婚約者を妹に取られた私、幼馴染の〝氷の王子様〟に溺愛される日々

佐藤 美奈

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第5話

それからというものカイルの“好きだ攻撃”は毎日のように続いた。

私が庭でひとりぼっちで空を見上げていると、気づけばどこからともなく彼が現れて、しっかりと私の目を見つめてこう言った。

「今日の横顔も、やっぱり可愛いな。好きだ」

その瞬間、世界が彼の言葉に引き寄せられるように感じられた。私の心は一瞬で温かくなり、その言葉が、私の存在すべてを肯定してくれたようだった。

ある日、お風呂から上がり、ふわりとしたバスローブ姿で廊下を歩いていると、ふとした拍子に角でカイルとばったり出くわした。彼は無言で私を見つめ、その表情は何とも言えない余裕を漂わせていた。

「油断しすぎだろ……まあ、そんなとこも好きだけど」

その言葉を聞いた瞬間、私の胸は弾むように高鳴り、どうしていいかわからなくなった。カイルの笑顔と、ちょっと照れたような口調に、胸の奥が甘く締めつけられるような気がした。

そして、静かな午後。私は本を読んでいた。物語の世界に没頭していた私の背後から、突然カイルの声が耳元に響く。

「そんな難しい本読んでるのか。賢いな。好きだ」

その声は、私の内面を見透かすように温かくて、少しだけ困惑しながらも嬉しく思う自分がいた。カイルが何気なく放った言葉の一つ一つが、私にとって特別な意味を持つように感じられた。どこか遠くに行ってしまいそうな自分を、彼がしっかりと引き寄せてくれているような感覚に包まれていた。

もう、どうしてこんなことに。私はカイルの告白を、すべて軽く流すことに決めた。毎日繰り返される「好きだ」という言葉も、最初はドキドキしたけれど、今ではただの冗談にしか思えなかった。

「はいはい、また今日も冗談ですね」

自分にそう言い聞かせて、あえて本気になることを避けた。だって、彼はあの『氷の王子様』だ。学園中の誰もが憧れる存在で、冷徹なその態度の裏に、誰にも見せない笑顔を持つわけがない。

そんな彼が、私なんかに本気になるはずがない。それに、私が彼の気持ちを真に受けるなんて絶対におかしい。きっと、弟がしたことへの罪滅ぼしか、ただの情けだろうと、私は無理やり自分を納得させることにした。

「カイル様、毎日来なくていいって言ってるのに」

私がつい言ったその一言に、カイルはゆっくりと首を振った。そして真顔で答える。

「様はやめろ。それに、俺が来たいから来てるだけだ」

毎日のように、カイルは私の部屋にやって来ては、自分の部屋でくつろいでいるかのようにソファに座っている。私の部屋に何の遠慮もなく、最初から自分の居場所であるかのように振る舞うその姿に、いつの間にか慣れてしまっていた。

その日も、カイルは無防備にソファに身を任せ、何気ない口調で言った。

「それにしても、お前の妹も大概だな」

私は本を読んでいた手を止め、少しだけ顔を上げて彼を見た。

「……ユリアが、どうかしたの?」

カイルは少し顔をしかめながら言った。

「今日、学園でフレックスと見せつけるようにキスしてたぞ。お前への当てつけみたいで胸がむかついた」

その言葉に、私の心が少しだけざわついた。ユリアとフレックス、彼らの関係がそんな風に学園中で話題になっていることは私にも気づいていた。それでも、まさかカイルがそのことを気にしているとは思わなかった。

私の心は、ふわりと浮き上がり、彼の言葉が頭の中で何度もリフレインされる。その冷たく見える言葉の裏に、どこか温かさを感じてしまう自分がいることに気づき、胸の奥がかすかに苦しくなった。

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