5 / 14
第5話
しおりを挟む
アリーナとユリウスは部屋の前に立つ。二人は豪華な装飾が施されているドアにも引けを取らず、洗練された外見と雰囲気をまとっていた。
「二人は出掛けてるみたいだ」
「そうみたいね。楽しいデートの最中なのかしら?」
今は昼過ぎごろ、何度か呼びかけても応答することはなかったので、ユリウスの持っている合鍵で部屋の中に入った。学園は休業日なので二人はおそらく、今頃はデートを楽しんでいるはずだとアリーナが冷静な口調で言う。
部屋へ入ってきたアリーナは、人形のように無表情な顔でじっと動かなくなる。女性の靴がいくつか揃えてあった。
「久しぶりに戻って来たけど部屋が変わってる」
この間まで暮らしていた部屋を見て、困ったような顔でユリウスは大きくため息をつくと不満をもらしている。
リビングに移動すると二人の脱ぎ散らかした服に、香水や化粧品類がずらりと机の上に並んでいた。カミュとシルビアが一緒に生活をしてる気配がうかがえる。
シルビアの趣味なのだろうか?一言では言い表すことは出来ないほどの大きな内装の変化に、ユリウスは戸惑うばかりであった。
「とんでもない状態ね」
事前にユリウスから聞いていたが、実際に見るとアリーナは少し動揺の色が見て取れて、やりきれない感情だけが湧いてくる。
二人が一緒に住んでいる様子が明らかに分かり、ショックで短時間で立ち直れそうもなかった。現場をこの目で確かめたので、後でカミュの様々な言い訳にも騙されない。
「好きだったのに……」
もうカミュと別れるべきなんだろうなと、アリーナは悲痛な声を絞り出す。その悲しい表情には、やむを得ないこととして受け入れているようにも見える。
アリーナは鏡に映る自分の姿が、ふと目についた。かなり憔悴しきった顔をしている。だがカミュへの怒りのために心は燃え立っていた。
「無くなってる」
以前にアリーナが部屋を訪れた時には、二人の大切な思い出を共有した物が飾ってありましたが、今はどこにも見当たらない。
カミュに贈った高価なネックレスが、むなしくテーブルの隅に置かれているだけだった。
プレゼントした時は興奮で声を弾ませながら、子供のように飛び上がって大いに喜ぶカミュの姿が、断片的に頭の中を駆け巡って悲しみがとまらない。
「アリーナどうする?」
その場でうつむいたまま物思いにふけっていたら、ユリウスがどことなく寂しげな表情でアリーナのそばへ寄って声をかける。
アリーナは思わずハッと顔色をかえて、びくりと身体を震わせ慌てて振り向くと、ユリウスがまぶたから流れる涙をぬぐっていた。
「二人は出掛けてるみたいだ」
「そうみたいね。楽しいデートの最中なのかしら?」
今は昼過ぎごろ、何度か呼びかけても応答することはなかったので、ユリウスの持っている合鍵で部屋の中に入った。学園は休業日なので二人はおそらく、今頃はデートを楽しんでいるはずだとアリーナが冷静な口調で言う。
部屋へ入ってきたアリーナは、人形のように無表情な顔でじっと動かなくなる。女性の靴がいくつか揃えてあった。
「久しぶりに戻って来たけど部屋が変わってる」
この間まで暮らしていた部屋を見て、困ったような顔でユリウスは大きくため息をつくと不満をもらしている。
リビングに移動すると二人の脱ぎ散らかした服に、香水や化粧品類がずらりと机の上に並んでいた。カミュとシルビアが一緒に生活をしてる気配がうかがえる。
シルビアの趣味なのだろうか?一言では言い表すことは出来ないほどの大きな内装の変化に、ユリウスは戸惑うばかりであった。
「とんでもない状態ね」
事前にユリウスから聞いていたが、実際に見るとアリーナは少し動揺の色が見て取れて、やりきれない感情だけが湧いてくる。
二人が一緒に住んでいる様子が明らかに分かり、ショックで短時間で立ち直れそうもなかった。現場をこの目で確かめたので、後でカミュの様々な言い訳にも騙されない。
