「愛も信頼も消えた」妻を苦しめた夫一家の結末

佐藤 美奈

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二度目の結婚

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私は研究所(聖域)を出ると、外には眩しいほどの春の日差しが降り注いでいた。雪解け水が小川となって音を立てて流れ、その水の流れに沿うように黒かった大地には小さな花々が顔を出し始めている。寒い冬を乗り越え、やっと訪れた春の息吹を感じながら私はその光景を見つめた。

「マリアンナ」

丘の上で、アレクセイが待っていた。彼は軍服ではなく、領主としての正装に身を包んでいる。その姿は、今日という特別な日を迎えるために準備されたかのようだった。

「お待たせしました、アレクセイ様」
「良い天気だな」

彼は私の手を取ると、優雅にエスコートしてくれた。丘の下には、領民たちが集まっているのが見えた。色とりどりの旗が風になびき、どこからともなく音楽が響いている。今日は、私たちの結婚式の日。

「……本当に、私でよろしいのですか? バツイチのですよ?」
「くどいぞ……私は、その毒に侵されたと言ったはずだ」

アレクセイは立ち止まって私に向き直った。その青い瞳は、春の空よりも澄み切って輝いていた。

「君がいないと、私の城は寂しすぎる。君の淹れる怪しげな茶と、皮肉の効いた会話がないと、もう生きていけない体になってしまった」

「まあ。それは重症ですね……一生かけて、治療して差し上げなくては」

「ああ、頼む。私の命も、心も、全て君に預ける」

彼は私の前に跪き、小さな箱を差し出した。箱の中には、青い薔薇を模した美しいサファイアの指輪が収められていた。私が来た頃、彼の毒殺未遂に使われたモチーフを選んだユーモアに、思わず吹き出してしまった。

「……最高ですわ、あなた」
「君に似合うと思ってね」

彼は私の薬指に指輪を滑らせた。ひんやりとした感触の後に、じんわりと熱が伝わってくる。

「誓います。この命ある限り、あなたの隣で、最強の毒と薬を作り続けることを」

「私も誓おう。君がどんな毒を作ろうとも、私が全て君を守り抜くことを」

私たちは口づけを交わした。その瞬間、領民たちの歓声が遠くから響いてきた。風が吹き抜け、私のベールがふわりと舞い上がった。

最初の結婚では、冷めたスープと義家族の冷たい視線に囲まれ、地獄のような日々が続いた。その後、復讐の炎を抱きながら逃避行を重ね、長い冬を越えて私は辿り着いた。私を認めて必要とし、愛してくれる居場所に。

「さあ、行こう。辺境伯夫人」
「はい、旦那様」

私たちは手を繋ぎ、満たされた顔で光の中へ歩き出した。

私の名前はマリアンナ・オルロック。北の地に咲く一輪の毒花。そして、氷の狼に愛された世界で一番幸せな女。これをもって、私の処方箋は書き納めとしよう。これからは、愛という名の甘くて素敵な劇薬の研究に忙しくなりそうだから。

最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
この物語を、皆さまと共有できたことが何よりの幸せです。
またどこかの物語でお会いできますように。
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