「本当に僕の子供なのか検査して調べたい」子供と顔が似てないと責められ離婚と多額の慰謝料を請求された。

佐藤 美奈

文字の大きさ
29 / 39

第29話 妻の浮気を疑う夫に恐怖

しおりを挟む
もう絶対に裏切らない。信じてくれるソフィアと子供たちを裏切る事はしないとダニエルは妹に語った。兄もマリアを克服するためにあらゆる苦悩を噛みしめて努力している。ソフィアは兄にマリアの誘惑をたち切れるだけの強い男だと信じていると返して、改めて兄は自分の精神の弱さを詫びて後にした。

夫のジャックとは離婚しなかった。あの場でソフィアから離婚を申し出されるのは自然であり、ジャックも当然だと思っていた。にも関わらず婚姻を継続すると妻に言われた。まったく予想外の答えにジャックは驚いて、妻と言葉を交わしながら心の底に思いがけない気持ちが動いていた。

大切な子供を取り合うようなことはしたくなかったし、ソフィアは離婚は不幸そのものだという意識があるので、数々の心の重荷を背負ってでもそのように考えを固めた。

「ソフィアおはよう」
「おはようございます」

夫にマリアの事や日々成長する我が子の教育について色々と話したいのですが、話せば意地悪な質問をしたり不機嫌な口ぶりで悪意ある発言をしてしまうかもしれない。

なので夫とは最低限の会話だけでとりあえず朝の挨拶を交わすくらい。ですが困ったことに、あれから毎日のように夜の営みを夫から誘われますがソフィアは不機嫌な表情で拒否していた。

「――どうして断るんだ? 僕たちは夫婦だろう?」
「あなたに触られたくありませんから」

人一倍に旺盛な性欲の夫。子供と自分の鑑定をしろと疑うような事を言われる前までは、夫婦生活は月に数回は普通にありましたが最近はなくなった。マリアとの不倫を知ってしまったので夫に抱かれる気は余計にない。

「許してくれたのではないのか?」
「だから完全には許してないと申しましたが?」

ジャックはその事が不満らしく、ぶつぶつ文句をこぼし妻を困らせた。ソフィアは沈んだ表情になり憂鬱ゆううつな気分で毎日を過ごした。

「ソフィアこれは何だ!」
「あなた急に何なの?」

妻が自分に身体を許してくれない……思い詰めて夫はノイローゼ気味になっていた。この時ジャックはソフィアが本当に浮気をしているかも知れないと疑い始めた。

「夫の僕が、一度も見たことがない派手な下着だな」
「それは以前に親しい友人にいただいたものです」
「嘘をつくな!」

妻の美しく白い肌を見ていると絶えず胸がうずいた。気持ちを抑えられないジャックは、ソフィアがいない時を狙ってクローゼットをあれこれ物色するようになる。

そうして奥に隠すように置かれていた箱の中からを発見した。なんだあれは? 不思議に思い箱の中身を確認しようと開けて見た。

あっと言う間に夫は顔色が変わる。瞳は燃えさかる炎のように揺らめいて、こめかみに青筋を立てて顔がカッと熱くなり怒りで真っ赤になっていた。

「本当です。あまりにも透けて布面積の小さい下着なので、恥ずかしくて隠していました」
「最もらしい言い訳をするな! 誰の前でこの下着を着けていたんだ答えろ!」
「ひどい……私が浮気してると言いたいの?」

どうして? 妻は顔に恥じらいの色が溢れた。下着を漁られて妻は夫の行動に呆然とした気持ちになりましたが正直に話した。親しい友人たちと気楽な集まりをした時にプレゼントされた。

友人に新鮮な感覚になれるから身をまかせて穿いてみたら? とアドバイスされたのですが、ただソフィアには刺激的で迫力のある下着に圧倒されてずっと封印していた。もちろん夫にも誰にも見せたことがなかった。

妻の言う事は、不信感を募らせていた夫にはとうてい信じられないことだった。離婚するしかないのか? 夫は実際にマリアと不倫をして家庭を裏切っておきながら妻を疑うのか? 妻を責めるのは筋違いってもんじゃないか?

ソフィアは悪い事はしてないのにジャックに責められて、この事件でより一層に夫婦の絆が失われていく。

――そんなある日に夫は衝動的な凶行に走った。妻が風呂上がりに肌の手入れをしている時にキスだけでもさせてくれ! と部屋に入ってきてソフィアに抱きつき力ずくでキスをしようとした。

「いやあぁぁぁ!」

きゃーっと悲鳴が聞こえて、廊下を歩いていたメイドは急ぎ足で一直線にやって来た。奥様に何かあったのか? そう思いながら緊迫した顔でドアを開けると、ソフィアがジャックの顔を両手で押してキスを頑なに拒絶していた。

メイドは対応に困った顔でぽかんとしていたが、奥様が本気で嫌がっているのを感じて思考停止していた脳がハッとして叫んだ。

「誰かきてーーーーー! 奥様が暴漢に襲われてます!!」

次に侍女というよりは護衛役を務める女性が数人ほど疾風のごとくに飛んできた。二人の間に割って入り公爵家の主人は呆気なく床に叩きつけられた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。

