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女のもつ三つの性質について(4)
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瀬尾が、茹でるのを交代しようか、と、声をかけに調理室へ行くと、茹でたてをその場で食べている茜が居た。
「何だ、流したやつ食べないの?」
どこからか持ってきた椅子に座っている茜に対して、シンクによりかかるように立ちながら、瀬尾が話しかける。
「納涼祭でやったしね、あと私蚊にくわれやすいし」
そう言って茜の見せた腕は白く、虫さされの跡などは見当たらなかった。
唐突に現れた白い腕はどこかなまめかしくも見えて、その白い肌に、もし虫さされの跡があったならば、濃い目のピンク色は別のものを連想しそうだ、と、瀬尾はどきりとした。
「どうせ食べたい分だけ食べて帰るんだろ? たまには後片付けくらい手伝えよ」
瀬尾が言うと、
「こっちも好きでやってるし、三楽はたして食べないから、別にいいよ」
と、真尋が言った。
「やっぱ鶴来君はやさしいなあ」
うれしそうにそうめんをすする茜に、瀬尾は、いーのかよ、それで、と、真尋に視線を送った。
「別に、無理してやってもらってもねえ……」
真尋は、ある意味容赦が無い。やりたい者がやりたい事をやればよい、という考えなのか、そのわりには、人のやることは率先してやる。何故かと問えば、自分がやりたいからと言う。
かと思えば、貧乏くじを引きまくるというわけでは無い。打算で、楽だから、とか、損をして得をとろうとするのでは無くて、やりたいこと、できることをやっているだけらしい。
ものすごい嗅覚を持って、地雷と危機を避ける様子は、超絶バランス感覚の持ち主なのかもしれない。
「茜、別にお前だから優しくしてるってわけじゃないからな」
念を押すように瀬尾が言うと、
「わかってるって、鶴来君は美醜で女を差別したりしないよ」
「……またそれかよ」
三楽茜は、瀬尾から見て、正直美人の部類に入る容姿では無い。本人もそこは自覚があるようで、事在るごとに「どうせブスですから」と口に出す事をはばからない。
だが、『ブスか』と、問われると、そこまでひどくはないだろうというのも、瀬尾の素直な感想だった。けれど、自分で言うほどブスじゃない、と、言った所で、茜には何のなぐさめにもならない事は瀬尾にもよくわかっていた。
茜は、どうしたら自分に対しての評価に容姿を絡めなくなるのだろう、と、いつも瀬尾は思う。
一緒に行動したり、話をしたり、瀬尾はおもしろい女だと思っている。共通の話題がある事もそうだし、頭の回転だって早い。
ただ、女という部分を、『性愛の対象になりえるか』という風に定義された時に、わずかではあるが迷いが生じる。
瀬尾は、一度茜に告白される事がある。酒の上での戯れだったのかもしれないし、周囲の者達が付き合ったり離れたりしているのを見て、年齢に応じてそういう相手を求めるようになったせいなのかもしれないが。
瀬尾は、どういう女性が好みか、と、言われると一瞬答えに窮する。その時に茜が言った。
シン・ゴジラの石原さとみと市川実日子だったどっちがいい?
