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第5話

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「最近はお嬢様のお顔に笑顔が増えましたね。とても嬉しゅうございます」
「そうかしら」

あれから妹のエリーも反省してくれて、再び前と同じように仲の良い姉妹に戻れたことが何よりも嬉しい。

しばらくの間は落ち着いた日々を過ごしていた。やっとアルフィ殿下は諦めたのだと思い、オリビアは心がほぐれて柔和な笑顔を見せるようになる。

ところが彼は意志の強い男で、彼女に愛想を尽かされ本気で見捨てる目をされてもへこたれない。一途に好きな人を想い続けるだけなら好感を持てます。

オリビアの家の近くで待ち伏せするようになり、まるでストーカーみたいにつきまとっていた。報告を受けたオリビアは、元の関係に戻るまでは決して引き下がらないというアルフィの往生際の悪さに呆れと脅威を感じた。

「あれ……?人影が見えた。殿下はあそこにいるのね。ほんと懲りない人……」

その日の夕方頃、馬車で家に帰って来たら彼の姿を確認できた。まだ明るかったので壁のすみで隠れるように座っているのが分かりました。

家の周囲に浮浪者がうろつき回っているのは、気持ちの良い気分ではありません。彼は乞食のようなみすぼらしい服装でもなく、病人みたいに青白い顔で痩せている感じでもなくて健康そうで、しっかり食事も取ってるようです。

でも間違いなく一国の王子の取るべき行動ではない。最初の頃は、門のすぐそばに座っていたらしい。でも見張りの騎士に邪魔だと迷惑げな表情で注意されて、ぶつぶつと不満を垂れながら少し離れたところに移動する。


「キャーーーーー!!」

その瞬間、思わず悲鳴を上げてしまった。理由は後ろから勢いよく地面を蹴る音が聞こえて、反射的に振り返ったら睨みつけるほど真面目な顔のアルフィが、オリビアに向かって猪みたいに身を投げ出して突き進んできたのです。

彼に何かされるのかと本能的な恐怖を感じたオリビアは、のども張り裂けるくらい高らかな悲鳴を上げました。

「お嬢様!ご無事ですか!」
「どうかされましたか!」

オリビアの救いを求める叫び声に、即座に反応したのは近くにいた二人の門番でした。和やかな雰囲気でぼんやりと会話を続けていたら、オリビアの金切り声が耳の中に入り込んできた。

お嬢様のあんな全力をつくした悲鳴は聞いたことがない。これはただ事ではなさそうだと、弾丸のように走って現場へかけつけたところ、オリビアは立ち尽くしている。他に誰の姿もない。

彼はオリビアの悲鳴に驚いて、魚みたいに口を開けたまま停止していたと思ったら、どういう訳かオリビアのほうを向いて照れ笑いすると手を振り回してすっ飛んで逃げていく。
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