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運命の? 再会(4)
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「なあ、イタル、いいのかよ、あれ絶対中に人が入ってるだろ」
タイガの口を塞ぐようにしてイタルが手を伸ばし、むがむが言うタイガを引きずって、イタルとノブとタイガの三人は、駐輪場にたどり着いていた。
「んがっ、何すんだよ」
塞がれた手が解かれて、タイガが息を付きながら言うと、状況を把握できていないノブがまぜっかえした。
「えー、中の人? そんな感じした?」
「気づいてないのかよ……、普通、おしゃべりロボットが『斬撃の武人』なんてマイナーな漫画とかアニメとかをあんな風に語ったりするか? ドラゴンボールとかワンピースならとmかく」
タイガが言うと、あきらかにムッとした様子のノブが、
「『斬撃の武人』はマイナーじゃないぞ!? マイナーだったらアニメ化とかしないし! 今回だってプラネタリウムとコラボ企画だってやってるし!」
「それはノブがファンだからだろ? 漫画とかアニメとか、詳しくないやつから見たら充分マイナーだよっ!」
「えー、でもさ、したら逆に何をメジャーとして、何をマイナーにするとか、明確なガイドが必要にならね? バックボーンになってるのがネットだったら、それが有名かどうかなんてどうやって判別すんのさ!」
「う……」
タイガが、一瞬答えに詰まった。すかさずノブが追い打ちをかけていく。
「単に会話をするってだけで、これは有名、とか、有名じゃない、って判別をしてからしたりしなくね? キーワードを元にどんな話題にも対応するもんだろ、普通」
どうだ! というドヤ顔と共に、ノブが腕を組むと、タイガはぐうのねも出ずに、それ以上言葉が続けられなかった。
「じゃあ好き嫌いは? 単に話題をひっぱってくるだけだったら好みとか必要ないだろ」
「そこはほら、開発者の人の好み、とかかもしんないじゃん、イースターエッグ、だっけ? 作った人が隠しキャラ的に仕込んでた、とかさ」
ノブは、おしゃべりロボットと共通の話題で盛り上がった事が相当楽しかったようで、全力で中に人がいる説を否定したいようだった。
「もうだめだ、こいつ……なあ、イタルもなんとか言ってやってくれよ、ロボット、というか、無人であんな受け答えってありなのか?」
タイガがついにあきらめて、イタルに助け舟を求めて話題をふると、イタルも少し考えこんでから言った。
「……まあ、そういう事もできるんじゃないの? 一応最新技術を使ったデモみたいなもんなんだろうし」
イタルまで『中に人がいる説』を否定しはじめたので、タイガは思わぬ形勢逆転ぶりに目をむいた。
「ええええ、イタルまでそんな事言ってんの? なんでだよ、だいたいあれ、イタルが言い出したんだろ?」
つまらなさそうにタイガが言うと、
「まー、いいじゃないか、ノブは気が済んだみたいだし」
イタルも、自分の変節ぶりは自覚があるようで、ノブほどにはタイガに対して否定的では無い。
イタルとしては、おしゃべりロボットの中に人がいようといまいとどうでもよい気持ちになっていた。会話によって改善の見られた祖父。
中に人がいようといまいと、久しぶりに見た祖父の様子に、イタルは『会話』とは何だろうと考えていた。
同じ話を繰り返す祖父。相手をしなくなった家族。幼児たちに混ざって、ロボットとの会話を選んだ姿に、イタルは寂しさを感じながら、感謝もしていた。もうどうにもならないと思っていた祖父の、ゆるやかに終わりに向かって歩いているような背中に触れられたような手応えを感じたからだ。
「なんだよ、もう、二人がいいならいいけどさあ」
タイガは一通り言ってしまって気が済んだのか、自転車の鍵をはずしてサドルにまたがった。
「明日も来ようか、明日も無いんだろ? 練習」
イタルがタイガに言う。
「まーねっ、県大会予選初日で負けちゃったしね!」
「ノブは、明日こそ朝一に並びたいんじゃ無いの?」
「そうだ! そうだよ! あー、よく言ってくれた、二人は? もちろん一緒に並んでくれるよな?」
