その姿は可哀想に思うほど必死に痛みに耐えていた。
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