アズやっこ
恋愛
私は旦那様を愛していました。 今日は三年目の結婚記念日。帰らない旦那様をそれでも待ち続けました。 私は旦那様を愛していました。それでも旦那様は私を愛してくれないのですね。 これはお別れではありません。役目が終わったので交代するだけです。役立たずの妻で申し訳ありませんでした。

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

【完結】生贄になった婚約者と間に合わなかった王子

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
フィーは第二王子レイフの婚約者である。 しかし、仲が良かったのも今は昔。 レイフはフィーとのお茶会をすっぽかすようになり、夜会にエスコートしてくれたのはデビューの時だけだった。 いつしか、レイフはフィーに嫌われていると噂がながれるようになった。 それでも、フィーは信じていた。 レイフは魔法の研究に熱心なだけだと。 しかし、ある夜会で研究室の同僚をエスコートしている姿を見てこころが折れてしまう。 そして、フィーは国守樹の乙女になることを決意する。 国守樹の乙女、それは樹に喰らわれる生贄だった。

【完結】「心に決めた人がいる」と旦那様は言った

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
「俺にはずっと心に決めた人がいる。俺が貴方を愛することはない。貴女はその人を迎え入れることさえ許してくれればそれで良いのです。」 そう言われて愛のない結婚をしたスーザン。 彼女にはかつて愛した人との思い出があった・・・ 産業革命後のイギリスをモデルにした架空の国が舞台です。貴族制度など独自の設定があります。 ---- 初めて書いた小説で初めての投稿で沢山の方に読んでいただき驚いています。 終わり方が納得できない!という方が多かったのでエピローグを追加します。 お読みいただきありがとうございます。

誓いを忘れた騎士へ ―私は誰かの花嫁になる

吉乃
恋愛
「帰ってきたら、結婚してくれる?」 ――あの日の誓いを胸に、私は待ち続けた。 最初の三年間は幸せだった。 けれど、騎士の務めに赴いた彼は、やがて音信不通となり―― 気づけば七年の歳月が流れていた。 二十七歳になった私は、もう結婚をしなければならない。 未来を選ぶ年齢。 だから、別の男性との婚姻を受け入れると決めたのに……。 結婚式を目前にした夜。 失われたはずの声が、突然私の心を打ち砕く。 「……リリアナ。迎えに来た」 七年の沈黙を破って現れた騎士。 赦せるのか、それとも拒むのか。 揺れる心が最後に選ぶのは―― かつての誓いか、それとも新しい愛か。 お知らせ ※すみません、PCの不調で更新が出来なくなってしまいました。 直り次第すぐに更新を再開しますので、少しだけお待ちいただければ幸いです。

妻の私は旦那様の愛人の一人だった

アズやっこ
恋愛
政略結婚は家と家との繋がり、そこに愛は必要ない。 そんな事、分かっているわ。私も貴族、恋愛結婚ばかりじゃない事くらい分かってる…。 貴方は酷い人よ。 羊の皮を被った狼。優しい人だと、誠実な人だと、婚約中の貴方は例え政略でも私と向き合ってくれた。 私は生きる屍。 貴方は悪魔よ! 一人の女性を護る為だけに私と結婚したなんて…。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 設定ゆるいです。

【完結】私に可愛げが無くなったから、離縁して使用人として雇いたい? 王妃修行で自立した私は離縁だけさせてもらいます。

西東友一
恋愛
私も始めは世間知らずの無垢な少女でした。 それをレオナード王子は可愛いと言って大層可愛がってくださいました。 大した家柄でもない貴族の私を娶っていただいた時には天にも昇る想いでした。 だから、貴方様をお慕いしていた私は王妃としてこの国をよくしようと礼儀作法から始まり、国政に関わることまで勉強し、全てを把握するよう努めてまいりました。それも、貴方様と私の未来のため。 ・・・なのに。 貴方様は、愛人と床を一緒にするようになりました。 貴方様に理由を聞いたら、「可愛げが無くなったのが悪い」ですって? 愛がない結婚生活などいりませんので、離縁させていただきます。 そう、申し上げたら貴方様は―――

その結婚は、白紙にしましょう

香月まと
恋愛
リュミエール王国が姫、ミレナシア。 彼女はずっとずっと、王国騎士団の若き団長、カインのことを想っていた。 念願叶って結婚の話が決定した、その夕方のこと。 浮かれる姫を前にして、カインの口から出た言葉は「白い結婚にとさせて頂きたい」 身分とか立場とか何とか話しているが、姫は急速にその声が遠くなっていくのを感じる。 けれど、他でもない憧れの人からの嘆願だ。姫はにっこりと笑った。 「分かりました。その提案を、受け入れ──」 全然受け入れられませんけど!? 形だけの結婚を了承しつつも、心で号泣してる姫。 武骨で不器用な王国騎士団長。 二人を中心に巻き起こった、割と短い期間のお話。

処理中です...