double psycho collide  #ダブルサイココライド

KJ KEELEY

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7章 傀儡師と明けない夜の街

7-5

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死体から盗ったキーを持って
黒ずくめの出で立ちの傀儡達と車に乗り込みエンジンをかける。

薄汚れた淡い緑色の乗用車が発進する。
何となく商業区画の外れから山道に進んでいく。
この狂った町から遠ざかっているのにも関わらず
逆に恐怖を感じさせるような雰囲気が夜の山道にはあった。
15分ほど走っている間に数台の車をみた。

……15分で5台。多いのか少ないのか…
このすれ違う車に乗っている人間達も化け物なのだろうか。

後ろが気になってバックミラーを何度か見る。
少し前から後ろに車がついてきていた。

ライトが片方壊れている、個人タクシーのようだった。
車のルーフにあるランプが点灯していない。
その代わりのように、
下手なDIYでとり付けたような電飾が光っていた。

最初速度を出しながら一気に後方から近づいてきた所でこの車を意識した。
山道から平坦な道に出て2車線になったところでで追い抜いていくのかと思ったが
何故か追い越さず、そのまま俺の後ろにつけている。
追い抜かないくせに車間距離が近いのも不快だった。

急いでたんじゃなかったのか?

何か嫌なものを感じる。
左車線から右側車線に移るが俺たちを追い抜かない。
誰もいない道で深夜70キロで走行してるんだが。
このルールも何もないような世界で。いつまでもこいつに後ろに居て欲しくない。
先に行かせようと60キロ以下に落とすと
そのタクシーもスピードを落とし始める。

何故か追い抜きたくないらしい…
余りにも不自然だった。苛立ちながらも注意を向けていると
しばらくして脇道に入っていってその車はいなくなった。
考えすぎか… 変な奴は何処にでもいる。

そのまま一本道を数分走った。段々と街灯が多くなってきたと思ったら
店が集まっているちょっとした区画に出た。
駐車場の周りを囲むようにして様々な店がある。
スーパーのように大きい大手の酒屋。
あと本当のスーパーマーケットに
ピザ屋、イタリアンレストランに雑貨屋とベーカリー、ポストオフィス等々。
どれも閉まっているようだが。
 
イタリアンレストランの
テラス席に明かりだけがついていて、
その店だけがこの区画でまだ店を開けてる様子だった。
看板は落書きされていて、読めなかった。

車をそのレストランの近くの中洲の駐車場所に停める。
ふと車もまばらなパーキングベイを見回すと
こちらから少し離れた駐車場所に、
見覚えのある個人タクシーがあった…

首の毛が逆立つ。
この感情は恐怖だったかもしれない。
苛立ちもだ。
気のせいだろうと傀儡達とレストランに向かう。
 
ふと横にいたベルシモックを見る。
うつろな目でタクシーを見ていた…

……勇気を見せろ、か。

踵を返して、どうやってか先回りしてここに停車しているセダンへと向かう。
車内には誰も居ない。
周囲にも人は居ない。

汚い20年落ちくらいのセダンだ。
車のフロントバンパーに何故かガムテープが少しだけ貼られている。
ナンバープレートはだいぶ錆び付いていた。
後方に回ってリアガラスを見ると違う車メーカーのステッカーが貼られている。

……バカなのか? それとも何かのジョークか?

「おい」
ふいに人間の声がした。
振り向くとくたびれた服に暗い肌の色の40歳くらいの男が立っていた。
汚い作業服を着ている。タクシーの運転手をやる格好ではなさそうだが…
目の焦点が微妙にあっていない。

「なんですか?」
男は答えずにキーを出して運転主席に乗り込もうとする。
「ちょっと待ってもらえますか?」
無視してドアを閉めようとする。
が、ドアが動かないことに気づく。

緑の服の大男がドアを掴んで閉めさせないようにしていた。
男は運転主席に座ったままうつむいて動かなくなった。
「俺の車をつけてきてませんでしたか?」
「そんなことしていない…」
「今車の外で何してたんですか?」

「何もしてない」
「何もしてないなら何で降りた?」
「レストランにいってトイレを借りてた。」
「ここまでほとんど一本道だ、猛スピードでショートカットしてもそんな時間差が出来るわけない」
「猛スピードでショートカットしたら出来たんだ。」