「好きだったのに……」
もうカミュと別れるべきなんだろうなと、アリーナは悲痛な声を絞り出す。その悲しい表情には、やむを得ないこととして受け入れているようにも見える。
アリーナは鏡に映る自分の姿が、ふと目についた。かなり憔悴しきった顔をしている。だがカミュへの怒りのために心は燃え立っていた。
「無くなってる」
以前にアリーナが部屋を訪れた時には、二人の大切な思い出を共有した物が飾ってありましたが、今はどこにも見当たらない。
カミュに贈った高価なネックレスが、むなしくテーブルの隅に置かれているだけだった。
プレゼントした時は興奮で声を弾ませながら、子供のように飛び上がって大いに喜ぶカミュの姿が、断片的に頭の中を駆け巡って悲しみがとまらない。
「アリーナどうする?」
その場でうつむいたまま物思いにふけっていたら、ユリウスがどことなく寂しげな表情でアリーナのそばへ寄って声をかける。
アリーナは思わずハッと顔色をかえて、びくりと身体を震わせ慌てて振り向くと、ユリウスがまぶたから流れる涙をぬぐっていた。
18
あなたにおすすめの小説
【完結】少年の懺悔、少女の願い
干野ワニ
恋愛
伯爵家の嫡男に生まれたフェルナンには、ロズリーヌという幼い頃からの『親友』がいた。「気取ったご令嬢なんかと結婚するくらいならロズがいい」というフェルナンの希望で、二人は一年後に婚約することになったのだが……伯爵夫人となるべく王都での行儀見習いを終えた『親友』は、すっかり別人の『ご令嬢』となっていた。
そんな彼女に置いて行かれたと感じたフェルナンは、思わず「奔放な義妹の方が良い」などと言ってしまい――
なぜあの時、本当の気持ちを伝えておかなかったのか。
後悔しても、もう遅いのだ。
※本編が全7話で悲恋、後日談が全2話でハッピーエンド予定です。
※長編のスピンオフですが、単体で読めます。
勇者様がお望みなのはどうやら王女様ではないようです
ララ
恋愛
大好きな幼馴染で恋人のアレン。
彼は5年ほど前に神託によって勇者に選ばれた。
先日、ようやく魔王討伐を終えて帰ってきた。
帰還を祝うパーティーで見た彼は以前よりもさらにかっこよく、魅力的になっていた。
ずっと待ってた。
帰ってくるって言った言葉を信じて。
あの日のプロポーズを信じて。
でも帰ってきた彼からはなんの連絡もない。
それどころか街中勇者と王女の密やかな恋の話で大盛り上がり。
なんで‥‥どうして?
私が彼から離れた七つの理由・完結
まほりろ
恋愛
私とコニーの両親は仲良しで、コニーとは赤ちゃんの時から縁。
初めて読んだ絵本も、初めて乗った馬も、初めてお絵描きを習った先生も、初めてピアノを習った先生も、一緒。
コニーは一番のお友達で、大人になっても一緒だと思っていた。
だけど学園に入学してからコニーの様子がおかしくて……。
※初恋、失恋、ライバル、片思い、切ない、自分磨きの旅、地味→美少女、上位互換ゲット、ざまぁ。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※他サイトにも投稿しています。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※小説家になろうで2022年11月19日昼日間ランキング総合7位まで上がった作品です!
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
私の方が先に好きになったのに
ツキノトモリ
恋愛
リリカは幼馴染のセザールのことが好き。だが、セザールはリリカの親友のブランディーヌと付き合い始めた。
失恋したが、幼馴染と親友の恋を応援しようとする女の子の話。※連作短編集です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる