41 / 53
5章 放浪の弟子と誰もいない世界
5-2
しおりを挟む背後で違和感を感じた。
後ろを振り返ると人が出てきた。
「あ、よかった! 人がいる!
私、人がいなくなって不安になって誰かいないか探してたの。」
浅黒い肌の鷲鼻の女がいた。矢継ぎ早に話しかけてくる。
ぼさぼさの黒髪を適当にまとめていて、
品があるように見せようとしている声の出し方の奥に獰猛な何かを感じた。
獲物を物色してるような目つき。
違和感がある女。
この倒れている女性について話を触れもしない。
「この女性が倒れてたんです、救急車よべますか?」
「あー。可哀そうに。私もさっきスマホを見たのよね。
でも呼べないの。ネットも電話も繋がらなくて…」
演技がかった声色でそういう。
正直あまり見た目のいい女ではないが、話し方がやたらと気取っている。
上品もしくは育ちをよく見せたいみたいだけど格好はまるで図書館に来るような人種には見えない。
汚いTシャツにホットパンツ趣味の悪いタトゥーがあちこちから見えている。
こいつ警戒したほうがいいよね。
「あたしはこの人を背負って外で誰か助けを求めに行きますね。」
「あ、そうなのね。いい判断だと思うわ。わたしはここでちょっと用があるから手伝えないけどごめんなさいね。」
「うん、じゃあ行きます。」
女性を担いですぐに図書館入り口ほうこうへ歩き出す。
出入口近くに行くまでに話は終わったのに。
やることがあるからといったのに…
こそこそと後ろからついて来ている。
出入り口付近で後ろのマナが騒ぐように動いた。
振り向くとまるで三下のデーモンに取りつかれた人間のように醜悪な表情を浮かべた
あの女がハンマーを振りかぶって飛びかかってきた。
ハンマーを避けながらカウンターで右ストレートを女の耳の下のあたりに叩きこむ。
女が地面にもんどりうって倒れる。
足で女の悪魔のようなタトゥーが彫られている膝小僧を踏み砕く。
もう歩くのは難しいだろうと思えるようなダメージが入ったのが伝わる。
女はガァッ! タンを吐く前にだすような汚い音をだしてあと即座に
獣のようになりふり構わない感じで掴みかかろうとしてきた。
顎を蹴り上げ、仰向けに倒れた女の右手を掴みひねり上げながら肩を脱臼させる。
そのまま再度手首の骨を折るつもりで引っ張りあげて
図書館受付カウンターのほうへと殺人鬼(仮)を投げる。
今度は頭部を右手で掴んでこのバカの顔面を4、5度と、鼻と歯が折れるようにカウンターの角に叩きつける。
女は白目で泡を吹いて
血まみれの顔面でわかりにくかったが気を失ったようだ。
そのまま髪の毛を掴んで図書館外へ引きずっていく。
図書館の外は黄金色で包まれている。
近くには水上公園がある閑静な住宅街だ。
見渡すが人も車もない。
恐ろしく静かだ。
ハチとエリザベスが見当たらない。
ここの近くにいたはずなのに…
はぐれた?
それともまた世界を移動しちゃった?
2匹とはぐれたのがわかって不安感が少し増す。
一度図書館に戻り安全そうな2階の小部屋にテントを作成する。
そこになんとか応急処置を施した女の人を寝かせる。
あの犯人の女をまた掴んで部屋から出て図書館の外に出る。
なにか手当てしないと。
いや、この犯人の女じゃなくてね。
えーとガーゼとか、消毒液とか炒め止めとかでいいのかな。
そうだ。
どこか近くの病院…
ちょうど近くに町医者のクリニックがあるはずだとおもう。
行ったことないところだけど。
行ってみよう。
図書館から出て歩き出したときに
「ちょっと待って! ねぇ! ちょっと待って! どこへ行くの!?」
女が目を覚ました。
「うるさい、黙って。」
女は全力で抵抗して、体重をかけて私を引き倒そうとする、まるで見っともない綱引きみたいに。
だがびくともしない、あたしの身体能力は常人の比じゃない。
あたしの力のほうがはるかに強いとわかるや否や
「誰かぁー!!!!助けてー!!!!!!!誰か!!!!助けて!!!!ギャァァー!!!!!!」
大声を上げ始める。
女の首を締めあげて黙らせると、まだ動かせるほうの左手でタップしながら降参したと見せかけて
すぐに左手をあたしの顔に伸ばして私の目をつぶそうとしてきた。
左手を受け止めて握りつぶす。
そのまま指をすべて折る。
ギャァヤヤー!!!! と絶叫を出していたがる。
心が冷めていく…
殺人鬼の喉をつぶしてまた頭を掴んで歩きだす…
と道の向こう側から人が出てきた。
人と遭遇するとは思ってなかったのでびっくりする…
ステッキを持った背の高いコートの老紳士。
老人は知的な雰囲気と落ち着いた雰囲気があった。
そのままこちらに歩いてきて、図書館はこっちかな?