「なぜ急いでた?」
「漏れそうだったからだ。」
「じゃあその前はなぜ急がなかったんだ? 俺に合わせてスピードを落として来ただろうが。」
「その時は漏れそうじゃなかったんだよ。」

「ふーん、アンタここが地元? それともあの街? あの映画館とかあるとこ。」
「どこでもいいだろうよ。……もういいか?」
「もう一つ、お前人間か?」
「ニンゲンじゃなかったら一体何なんだよ、人間に決まってるだろ。いい加減にしてくれよ。」
「人を殺すときはどうやって殺す?」
「どんな質問だよ。勘弁してくれ。正当防衛でしか人間を襲ったりしないよ。」

「そうか、これからどこ行くの?」
「もういいか? そろそろ限界なんだ。」
「……ああ、じゃあいいよ。」

ベルシモックがドアを離すと男が車をゆっくりと発進させる。
この区画から大通りに出ていったのをしっかりと見送ってからレストランに入っていく。
店の入り口前にテラスがあってテーブルが4つほど、数人の客が飲み食いしていた。
中にもいくらか客がいた。
ガラス戸を開けると

「あー、悪いね。あと1時間で閉めるからそれまでなら飲み食いしてもいいけど。ただもうキッチンも閉め始めているから料理は大したものは出せない…」
「それは問題ないです、4人入っても大丈夫ですか? サンドイッチとかは?」
「ああ、サンドイッチとかでいいなら歓迎だ。」
それで構わないと伝えて礼を言う。
イタリア人ぽい年配の男と妙齢のジンジャーのウエイトレスがまぁかまわないよ、
と言ってくれたが。
2人ともひどく無表情だ、生気がない。

男はキッチンのほうへ行って、ジンジャーのウエイトレスが
ナプキンとフォークとナイフなどを用意してくれた。
「すいません、さっきトイレを借りに
暗い肌の身長170センチくらいの男がここにきませんでした? 作業服の…」
「さあ、知りません。」
「覚えてないですか?」
「そうね。覚えてません。」

近くにいた客に話かけてみる。
「すいません、5分以内にここにトイレだけ借りに入ってきた男はいましたか?」
店内に4人ほどいた客のうち一人の背の小さな陽気そうな髭のおじさんが答える。

「そんな奴きてたかー? ハハハ、ほれ誰も覚えてねー。」
がっはっはと笑いながらも目が笑っていない。
おじさんの連れは無表情でだれも答えない。

あの街の人間もだがこの山を越えた街の人間も暗く無表情な人間が多い。
いや、どちらかと言えばこっちの人たちのほうが無表情か…
まるで…

シャドウとベルシモックだけ席に座らせて窓際に近づいて外を見る。
外のテラス席に目をやるとレストランからみえる駐車場所に
さっきこの区画から出ていったはずの

あのタクシーが停まっていた…

毛が逆立ち苛立ちが限界を越えそうになった。
―あの野郎、性懲りもなく…

何となくベルシモックを見る。
一応つけてある頭部は真っ直ぐにそのタクシーを見ていた。
勇気という言葉を意識すると少しだけ冷静になった。

ちょっと肌寒いな、季節はもう冬か。
外に出て車のほうを見に行くとドライバーは居ない。
店に戻る。もうすぐサンドイッチが運ばれてくるだろう、その前に
一息ついてトイレに行きたくなった。

「お手洗いを使いたいんですが。」
「トイレだったら店の奥のほうにいって右にあるよ。」
オーナーらしき男に教えてもらい、トイレにいく。
トイレの扉を開くとあのタクシーの男が立っていた。
こちらを真っすぐに見据えて。

ニャァーオ

瞬間、近くで猫の鳴き声がした。
びっくりして横を見る。
何もいないが恐らく窓の外に野良猫がいたのだろう。

ふいに右頬が何かを察知したような感覚。
瞬時に後ずさりすると男が後ろ手に持っていた
ショットガンをこちらに構えたのが見えた。
横の廊下にすぐに飛びのくと同時に銃声が聞こえた。
廊下の壁に散弾が撃ち込まれた。

こちらを追いかけるように出てきた男の
右手を最初から持っていた斧で切り落とす。
そのまま半身で踏み込んで掌底を男の胸に撃ち込む。
触れた瞬間に霊気を掌から炸裂させた。
男が口から血を吹き出しながら
2mほど吹っ飛んでトイレに倒れこむ。

こいつ… いつの間にここに。
よく見れば裏口の戸が開いていた。
そこから入って来たのか。

男はゆらゆらと周りのものを掴みながらではあるが何とか立ち上がると
白目をむきながら襲い掛かってきた。
呼び寄せていたシャドウが散弾を男にお見舞いする。
作業服の男はどさりと崩れ落ちた。


「びっくりさせやがって、この嘘つき野郎。」
「…そんなに強いとは。連れだけか、と思って、いたよ。」
「ああ、俺も戦えるんだ。お前、結構生命力あるんだな。」
「そうか、逃がしてくれ、ると助かるな。病、気の娘がいるん、だよ。あと母、親もだ。」
「ちょっと無理かな。」
「殺そうと、までは思ってなかっ、たの、に。」
「最後まで嘘つきなのか?」
「嘘なん、てついたこ、とな、い。ただ恐怖させ、て殺、すのすき、なん、だ。だから、助、けて。」
「そうか。」

シャドウがもう一発散弾を放って終わらせる。
廊下をでるとウエイトレスが恨めしそうにこちらを見ていた。
「せっかく常連だったから手伝ってあげたのに失敗して殺されて。
その上死体の掃除まで私がするの?。」
「あなたは殺しはしないの?」
「私が? とんでもない! 私は殺されたくないもの。
もっと強いものにやられるのが落ちでしょ?」
「まぁ、確率は上がるかもしれないですね。」
「まぁ、恐ろしい。バカな男は恐ろしいですよ。あなたが常連になってくれたらいいのに。」
「それはどうでしょうね。それよりここらへんの地図とかありますか?」

「地図? えーとポストオフィスにあるとおもいますよ。」


そのまま店を出ようとすると
「あんちゃん、助かったのか? あのタクシーの奴にやられたんじゃないかと思って心配したぞ?」
「まぁ、何とかなりました。」
「そうか、それならよかった。」

あの陽気そうなオッサンが話しかけてきた。適当に流して店を出る。
店の向かいにあるポストオフィスにいってここらの地図を手に入れる。
タクシーの男から奪ったスマホを使うとネットにつながった。
おお!

だめだ…
簡単な検索は出来るものの重すぎて殆ど機能しない。
マップも試すが使えない。
まぁ、こんな世界で検索できるだけでも期待以上の収穫だが。

ポストオフィスで自身に隠形をかけ気配と姿を消す。

車に傀儡達を乗せて出発させる。すると
あのレストランから客が出てきてあのタクシーに乗り込んだ。
そのまま俺の車の後をつけるように出ていく。

この区画周辺をドライブさせる。俺は傀儡操作の射程およそ150~200m
以内に車が収まるように動き、車をまたここに戻って来させる。
戻って来させようとすると…
その前にはあのタクシーがついていて駐車場から車に乗り込んだ男ではない男。
先ほどと違う男がレストラン近くに駐車した。

あのタクシー妙な見た目をしてると思ったが、似たような車が何台かあるのか?
あのふざけたステッカーまで一緒だ、あの電飾も、ガムテープも。
ただナンバープレートが少しさびてはいるが違う。
 
車から降りてきた男にそのまま近づいていく。
顔面に霊気を込めたパンチをお見舞いする。
鈍い破裂音と共に客の一人の頭が駐車場で爆ぜる。

そのまま店内に入り、姿を見せてあの陽気そうなおっさんの目の前に立つ。
「お前が犯人かな、俺と似たような傀儡操作のような力か? 何か近いことが出来るようだな。」
「傀儡? 何を言ってるんだ? ガッハッハ。バカなことを、い」

何も答える暇を与えずにおっさんの頭部を
戻ってきたシャドウの散弾で吹き飛ばす。
糸が切れたマリオネットのように音を立てて客や店員が倒れていく。

オッサンの死体から何か輝く結晶、プラズマのようなものが出てきた。
それに触れるとプラズマがアンクの形に変化して俺の中に入ってきた。
ANKH……
何か大事なものだったような……
ベルシモックを見る。
所有物? 
をもらう? 
与える?

あ、そうだ。俺記憶がないんだ。
ANKH、俺の何か大事なもの…
俺にとって大事なものってなんだ?

VISION DREAM
分からない…

ANKH…

ANKHね。なんだっけ。ANKHの意味は。エジプトの…

生きること。再び生きること、とかだっけ。

外の雰囲気が変わった。

長い夜が明けた…

街に朝日がやってきた。
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