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決戦! 地区別運動会
戦い終わって日が暮れて(1)
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競技に出ていた一年生は疲れてるだろうから休んでいていいと早希は言ったが、テンションが上がったままだった志信と亜里沙は、打ち上げの手伝いに参加した。
千錦寮各階の調理室と、一刻寮にも同様にある調理室が、それぞれ打ち上げという名の地区別コンパの準備に余念がない。
準優勝と三位は、食堂を反面ずつ使うので、実質二位と三位に差はほとんどない。出入り口側を使えるので、三位の方がかえって便利なのでは、と、すら、思われた。
一刻寮側では焼き物の仕込み、千錦寮側では、汁物、というか、大鍋で煮る鍋物を、調理まで終えておいて、カセットコンロで温めるだけにしておくという算段だった。
料理には、競技に出ていなかった千錦寮の上級生達も来てくれて、亜里沙と志信はひたすら野菜の革を向き続けた。
「へー、ハッチ、がんばったねえ」
監査委員の烏丸百合子は東京出身だが、東京といっても八王子の方で、通学にかかる時間は、実は志信と変わりないという。関東チームでも、数少ない都民だ。
昨年の運動会では副団長だったそうで、武史や早希が一年生だった頃の事を懐かしそうにしみじみと言った。
「ハッチ、二人三脚で転んでさ、一番最初のランナーだったもんだから、すっごく責任感じて、ずーーっとすみませんすみません、って言い続けてたんだよねー、アホらしいくらい真面目な子だったけど、そっかー、がんばったのかー」
「すごかったよね、こう、全チームに囲まれてさ、すぐに落とされちゃうかと思ったのに、必死で粘ってて」
「うん、あれはカッコよかった」
志信と亜里沙は、武史達のがんばりを一生懸命伝えた。
「中部はさ、影で真尋さんが仕切ってるじゃない? 勝ち負けより、全員で参加する事を目標にするようなところがあるから、団長副団長、ちょっと華奢っぽくなかった?」
「あー、言われてみれば……」
中部チームの騎馬の様子を思い出しながら志信は言った。
「運動部とか、運動部経験者とか関係無く選手を選ぶから、そういう事もあるんだよね、対して、九州とか、北海道東北はわりとガチ、北海道東北は、人数もそれなりにいるから、まあ、いいんだけど……」
言われてみると、九州チームの騎馬には一年生が入っていなかった。
「人数少ないから、しょうがないんだけど、今年は特にね、カガちゃん、悪いヤツじゃないんだけど、ちょーっとアツくなりやすいからねえ……、まー、盛り上がるからいいんだけど」
百合子は、志信達がきざんだ野菜を鍋で煮込みながら言った。
煮込みが終わった鍋を会場まで慎重に運び終えると、各地区の打ち上げが始まった。
千錦寮、一刻寮ロビーのホワイトボードには、それぞれの地区の会場と開始時間が書かれ、コップさえ持ってくれば途中参加有りになっている。
しかし、開始直後は競技参加者ばかりで、まずは、参加者を労うような団長挨拶から、関東チームの打ち上げは始まった。
「えーっと……まずは……」
コップを手に、立ち上がった裕太が、おもむろに言った。
「本日のMBP!」
隣に座っていた武史の手をとり、立ち上がらせた。
「今日は、皆、すんげーがんばった、もちろん、競技で走ったり、玉入れしてくれた一年生の力抜きには語れないんだけど……、で、武史に乾杯の発声してもらってもいいかな?」
拍手が巻き起こり、誰も反対する者は居なかった。
武史は、少し恥ずかしそうに、
「えーっと、では、僭越ながら……」
と、言ってから、カンパイ! と、コップを上げた。
志信達はジュースや烏龍茶で、早希や百合子、他上級生はビールで、まずは乾杯して、打ち上げと称したコンパが始まった。
千錦寮各階の調理室と、一刻寮にも同様にある調理室が、それぞれ打ち上げという名の地区別コンパの準備に余念がない。
準優勝と三位は、食堂を反面ずつ使うので、実質二位と三位に差はほとんどない。出入り口側を使えるので、三位の方がかえって便利なのでは、と、すら、思われた。
一刻寮側では焼き物の仕込み、千錦寮側では、汁物、というか、大鍋で煮る鍋物を、調理まで終えておいて、カセットコンロで温めるだけにしておくという算段だった。
料理には、競技に出ていなかった千錦寮の上級生達も来てくれて、亜里沙と志信はひたすら野菜の革を向き続けた。
「へー、ハッチ、がんばったねえ」
監査委員の烏丸百合子は東京出身だが、東京といっても八王子の方で、通学にかかる時間は、実は志信と変わりないという。関東チームでも、数少ない都民だ。
昨年の運動会では副団長だったそうで、武史や早希が一年生だった頃の事を懐かしそうにしみじみと言った。
「ハッチ、二人三脚で転んでさ、一番最初のランナーだったもんだから、すっごく責任感じて、ずーーっとすみませんすみません、って言い続けてたんだよねー、アホらしいくらい真面目な子だったけど、そっかー、がんばったのかー」
「すごかったよね、こう、全チームに囲まれてさ、すぐに落とされちゃうかと思ったのに、必死で粘ってて」
「うん、あれはカッコよかった」
志信と亜里沙は、武史達のがんばりを一生懸命伝えた。
「中部はさ、影で真尋さんが仕切ってるじゃない? 勝ち負けより、全員で参加する事を目標にするようなところがあるから、団長副団長、ちょっと華奢っぽくなかった?」
「あー、言われてみれば……」
中部チームの騎馬の様子を思い出しながら志信は言った。
「運動部とか、運動部経験者とか関係無く選手を選ぶから、そういう事もあるんだよね、対して、九州とか、北海道東北はわりとガチ、北海道東北は、人数もそれなりにいるから、まあ、いいんだけど……」
言われてみると、九州チームの騎馬には一年生が入っていなかった。
「人数少ないから、しょうがないんだけど、今年は特にね、カガちゃん、悪いヤツじゃないんだけど、ちょーっとアツくなりやすいからねえ……、まー、盛り上がるからいいんだけど」
百合子は、志信達がきざんだ野菜を鍋で煮込みながら言った。
煮込みが終わった鍋を会場まで慎重に運び終えると、各地区の打ち上げが始まった。
千錦寮、一刻寮ロビーのホワイトボードには、それぞれの地区の会場と開始時間が書かれ、コップさえ持ってくれば途中参加有りになっている。
しかし、開始直後は競技参加者ばかりで、まずは、参加者を労うような団長挨拶から、関東チームの打ち上げは始まった。
「えーっと……まずは……」
コップを手に、立ち上がった裕太が、おもむろに言った。
「本日のMBP!」
隣に座っていた武史の手をとり、立ち上がらせた。
「今日は、皆、すんげーがんばった、もちろん、競技で走ったり、玉入れしてくれた一年生の力抜きには語れないんだけど……、で、武史に乾杯の発声してもらってもいいかな?」
拍手が巻き起こり、誰も反対する者は居なかった。
武史は、少し恥ずかしそうに、
「えーっと、では、僭越ながら……」
と、言ってから、カンパイ! と、コップを上げた。
志信達はジュースや烏龍茶で、早希や百合子、他上級生はビールで、まずは乾杯して、打ち上げと称したコンパが始まった。
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