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私達が綾の家から離れて、これからどうしようかと話していると、綾がアパートから出てきた。
そして、こちらに気付いているのかいないのか、私達をチラリとも見ずに、目の前を小走りで通り抜け、坂の上に駆けて行った。
私達は誰が追いかけるかで数分揉めた。
諒太の、男が行くと誤解が生まれそうだし~との一言で、私が行くことに。
なんなら貴也でも良かったが、今日これまでの綾とのやり取りで、貴也の心の方が折れかけていた。
しっかりしろ!元凶!
佳成に関しては、私が着いてからほとんど口を閉じたままだ。
でも私は佳成が絶対に行かないことを知っている。
何故なら、綾に淡い恋心を抱いていた佳成は、それを敏感に感じ取っていた綾の相談相手に選ばれ、良いように扱われて傷付いたからだ。
貴也と別れた時、私には立ち直ったように見せかけていた綾は、サークルの男性達に相談して回っていたのだが、最初の相談相手に佳成を選んだ。
このまま支えていけば、綾は自分と付き合うことになるのではないかと、佳成は期待していた。
しかし、綾が同時進行で他の男性達にも同じ相談をしていることに気付き、そっと綾から離れた。
その後思い悩んだ佳成は、一度だけ私のところに綾のことを聞きにきた。
そのとき既に親切な人達から責められた後だった私は、綾の大体の行いを把握していた。
綾のメンタルが普通じゃなかったときに、綾が『佳成とかどうかな』と口走ったことを伝えた。これが全てだと。
綾は佳成が自分のことを好きだと知っている。知った上で、相談を持ちかけて思わせ振りな態度をとり、さらには自分に好意がありそうな男性を選んでは同じことをしている。
多分綾は、傷つき、穴だらけになったプライドを、モテる自分を演出し、優しくしてくれる人に甘やかしてもらうことで埋めたいのではないかと話した。
もちろん憶測だし、私が穿った見方をしているのかもしれないよと言い添えて。
黙って聞いていた佳成は、「そんなんだろうと思ってた」と言って、傷ついた顔をして帰っていった。
綾とは距離を置いたままだった。
それからしばらくして、綾と貴也がよりを戻すと、安心したようにまた友人のポジションに戻っていった。
だから、佳成は絶対に行かない。
そして、今いるメンバーでは私が行くしかないのだ。
私は目の前の自販機で、綾の好きなアップルティーと、自分用にホットのミルクティーを買った。
ずっと平静を装っているが、実はさっきから手の震えが止まらない。自分のじゃない、別の熱源が欲しかった。
私だって怖い。
私の言葉一つで、一人の命が左右されるかもしれない。
私は覚悟を決めて、綾が走り去った坂道を上りはじめた。
そして、こちらに気付いているのかいないのか、私達をチラリとも見ずに、目の前を小走りで通り抜け、坂の上に駆けて行った。
私達は誰が追いかけるかで数分揉めた。
諒太の、男が行くと誤解が生まれそうだし~との一言で、私が行くことに。
なんなら貴也でも良かったが、今日これまでの綾とのやり取りで、貴也の心の方が折れかけていた。
しっかりしろ!元凶!
佳成に関しては、私が着いてからほとんど口を閉じたままだ。
でも私は佳成が絶対に行かないことを知っている。
何故なら、綾に淡い恋心を抱いていた佳成は、それを敏感に感じ取っていた綾の相談相手に選ばれ、良いように扱われて傷付いたからだ。
貴也と別れた時、私には立ち直ったように見せかけていた綾は、サークルの男性達に相談して回っていたのだが、最初の相談相手に佳成を選んだ。
このまま支えていけば、綾は自分と付き合うことになるのではないかと、佳成は期待していた。
しかし、綾が同時進行で他の男性達にも同じ相談をしていることに気付き、そっと綾から離れた。
その後思い悩んだ佳成は、一度だけ私のところに綾のことを聞きにきた。
そのとき既に親切な人達から責められた後だった私は、綾の大体の行いを把握していた。
綾のメンタルが普通じゃなかったときに、綾が『佳成とかどうかな』と口走ったことを伝えた。これが全てだと。
綾は佳成が自分のことを好きだと知っている。知った上で、相談を持ちかけて思わせ振りな態度をとり、さらには自分に好意がありそうな男性を選んでは同じことをしている。
多分綾は、傷つき、穴だらけになったプライドを、モテる自分を演出し、優しくしてくれる人に甘やかしてもらうことで埋めたいのではないかと話した。
もちろん憶測だし、私が穿った見方をしているのかもしれないよと言い添えて。
黙って聞いていた佳成は、「そんなんだろうと思ってた」と言って、傷ついた顔をして帰っていった。
綾とは距離を置いたままだった。
それからしばらくして、綾と貴也がよりを戻すと、安心したようにまた友人のポジションに戻っていった。
だから、佳成は絶対に行かない。
そして、今いるメンバーでは私が行くしかないのだ。
私は目の前の自販機で、綾の好きなアップルティーと、自分用にホットのミルクティーを買った。
ずっと平静を装っているが、実はさっきから手の震えが止まらない。自分のじゃない、別の熱源が欲しかった。
私だって怖い。
私の言葉一つで、一人の命が左右されるかもしれない。
私は覚悟を決めて、綾が走り去った坂道を上りはじめた。
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