そりゃ、石原さとみだろ。
茜の事を女だと思えない、と、答えた後にされた質問がそれだった。本当は余貴美子の方が好みなんだが、と、思いながら、若い成人男性として答えるべき方を答えたつもりだった。
その時の茜の顔を、瀬尾は今も覚えている。
やっぱりね、と、歪んだ口元、もしくは、ブルータス、お前もか、そんな顔立ちだった。
お前、自分の事、市川実日子になぞろうとしてるわけ? と、言いそうになったが、瀬尾はこらえた。石原さとみと市川実日子、どちらがより茜に近いかといえばまあ、後者になるんだろうな、と、瀬尾も思った。
しかし、まだ若く、彼女を作る事にそれなりに夢を持っていた瀬尾は、どうせだったら美人の彼女が欲しい、と、無邪気に考えていたのだ、当時は。
「何だ、流したやつ食べないの?」
どこからか持ってきた椅子に座っている茜に対して、シンクによりかかるように立ちながら、瀬尾が話しかける。
「納涼祭でやったしね、あと私蚊にくわれやすいし」
そう言って茜の見せた腕は白く、虫さされの跡などは見当たらなかった。
唐突に現れた白い腕はどこかなまめかしくも見えて、その白い肌に、もし虫さされの跡があったならば、濃い目のピンク色は別のものを連想しそうだ、と、瀬尾はどきりとした。
「どうせ食べたい分だけ食べて帰るんだろ? たまには後片付けくらい手伝えよ」
瀬尾が言うと、
「こっちも好きでやってるし、三楽はたして食べないから、別にいいよ」
と、真尋が言った。
「やっぱ鶴来君はやさしいなあ」
うれしそうにそうめんをすする茜に、瀬尾は、いーのかよ、それで、と、真尋に視線を送った。
「別に、無理してやってもらってもねえ……」
真尋は、ある意味容赦が無い。やりたい者がやりたい事をやればよい、という考えなのか、そのわりには、人のやることは率先してやる。何故かと問えば、自分がやりたいからと言う。
かと思えば、貧乏くじを引きまくるというわけでは無い。打算で、楽だから、とか、損をして得をとろうとするのでは無くて、やりたいこと、できることをやっているだけらしい。
ものすごい嗅覚を持って、地雷と危機を避ける様子は、超絶バランス感覚の持ち主なのかもしれない。
「茜、別にお前だから優しくしてるってわけじゃないからな」
念を押すように瀬尾が言うと、
「わかってるって、鶴来君は美醜で女を差別したりしないよ」
「……またそれかよ」
三楽茜は、瀬尾から見て、正直美人の部類に入る容姿では無い。本人もそこは自覚があるようで、事在るごとに「どうせブスですから」と口に出す事をはばからない。
だが、『ブスか』と、問われると、そこまでひどくはないだろうというのも、瀬尾の素直な感想だった。けれど、自分で言うほどブスじゃない、と、言った所で、茜には何のなぐさめにもならない事は瀬尾にもよくわかっていた。
茜は、どうしたら自分に対しての評価に容姿を絡めなくなるのだろう、と、いつも瀬尾は思う。
一緒に行動したり、話をしたり、瀬尾はおもしろい女だと思っている。共通の話題がある事もそうだし、頭の回転だって早い。
ただ、女という部分を、『性愛の対象になりえるか』という風に定義された時に、わずかではあるが迷いが生じる。
瀬尾は、一度茜に告白される事がある。酒の上での戯れだったのかもしれないし、周囲の者達が付き合ったり離れたりしているのを見て、年齢に応じてそういう相手を求めるようになったせいなのかもしれないが。
瀬尾は、どういう女性が好みか、と、言われると一瞬答えに窮する。その時に茜が言った。
シン・ゴジラの石原さとみと市川実日子だったどっちがいい?
そりゃ、石原さとみだろ。
茜の事を女だと思えない、と、答えた後にされた質問がそれだった。本当は余貴美子の方が好みなんだが、と、思いながら、若い成人男性として答えるべき方を答えたつもりだった。
その時の茜の顔を、瀬尾は今も覚えている。
やっぱりね、と、歪んだ口元、もしくは、ブルータス、お前もか、そんな顔立ちだった。
お前、自分の事、市川実日子になぞろうとしてるわけ? と、言いそうになったが、瀬尾はこらえた。石原さとみと市川実日子、どちらがより茜に近いかといえばまあ、後者になるんだろうな、と、瀬尾も思った。
しかし、まだ若く、彼女を作る事にそれなりに夢を持っていた瀬尾は、どうせだったら美人の彼女が欲しい、と、無邪気に考えていたのだ、当時は。
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