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決戦! 地区別運動会
五チーム対抗! 地区別運動会(2)
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競技は順調に進み、玉入れが終わったところで、昼食休憩になった。
残念ながら、二人三脚は一位だったものの、障害物競争、玉入れはいまひとつ成績がふるわず、関東チームは現在三位、一位は、関西(以下略)、二位は北海道・東北、四位が中部で、五位が九州というランキングで、午前の競技は終わった。
「はーい、おにぎりだよー」
千錦寮の上級生たちが作ってくれたというお弁当がシートの上に広げられる。山のようなおにぎりに、豚汁もあった。千錦寮の調理室で作ったものを鍋ごと運んできたので、まだ温かい。
各地区、それぞれの昼食だったが、中部地区は何故かうどんがふるまわれていた。
「真尋さん、あれ、夜なべして打ってたみたいだよ」
ジョージが、少しうらやましそうに言った。
「なんか、どうあっても行事には絡みたいみたいだねえ……」
色々すごい人なんだろうけど、力の入れどころはそこでいいのだろうか、と、人事ながら志信は思う。
「グラウンドが火気厳禁でなければジンギスカンにするんだけどなー」
と、言っていたのは、北海道東北チームの晶子だった。
「ダメですよ、そんな事になったら、酒飲むやつが出てきちゃうでしょ、打ち上げまで我慢して下さいね」
「えー、したら外? それはイヤだなー」
そうだった、今は三位だけれど、最下位は打ち上げ会場が外になってしまうのだ。志信が早希に、尋ねた。
「関東チームの打ち上げは何やるんですか?」
「焼き鳥」
「え、それって、もう中庭でやるの決めちゃってません?」
「いやいや、食堂もすぐに外に出られるし、窓のところでやれば……まあ」
あさっての方向を向いている早希に、志信が言った。
「早希先輩、もしかして、どこのチームも、本当は外でやりたかったりしませんか?」
「ぎく」
「って、声に出てますよー!」
「ほら、今日は暖かいし、夜も多分寒くはないと思うんだよね」
「先輩……」
志信が苦々しい顔をすると、
「ほらほら、そろそろ応援合戦がんばろ?」
早希の勢いに押し切られるように、志信は亜里沙達と共に、応援合戦の準備を始めた。
応援合戦は、最下位のチームから行われた。
九州チームは、一年生達が、九州+沖縄をそれぞれ周遊する体で、各県の紹介が入った。おおよその流れは、関東チームと同じなのだが、九州チームは衣装等は作らず、すべてパントマイム的な動きのみで行われた。
上級生が多い事もあって、さすがに慣れているというか、ちょっとしたコント並にテンポがよくて、見るものの笑いを誘い、場は大いに盛り上がった。
中部地区は、またちょっと違った雰囲気で、オーソドックスな応援合戦に近いものがあった。それほど練習時間があったようには思えないのに、音頭に併せてエールを送る様は、本当に応援団のようで見応えがあった。
そして、関東チーム。
おおよその流れは九州と同様に、各都道府県の名物キャラクターがコスプレをして出てくる構成なのだけれど、衣装で出落ち感があるというか、待機しているだけで笑い声がまきおこっていた。
都知事のモノマネがたいそう受けていたのは、衣装のせいなのか、元ネタのせいなのか、本人のキャラのせいだったかもしれない……。
北海道・東北は、皆でねぶたのハネトの踊りを揃って踊っていた。
「あれ、青森ですよね、北海道とか、東北の他の県の人とか、あれで納得してるのかな」
亜里沙が言うと、裕太が、
「あー、あれ、もう、毎年アレなんだよね、東北は祭りが多いし、それぞれの県で主張し始めると、収集つかなくなるから、統一しちゃったらしい」
「あー、時間、ないですもんねえ……」
九州や関東のようにコント風にやろうと思うと、どうしてもシナリオを考えたり、数回とはいえリハーサルが必要になる。迫力もあるし、青森県人であれば、特に練習もいらない、仮に、途中で段取りがわからなくなっても、わかる人間に併せておけばなんとかなるから、便利といえば便利なのかもしれない。
最後に、現在一位の関西(以下略)チームは替え歌の合唱だった。
エルガーの『威風堂々』に併せて、各県、各地域の名物などが織り込まれていた。
これも、曲は有名で、主旋律は皆わかるし、歌詞はプリントアウトしたものを見ながら歌うだけだから、それほど練習は必要ないかもしれない。
「なんか、皆、工夫してるんですね……」
志信がため息をつくと、