ノブが自転車に乗って走りだすと、残された二人は口々にどーしよっかなー、などと言いながら走りだした
タイガの口を塞ぐようにしてイタルが手を伸ばし、むがむが言うタイガを引きずって、イタルとノブとタイガの三人は、駐輪場にたどり着いていた。
「んがっ、何すんだよ」
塞がれた手が解かれて、タイガが息を付きながら言うと、状況を把握できていないノブがまぜっかえした。
「えー、中の人? そんな感じした?」
「気づいてないのかよ……、普通、おしゃべりロボットが『斬撃の武人』なんてマイナーな漫画とかアニメとかをあんな風に語ったりするか? ドラゴンボールとかワンピースならとmかく」
タイガが言うと、あきらかにムッとした様子のノブが、
「『斬撃の武人』はマイナーじゃないぞ!? マイナーだったらアニメ化とかしないし! 今回だってプラネタリウムとコラボ企画だってやってるし!」
「それはノブがファンだからだろ? 漫画とかアニメとか、詳しくないやつから見たら充分マイナーだよっ!」
「えー、でもさ、したら逆に何をメジャーとして、何をマイナーにするとか、明確なガイドが必要にならね? バックボーンになってるのがネットだったら、それが有名かどうかなんてどうやって判別すんのさ!」
「う……」
タイガが、一瞬答えに詰まった。すかさずノブが追い打ちをかけていく。
「単に会話をするってだけで、これは有名、とか、有名じゃない、って判別をしてからしたりしなくね? キーワードを元にどんな話題にも対応するもんだろ、普通」
どうだ! というドヤ顔と共に、ノブが腕を組むと、タイガはぐうのねも出ずに、それ以上言葉が続けられなかった。
「じゃあ好き嫌いは? 単に話題をひっぱってくるだけだったら好みとか必要ないだろ」
「そこはほら、開発者の人の好み、とかかもしんないじゃん、イースターエッグ、だっけ? 作った人が隠しキャラ的に仕込んでた、とかさ」
ノブは、おしゃべりロボットと共通の話題で盛り上がった事が相当楽しかったようで、全力で中に人がいる説を否定したいようだった。
「もうだめだ、こいつ……なあ、イタルもなんとか言ってやってくれよ、ロボット、というか、無人であんな受け答えってありなのか?」
タイガがついにあきらめて、イタルに助け舟を求めて話題をふると、イタルも少し考えこんでから言った。
「……まあ、そういう事もできるんじゃないの? 一応最新技術を使ったデモみたいなもんなんだろうし」
イタルまで『中に人がいる説』を否定しはじめたので、タイガは思わぬ形勢逆転ぶりに目をむいた。
「ええええ、イタルまでそんな事言ってんの? なんでだよ、だいたいあれ、イタルが言い出したんだろ?」
つまらなさそうにタイガが言うと、
「まー、いいじゃないか、ノブは気が済んだみたいだし」
イタルも、自分の変節ぶりは自覚があるようで、ノブほどにはタイガに対して否定的では無い。
イタルとしては、おしゃべりロボットの中に人がいようといまいとどうでもよい気持ちになっていた。会話によって改善の見られた祖父。
中に人がいようといまいと、久しぶりに見た祖父の様子に、イタルは『会話』とは何だろうと考えていた。
同じ話を繰り返す祖父。相手をしなくなった家族。幼児たちに混ざって、ロボットとの会話を選んだ姿に、イタルは寂しさを感じながら、感謝もしていた。もうどうにもならないと思っていた祖父の、ゆるやかに終わりに向かって歩いているような背中に触れられたような手応えを感じたからだ。
「なんだよ、もう、二人がいいならいいけどさあ」
タイガは一通り言ってしまって気が済んだのか、自転車の鍵をはずしてサドルにまたがった。
「明日も来ようか、明日も無いんだろ? 練習」
イタルがタイガに言う。
「まーねっ、県大会予選初日で負けちゃったしね!」
「ノブは、明日こそ朝一に並びたいんじゃ無いの?」
「そうだ! そうだよ! あー、よく言ってくれた、二人は? もちろん一緒に並んでくれるよな?」
ノブが自転車に乗って走りだすと、残された二人は口々にどーしよっかなー、などと言いながら走りだした
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