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「少しの間だけどアメリアと離れて寂しいな」
「ノア私もよ」

数週間後、彼が仕事で2泊3日遠くの街へ行くことになりました。しばしの別れを惜しむ恋人のように見つめ合いキスをする。

「私は不安……イザベラさんとは親しい仲なんでしょう?」
「イザベラとは小さい頃から一緒に育って兄と妹みたいな関係だよ」
「そうなの?」
「間違ってもイザベラと愛し合うとかあり得ない事だから」

彼と共に行動する中にイザベラという女性がいる。男爵令嬢でありながら、現場に欠かすことのできない資格を持っている人だと言う。

イザベラは独身。彼と幼馴染で昔から親交があるらしい。アメリア自身は面識のない女性ですが彼からそう聞いたことがあって気分が落ち着かない。

男性と女性の間に絶対安全の保証はないのだ。アメリアはトラブルを未然に防ぐ方法がないのか考えるが思いつかなくて、やはり彼を信じるしかなかった。


「イザベラと会った時には必ずプレゼントを用意してくれてるんだ。そういうのってやっぱり嬉しいよな」
「そうなんだ……気が利く子だね」
「それと僕が病気になった時に片時も離れず看病してもらったこともある」
「ふーん、そのくらいは普通だと思うけど?」

彼の幼馴染のイザベラは顔を合わせた時には、決まって彼にそれなりに高価な贈り物を準備しているそう。

他に1年くらい前に彼が体の具合が悪くなった時、イザベラは付きっきりの看病をしたというのです。身体まで拭いてもらったという話にアメリアは精神的な打撃を受けて顔色が青ざめる。

1年前?割りと最近じゃないの?ひょっとして幼馴染と浮気?アメリアはひどく落胆していたが、それを顔に表さないように気の毒に思うほど一生懸命耐えていました。

その後も彼は幼馴染と顔をすり寄せた仲睦まじい出来事などを語り、アメリアの身体の内部が混乱するようなことを平気な顔をして浮かれた声で話してきます。

「アメリア驚いた?でも身体を拭いてもらったのは背中だけだよ」
「別に動揺なんかしてないわ」
「幼馴染だし、イザベラは僕の裸を見ても何も感じなかったと思う」

彼は不思議なほどにスッキリした笑顔で話しますが、アメリアは同じ女性として惚れた男性の無防備な姿に、いくら幼馴染でも平然としていられる女性がいるとは思えない。

美しく整い過ぎている顔立ちの彼が病気で弱り横になっていたら、少しでも好印象を持ってもらうように全身全霊を捧げて彼のために尽くして、彼の気を引くためによからぬことを考えるけどな?と思いを巡らせていた。
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