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第3話
「そう、よかったわね」
「それだけ? もっと他に言うことないの?」
「……何て言えば満足なの?」
「別にぃ? ただ、お姉様、いつまでもそんな暗い顔してないで、早く次の人でも見つけたら? もうフレックス様は私のものなんだから、お姉様は関係ないじゃない」
関係ない。その言葉が、私の中で何かのスイッチを押した。今まで必死に抑え込んでいた感情が、止められなくなって一気に溢れ出す。
「あなたには、わからないでしょうね!」
私の突然の怒声に、ユリアはびくりと肩を震わせた。
「人のものを平気で奪っておいて、その相手の気持ちを考えようともしない。あなたは昔からそう。私の大事なものを、全部、全部!」
「な、何よ急に! 愛し合ってるんだから仕方ないじゃない!」
「愛ですって? あなたがしていることは、ただの強奪よ! 姉に対する劣等感を、私からすべてを奪うことで満たそうとしているだけじゃないの!」
「違う! 私はフレックス様を愛してる! お姉様こそ、フレックス様のこと、本当は窮屈に思ってたんじゃないの? いつも義務みたいに、完璧な婚約者を演じてただけじゃない!」
ユリアの言葉は、痛いところを突いていた。図星だった。でも、だからといって、彼女の行いが許されるわけじゃない。
「だとしても、あなたに奪われる筋合いはないわ! もう顔も見たくない。出ていって!」
「……っ! お姉様のバカ! もう知らない!」
ユリアは顔を真っ赤にしてそう叫ぶと、ドレスを抱え直して、ばたばたと部屋から出ていった。一人、部屋に取り残された私は、深く息をつきながら息が荒くなるのを感じていた。胸の中で、疲れがじわじわと押し寄せ、無意識に溜まった息が口から漏れる。
妹に初めてぶつけた抑えきれなくなった感情。それは、私が今まで隠してきた全ての怒りや不満を一気に放出した瞬間だった。後悔が胸に渦巻く一方で、どこか心の中で爽快感も感じていた。
もう、誰かの期待に応えるために無理に良い子を演じる必要はない。優しさを振りかざして、我慢し続けることに疲れ果てた。これからは、私自身の気持ちを最優先にして生きると決めた瞬間だった。
それから、私は屋敷に引きこもるようになった。王都中の貴族たちが、ダグラス家の姉妹の醜聞で持ちきりなのは、想像に難くない。婚約者を奪われた可哀想な姉エリーゼ。目的のためには手段を選ばない強かな妹ユリア。そんな同情と好奇の視線に晒されるくらいなら、一人でいる方がずっとましだった。
一方で、ユリアとフレックスは、王都の社交界の注目の的だった。二人はいつも手を取り合い、幸せをこれでもかと見せつけていた。学園の舞踏会では、宣言通り、国王陛下の前で正式に婚約が発表された。
ユリアは、あのロイヤルブルーのドレスを身に纏い、満面の笑みでフレックスの腕に寄り添っていた。その光景を遠くから眺めながら、私の心には、チリリとした痛みが走る。それは嫉妬なのか、それとも……妹の行く末を案じる気持ちなのか自分でもよくわからなかった。
(あの二人、幸せになれるのかしら?)
フレックスのわがままな性格と、ユリアの気まぐれな性格。似た者同士、とは言えるかもしれない。でも、お互いの欲しいものを手に入れたら、その先には何が残るのだろう。
「それだけ? もっと他に言うことないの?」
「……何て言えば満足なの?」
「別にぃ? ただ、お姉様、いつまでもそんな暗い顔してないで、早く次の人でも見つけたら? もうフレックス様は私のものなんだから、お姉様は関係ないじゃない」
関係ない。その言葉が、私の中で何かのスイッチを押した。今まで必死に抑え込んでいた感情が、止められなくなって一気に溢れ出す。
「あなたには、わからないでしょうね!」
私の突然の怒声に、ユリアはびくりと肩を震わせた。
「人のものを平気で奪っておいて、その相手の気持ちを考えようともしない。あなたは昔からそう。私の大事なものを、全部、全部!」
「な、何よ急に! 愛し合ってるんだから仕方ないじゃない!」
「愛ですって? あなたがしていることは、ただの強奪よ! 姉に対する劣等感を、私からすべてを奪うことで満たそうとしているだけじゃないの!」
「違う! 私はフレックス様を愛してる! お姉様こそ、フレックス様のこと、本当は窮屈に思ってたんじゃないの? いつも義務みたいに、完璧な婚約者を演じてただけじゃない!」
ユリアの言葉は、痛いところを突いていた。図星だった。でも、だからといって、彼女の行いが許されるわけじゃない。
「だとしても、あなたに奪われる筋合いはないわ! もう顔も見たくない。出ていって!」
「……っ! お姉様のバカ! もう知らない!」
ユリアは顔を真っ赤にしてそう叫ぶと、ドレスを抱え直して、ばたばたと部屋から出ていった。一人、部屋に取り残された私は、深く息をつきながら息が荒くなるのを感じていた。胸の中で、疲れがじわじわと押し寄せ、無意識に溜まった息が口から漏れる。
妹に初めてぶつけた抑えきれなくなった感情。それは、私が今まで隠してきた全ての怒りや不満を一気に放出した瞬間だった。後悔が胸に渦巻く一方で、どこか心の中で爽快感も感じていた。
もう、誰かの期待に応えるために無理に良い子を演じる必要はない。優しさを振りかざして、我慢し続けることに疲れ果てた。これからは、私自身の気持ちを最優先にして生きると決めた瞬間だった。
それから、私は屋敷に引きこもるようになった。王都中の貴族たちが、ダグラス家の姉妹の醜聞で持ちきりなのは、想像に難くない。婚約者を奪われた可哀想な姉エリーゼ。目的のためには手段を選ばない強かな妹ユリア。そんな同情と好奇の視線に晒されるくらいなら、一人でいる方がずっとましだった。
一方で、ユリアとフレックスは、王都の社交界の注目の的だった。二人はいつも手を取り合い、幸せをこれでもかと見せつけていた。学園の舞踏会では、宣言通り、国王陛下の前で正式に婚約が発表された。
ユリアは、あのロイヤルブルーのドレスを身に纏い、満面の笑みでフレックスの腕に寄り添っていた。その光景を遠くから眺めながら、私の心には、チリリとした痛みが走る。それは嫉妬なのか、それとも……妹の行く末を案じる気持ちなのか自分でもよくわからなかった。
(あの二人、幸せになれるのかしら?)
フレックスのわがままな性格と、ユリアの気まぐれな性格。似た者同士、とは言えるかもしれない。でも、お互いの欲しいものを手に入れたら、その先には何が残るのだろう。
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