「学生の本分からは、少し逸脱してるかもしれないけど、皆、好きなんだよな、こう、何かするのが」
裕太が言った。
残念ながら、二人三脚は一位だったものの、障害物競争、玉入れはいまひとつ成績がふるわず、関東チームは現在三位、一位は、関西(以下略)、二位は北海道・東北、四位が中部で、五位が九州というランキングで、午前の競技は終わった。
「はーい、おにぎりだよー」
千錦寮の上級生たちが作ってくれたというお弁当がシートの上に広げられる。山のようなおにぎりに、豚汁もあった。千錦寮の調理室で作ったものを鍋ごと運んできたので、まだ温かい。
各地区、それぞれの昼食だったが、中部地区は何故かうどんがふるまわれていた。
「真尋さん、あれ、夜なべして打ってたみたいだよ」
ジョージが、少しうらやましそうに言った。
「なんか、どうあっても行事には絡みたいみたいだねえ……」
色々すごい人なんだろうけど、力の入れどころはそこでいいのだろうか、と、人事ながら志信は思う。
「グラウンドが火気厳禁でなければジンギスカンにするんだけどなー」
と、言っていたのは、北海道東北チームの晶子だった。
「ダメですよ、そんな事になったら、酒飲むやつが出てきちゃうでしょ、打ち上げまで我慢して下さいね」
「えー、したら外? それはイヤだなー」
そうだった、今は三位だけれど、最下位は打ち上げ会場が外になってしまうのだ。志信が早希に、尋ねた。
「関東チームの打ち上げは何やるんですか?」
「焼き鳥」
「え、それって、もう中庭でやるの決めちゃってません?」
「いやいや、食堂もすぐに外に出られるし、窓のところでやれば……まあ」
あさっての方向を向いている早希に、志信が言った。
「早希先輩、もしかして、どこのチームも、本当は外でやりたかったりしませんか?」
「ぎく」
「って、声に出てますよー!」
「ほら、今日は暖かいし、夜も多分寒くはないと思うんだよね」
「先輩……」
志信が苦々しい顔をすると、
「ほらほら、そろそろ応援合戦がんばろ?」
早希の勢いに押し切られるように、志信は亜里沙達と共に、応援合戦の準備を始めた。
応援合戦は、最下位のチームから行われた。
九州チームは、一年生達が、九州+沖縄をそれぞれ周遊する体で、各県の紹介が入った。おおよその流れは、関東チームと同じなのだが、九州チームは衣装等は作らず、すべてパントマイム的な動きのみで行われた。
上級生が多い事もあって、さすがに慣れているというか、ちょっとしたコント並にテンポがよくて、見るものの笑いを誘い、場は大いに盛り上がった。
中部地区は、またちょっと違った雰囲気で、オーソドックスな応援合戦に近いものがあった。それほど練習時間があったようには思えないのに、音頭に併せてエールを送る様は、本当に応援団のようで見応えがあった。
そして、関東チーム。
おおよその流れは九州と同様に、各都道府県の名物キャラクターがコスプレをして出てくる構成なのだけれど、衣装で出落ち感があるというか、待機しているだけで笑い声がまきおこっていた。
都知事のモノマネがたいそう受けていたのは、衣装のせいなのか、元ネタのせいなのか、本人のキャラのせいだったかもしれない……。
北海道・東北は、皆でねぶたのハネトの踊りを揃って踊っていた。
「あれ、青森ですよね、北海道とか、東北の他の県の人とか、あれで納得してるのかな」
亜里沙が言うと、裕太が、
「あー、あれ、もう、毎年アレなんだよね、東北は祭りが多いし、それぞれの県で主張し始めると、収集つかなくなるから、統一しちゃったらしい」
「あー、時間、ないですもんねえ……」
九州や関東のようにコント風にやろうと思うと、どうしてもシナリオを考えたり、数回とはいえリハーサルが必要になる。迫力もあるし、青森県人であれば、特に練習もいらない、仮に、途中で段取りがわからなくなっても、わかる人間に併せておけばなんとかなるから、便利といえば便利なのかもしれない。
最後に、現在一位の関西(以下略)チームは替え歌の合唱だった。
エルガーの『威風堂々』に併せて、各県、各地域の名物などが織り込まれていた。
これも、曲は有名で、主旋律は皆わかるし、歌詞はプリントアウトしたものを見ながら歌うだけだから、それほど練習は必要ないかもしれない。
「なんか、皆、工夫してるんですね……」
志信がため息をつくと、
「学生の本分からは、少し逸脱してるかもしれないけど、皆、好きなんだよな、こう、何かするのが」
裕太が言った。
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