と聞かれる。
はい、と答える。
逆光で顔が見えない…
眩しい…
老人はありがとうと言ってお礼にこれを…
ポケットから何か取り出してあたしの手に置いた。
人間の耳。
ギョッとして老人を見ると相変わらず顔が見えないが、優しい雰囲気で
よく見てごらんとでもいうようにあたしの手のひらに視線を落としたのがわかった。
そこには黒にほんのすこしだけ赤が混じったような色の小石ほどの大きさのダイスがあった。
再度びっくりしてお爺さんを見ると目の前から老人は消えていた…
左手に嫌な存在を感じてみるとさっきの女が足をガサガサ動かしていた。
髪の毛を離して、地面に放っておく。
どうせ動けないでしょ。
こいつは野放しにしてちゃいけない奴だけど
人なんかできれば殺したくないんだよ。
それより今あった出来事はなんなの。
あのお爺さんは一体。
夢じゃないよね。
手の中には8面体のダイスがちゃんとあった・・・
不思議な素材でできてる。
重さや感触がすごく落ち着く、初めて触ったのに何故かしっくりくる。
何か趣味の道具をもっといいものに変えたときに…
何か手に取ったときにそんなこと感じたことあったっけ。
なんだっけ。
何かの道具じゃなくてキーホルダーだったかも。
その後30分ほど歩き回ったが全く人気がない。
クリニックと薬局を見つけて応急手当てに使えそうなものを持って
図書館に帰る。
自分が掴んでいるこの女、そろそろ本当に邪魔になってきた。
どうしようかな。
もう気がおかしくなりそうだ…
近くの民家に勝手に入る。
やっぱり誰もいない。
家の中にあるケーブルや業務用テープをガレージで見つけて殺人鬼と思われる女を
電柱に括り付けていく。
耳を叩いてか鼓膜を破裂させておく。
もう日が沈み始めている。
図書館に入ってトイレにいく。
「今度は世界から人がいなくなっちゃった、ハチもエリザベスもいない。これからどうしよう…」
久しぶりに一人で泣いた。
意外なことに世界がおかしくなってから初めて泣いてる自分に気が付いた。
泣きながら壁に頭の側面をつけてぼーっとする。
もう何も考えたくない、何も気にせずに眠りたい。
眠気がゆっくりと襲ってきてそのままトイレの床に崩れ落ちながら眠りにつく。
ダイスがトイレの床で寝ている人間のポケットから落ちた。
そのまま転がり、ダイスは1の目を天井に向けて止まった。
すごく深く眠れた時の脳の感覚を目が覚めて最初に感じた。
最初に「良かった」とおもって次には
「ぐっすり眠れて嬉しい、気持ちいいと思った。」
トイレの床で自分が落ちたことを思い出して顔を上げるとそこは見覚えのない場所だった。
「暗い…どこ? 洞窟?
0
あなたにおすすめの小説
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ
双葉 鳴
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。
彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。
そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。
洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。
さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。
持ち前のサバイバル能力で見敵必殺!
赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。
そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。
人々との出会い。
そして貴族や平民との格差社会。
ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。
牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。
うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい!
そんな人のための物語。
5/6_18:00完結!
農民レベル99 天候と大地を操り世界最強
九頭七尾
ファンタジー
【農民】という天職を授かり、憧れていた戦士の夢を断念した少年ルイス。
仕方なく故郷の村で農業に従事し、十二年が経ったある日のこと、新しく就任したばかりの代官が訊ねてきて――
「何だあの巨大な大根は? 一体どうやって収穫するのだ?」
「片手で抜けますけど? こんな感じで」
「200キロはありそうな大根を片手で……?」
「小麦の方も収穫しますね。えい」
「一帯の小麦が一瞬で刈り取られた!? 何をしたのだ!?」
「手刀で真空波を起こしただけですけど?」
その代官の勧めで、ルイスは冒険者になることに。
日々の農作業(?)を通し、最強の戦士に成長していた彼は、最年長ルーキーとして次々と規格外の戦果を挙げていくのだった。
「これは投擲用大根だ」
「「「投擲用大根???」」」
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!
HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。
跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。
「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」
最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
アガルタ・クライシス ―接点―
来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。
九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。
同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。
不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。
古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。
マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜
美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊
ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め…
※カクヨム様にも投稿しています
※イラストはAIイラストを使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる