婚約者の家に行ったら幼馴染がいた。彼と親密すぎて婚約破棄したい。

第8話

「あれから昼も夜もクロエのことで頭が一杯なんだ。彼女の顔を忘れられない。やり直したい…」
「お前はまだそんなことを言っているのか！もう一度殴られないと分からないようだな！」
「あの婚約者とは別れたのよ！いい加減に目を覚ましなさい！」
「私もクロエさんとまた会って話したい」
「えっ！？」
「えーっと？なんで？」
「エリザベスどういうこと？僕はてっきりクロエのことを嫌ってると思ってたんだけど…」

ジャックがエリザベスを遠ざける理由を語り始めると両親が反射のように激しい怒声を浴びせる。ところがエリザベスが予想をはるかに上回ることを無意識のうちに思わず口に出してしまう。

ジャックの両親は驚きの声を出すがそれ以上は言葉が出てこない。室内は静まりかえりジャックと両親は大きく疑問をふくらませて両家での話し合いの場での出来事を思い浮かべて頭の中を整理する。

なぜエリザベスはクロエと会いたいのだろう？他人のエリザベスが話し合いの場にいたことをクロエの父親に指摘されジャックの両親が庇って言い争いの過程でお互いが興奮し手に負えない口論は止まることなく仕舞いにはクロエの家族とは喧嘩別れで最後までいがみ合いながら婚約解消した。

記憶から消し去りたいほどの嫌な出来事を思い出して頭の中に再現した両親はどれだけ考えてもクロエと会いたいというエリザベスの言葉の答えが浮かんでこない。ジャックも両親と同じ気持ちでとめどなく疑問が溢れ出す。

「あの日クロエさんがジャックの家にやって来た時、今まであんなにたくさん女の人と話したのは初めてだったの」

この前婚約者のクロエがジャックの家に訪問した。その時にエリザベスと趣味のことや日々の生活の会話を二人きりで少しだけしていた。クロエは他愛のないおしゃべりをぼんやりと続けていただけでしたが、エリザベスの心の内では今までに感じたことがない新鮮な気持ちでクロエとの雑談は非常に愉快で満足感を得たのです。

実際には話していたのはほとんどエリザベスでクロエはこれ以上エリザベスの話が長くなっても困るので特に反論しないでエリザベスの話す内容に同調するように所々で肯定していただけ。

クロエは正直に言うと内心ではエリザベスのことを幼馴染だと知ってから厚かましくて我がままな子だと思っていましたが当然ながら分別をわきまえたクロエがそのようなことを口にするわけもなかった。

「エリザベスはそんなにクロエに好意を持ったのか」
「うん…」

クロエは小さい頃から相当に出来がよい子で、知識が自然に頭の中に浸みこむほど勉強もそつなくこなし顔も美しく周囲のほとんどの者が注目し人望もありクロエに対して皆が慕い尊敬され羨ましいと思って見られていた。

同性の友人もかなり多く学生時代の休み時間などでは華やかに談笑を交わし合いのびのびと楽しい気持ちで過ごし、廊下でクロエとすれ違うとき緊張したり照れた顔になる男子達。

比べてエリザベスには兄が3人いて末っ子で初めての女の子ということもあり両親から溺愛され生まれた時からうなるほどの財産がありましたから子供の頃から好きな物は何でも買って貰えて可愛い洋服を着せられ甘やかされて育てられる。

勉強は苦手だが愛らしい少女のような顔立ちのエリザベスはその外見ゆえに学生時代は男子から言い寄られ度々告白されてモテたが同性の友人は極端に少ないことに悩みを抱えていた。当時の暗く悲しい秘密が今も心に深い傷を負って彼女を苦しめる。エリザベスは過去の悪夢を思い起こす。