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「今日はノアが帰って来る!」

2泊3日なので2回の夜を過ごしたから今日は彼が帰還する。期待に胸が弾み嬉しい気分になって自然に頬がゆるみ笑顔を抑えきれない。

確か夕方くらいに帰ると言っていました。とびっきりの笑顔で彼を迎えてあげよう。ところが旅行前とすっかり変わって彼はアメリアに無愛想な態度をとり始めるのです。

短い期間で彼に何が起こったのか?そして彼が何を思いどのような精神状態にあったのか?アメリアがそれを知るのは彼の帰宅から数ヶ月も後でした。


彼が帰ってくる日。アメリアは外出をしないで首を長くして待っていました。夕方に戻る予定だけど、もしかして昼に帰ってくるかもしれない。しかし残念ながらドアが開いたのは夜10時を回った頃です。

「ノアお帰り、遅かったね」
「どうしたの?こんなところで」
「疲れたでしょ?湯船に浸かってゆっくりしてね」
「うん……アメリアありがとう」

最初沈んだ表情の彼は、アメリアと顔を合わせると慌てる。アメリアは固い表情をして仁王立ちしていた。腰に手を当てたその姿は野性的な格好良さを感じます。

無言で睨みつけていたのでドアを開けた瞬間に彼はパニック状態になりましたが、アメリアは即座に表情を緩めて彼を優しくいたわると、安心した顔の彼は頼りなげな声でアメリアと挨拶を交わす。

数日ぶりに見る彼はどことなく衰弱して顔に生気がない。それでもアメリアが思わずむしゃぶりつきたくなるほど色気のある雰囲気を放つ。

彼の美しくあでやかな身体つきに、アメリアの瞳は魅せられ釘付けになる。目が血走り心臓の鼓動が全速力で走った直後みたいに激しくなっていく。

「さ、さっそく汗を流させてもらうよ」
「ノアちょっと待って!」

興奮が最高潮に達しようとして抱きつこうとした時、そのタイミングで彼は浴室に向かうと冷静さを失くした声で言う。

獲物を狙う凄腕のハンターを思わせるアメリアの欲望むき出しの視線を感じ取った彼は、子ウサギが逃げるように小走りで背中を丸めてその場を離れた。


「まだ夜は長いのよ?ベッドでは逃がさないわ……ノア今日は寝かさないわよ」

彼に肩透かしを食わされ不満そうな顔のアメリアだったのですが、一転して切り替わり不敵な笑みをもらす。

私からは逃げられないよ?後で覚悟しなさい。逃げたお仕置きをベッドの上でたっぷりしてあげるわ。

「アメリアが飢えた猛獣みたいで……怖かった」

彼はお風呂に入り、つかの間の癒しの空間で胸をなでおろす。
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