異世界宿屋の住み込み従業員

熊ごろう

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115話 「悪魔の晩餐」

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「デーモンて何食べるのかな、やっぱお肉? あ、でも魚介類しかないや……」

とりあえず買い物を終えアイネの私室へと戻った二人。
加賀はデーモンにあげるとしたら何が良いのだろうかと買った荷物をあさるがあるのは魚介類ばかり、申し訳程度に乾燥したマカロニがあるぐらいだ。しまったなーと思う加賀であるが加護があるのだし、恐らく大丈夫だろうと思いなおしとりあえず調理を始める事にする。

「何作るの?」

「んー……マカロニあったし、グラタンかな。オーブン借りれるし丁度よかった」

「お魚でグラタン?」

少し考えて、軽く首を横に振る加賀。
ちょっと興味はあるんだけどね、と一言おいて言葉を続ける。

「今日はエビでいくよー」

「そう、エビおいしかったしグラタンにも合うと思う」

「エビグラタンは実際おいしいよー。お魚はスープと……ソテーかな」

このほかにもサラダやパン、デザートも付いて本日の夕食はかなり豪勢な内容となる。
調理も終盤となり、温めたスープを味見し満足げに頷くとアイネへと声をかける。

「あ、もう出来たんだ。……それじゃ姿を見せなさい」

言われて姿を現したのは例のアイネに何度も魔法陣から出し入れされていたデーモンだ、如何にもデーモンですといった容貌をしているがやはりその姿はどこか哀愁が漂っている。

「おおう……間近で改めて見るとなかなかに迫力が……えっと、デーモンさん護衛してくれてありがとう。お礼にご飯用意したんで食べてみてくださいな」

「……ああ」

抑揚を感じさせないどこか冷たい印象をいけるそんな声だった。
それが例の出来事のせいなのか元からなのかは分からないが、ともかくデーモンは加賀の言葉に答え椅子へと腰掛ける。

(なんかシュールな光景だなー……)

恐ろしい外見をしたデーモンが項垂れるように椅子に座っている。ひどく違和感のある光景だが加賀はなるべく気にした様子を見せずに料理を配膳していく。

「どうぞー、お口に合うかは分からないけどとりあえず食べると思うよー」

「私達も頂きましょう」

加賀とアイネも席に着き食事を開始する。
まずスープを一口、そして満足そうに頷く加賀。味見したときもそうだったがかなり良い出来のようらしい。
アイネはエビグラタンを口にし、そのまま他の物に手を付けずひたすらにグラタンを口に運ぶ。すぐに空になってしまったグラタン皿を悲しそうに見つめ、そしてまだ手を付けてないデーモンのグラタンをちらりと見る。

「アイネさん、お替り用意しますよ。グラタン気に入りました?」

「お願いするね。うん、この前の芋で作ったのもおいしかったけど私はこっちのが好き」

デーモンのグラタンが強奪される前に対処する加賀。
そして肝心のデーモンはと言うとソテーを口にしたところで動きが固まってしまっていた。

「ありゃ口に合わなかったかな……」

「……そんな事はありません。マスター」

「マ、マスター?」

突然マスターと呼ばれ驚く加賀をよそに動きを再開したデーモンは残りの料理にも手を付けていく。
その様子を見てとりあえず口にはあったみたいだとほっと胸をなでおろす加賀。
アイネにお替りのグラタンを渡し自分も食事を再開する。

「あっこのエビおいしいね。あんま見たことない種類だったけど味がむっちゃ濃厚」

「おいしい種類のエビだったのかしら……そういえば店員がめったに入らないとか言ってたね」

「買い占めて正解だったねー」

エビは加賀が普段よく食べていた甘エビや車エビ、ブラックタイガーとも違う種類であった。
大きさ等はは甘えびと同じぐらいだが、ちょっととげとげしい見た目をしていた。
なんの種類かは分からないがとりあえず貴重品ということでつい買いすぎてしまったのである。

「スープも魚の味がすごい出てておいしい……」

「臭みもないしうまくいって良かったよー」

落ち着いたアイネはほかの料理にも手を出し始める。
魚がたっぷり入った加賀特製のスープはアイネも気に入ったようだ。

「……あの」

「ほいほい?」

そしてデーモンも気に入った内の一人のようだ。空になった皿を申し訳なさそうに加賀へと見せる。
それを見てお替りほしいんだなーとすぐ理解した加賀はすぐに用意してあげるのであった。

「おなか一杯……デーモンさんたくさん食べるねー。余ってもあれだし、まだ入るなら無理しない程度にお替りしてね」

そう言って膨らんだお腹をさすりデザートの用意を始める加賀とアイネ。
お腹いっぱいと言っていたにも関わらず、デザートはやはり別腹と言うことだろうか。


「アイスうまうま」

「凍らせるとこんな風になるのね……おいし」

デザートはアイスのようだ。一つはチョコ味でもう一つは見た目はバニラである、ただ匂いからしてバニラは使っていないようなのでバニラと言うよりはミルクと言ったところだろう。

「……これは」

「う?」

ぽつりと呟かれた言葉に加賀が視線を向けると、そこにはスプーンを持つ手をぷるぷると震わせ驚愕の眼差しでアイスを見つめるデーモンの姿が。

「ど、どしたの……」

「何という悪魔的な味!」

「えぇー……」

感極まったように叫ぶデーモンであるが、口から出たその言葉は良い意味なのか悪い意味なのか判断に困るものであった。
困ったように視線をアイネに向ける加賀であるが、アイネは軽く首を横にふる。
知らないと言う意味だろう。

「……まぁいっか」

ガツガツとアイスを食べ頭を押さえる様子からとりあえず気にいったのだろうと判断した加賀。深く考えるのをやめ久しぶりのアイスを味わうのであった。
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