異世界宿屋の住み込み従業員

熊ごろう

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125話 「ラヴィの故郷」

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そして翌日の昼過ぎ、午前中の仕事を終わらせ昼食を食べ終えた加賀とアイネにうーちゃん、それにラヴィの4人はそれぞれ荷物を持ち宿の玄関前に集合していた。

ラヴィはうーちゃんとアイネが汽水湖に向かうと聞き、自分が交渉の役に立てるかも知れないからと参加を希望したのだ。
汽水湖はラヴィ曰く彼の出身地らしく、そこには彼の種族で黒鱗のリザードマン立ちも暮らしているそうだ。上位のドラゴンは彼らにとって信仰の対象に近いものがあり、ラヴィも故郷を離れてしばらくたつとは言え出来るだけ汽水湖のドラゴンに被害があるような事は避けたい、それに故郷のリザートマン達とのトラブルも避けたい、故に話を聞いてすぐに参加を希望したのである。

「それじゃそろそろ行こうか。準備はできた?」

「ん、あとこれうーちゃんに渡したら完了だよー」

うー(よっこいせ)

加賀がうーちゃんに手渡したもの、それは背負子であった。
街の北にある汽水湖に向かうにあたって当初はアンジェに頼み馬車で行こうかという話であった。
だが汽水湖と街の間には森が存在する為馬車では通る事が出来ない、なのでどうしようかと考えた結果が背負子である。

「それじゃうーちゃんお願いねー」

うー(まかせろー)

街を出たところでよっこいせと背負子に乗る加賀、体の位置を調整しちょうどいい具合に体が収まったところでうーちゃんに合図をだす。

うっ(へいき?)

「うん、だいじょぶ。行っちゃっていいよー」

「あの、まじでこれで行くの……?」

早速行こうとする二人に不安そうな声で呼びかけるものがいる。
そちらを見るとそこにはアイネさんが生やした腕にもち上げられ項垂れたラヴィの姿があった。

「夕飯の支度があるから早めに済ませたいの、汽水湖までずっと私達と同じ速度で走れるなら降ろしてもいいよ」

「だって」

「……このままでお願いしゃす」

アイネの言葉を加賀が伝えたところ諦めてだらりと力を抜くラヴィ。
体力に自信のある彼であるがそれはあくまで普通に生き物の中ではであり、アイネとうーちゃんについて行くとなれば別である。

「うーちゃんはやーい」

街道を爆走するうーちゃん、あまりの速度に景色が流れるように過ぎて行く。
それでいて加賀はまったく振動を感じていないのだから恐ろしいものである。

「お願いします! もう少し、もうちょっとだっけ速度落としてえええ!」

「何言ってるか分からない」

「そんなああぁっ」

アイネもうーちゃんの後ろを走ると言うよりは滑るように付いて行く。
黒い靄を前進に漂わせながら走るその姿は中々に怖いものがある。
ラヴィは持ち上げられた上で高速で動くと言うのが怖いらしく、速度を落としてとアイネに懇願するが残念ながら言葉は通じない。人の言語で話せば通じるだろうがこの状況でうまく発音するのは無理そうだ。

街道を通り森に入り木々が密集している中を街道と変わらぬ速度でうーちゃんは駆ける。さすがに今度は加賀も悲鳴をあげる事となる。

「うひぁっ! ちょ、だめっだめだってばうーちゃん! もっとゆっくりお願い!」

唸るような音を立て木々が横を体のすぐそばを通り抜けて行く。
うーちゃんはきっちり避けている為、実際加賀に当たることは無いのだがそんな事が加賀に分かるはずもなく音が鳴るたびに悲鳴を上げるのであった。


「ついたけど、貴方の住処はどこかな?」

街を出てからまだ10分立っていないと言うのにも関わらず4人は汽水湖の畔へと到着していた。
アイネは息を切らす事すらなく……そもそも呼吸が必要かどうかと言う話だがそれは置いといて、それなりの距離をかなりの速度で駆けた後には見えない。

「……だって」

「あっち……です」

逆にただ運ばれただけの二人がぐったりしている。
加賀の翻訳を通してアイネの言葉を聞いたラヴィ。力なく住処の方角を指さすのであった。


ラヴィの集落は4人の居た地点からそれほど離れて居なかった、少し視界が開けた所に行くと岸辺に建てられた住処やそこで動くリザートマン達の姿が見える。
そこは集落と言うよりもはや街といった規模であった、岸辺沿いにずらりと並ぶ大小さまざまな建物の数などからして1000人単位で居るのは間違いなさそうである。

「なんか人? 集まってるねー」

「こっちから見えるって事は向こうからも見えるわな、見知らぬ連中が近づいてくればそりゃ警戒するよ。ま、俺が居るからいきなり襲い掛かるような真似はしないと思うぜ」

という事は集落からも見える訳で、4人が集落に近づくと街の外にたくさんのリザードマンが集まっているのが見える。
手には皆それぞれ武器を持っておりかなり物々しい雰囲気だ。


「待て、そこで止まれ! 人間が何の用だ? お前は俺たちの仲間のようだが……」

「20年前に旅に出たウラディスラヴィチだ。今日はこの人たちの案内で着た。長はまだ健在か? 出来れば会いたいのだが」

「人間が長に何の……いや、まてその長髪の奴人間じゃないな。それにそこの妙に毛深いのもよく見たら人間じゃないぞ」

「よく見ないと分からないの……えっと、ここに住んでいるドラゴンと交渉したい事がありまして」

ぱっと見人間のアイネを人間じゃないと見抜き、かと言えばぱっと見でかい兎をよく見ないと人間じゃないと分からない。このあたりは種族の差なのかなと思いつつとりあえず要件を伝える加賀。
一通りの要件を伝え、じっと腕を組んだまま話を聞いていたリザートマン達の様子を伺う。


「神の落とし子か……とりあえず長のところに案内する。ドラゴン様について協力するか否かはそれからだ」

ひとまずリザートマンの長とは話せそうである。
上位のドラゴンに対し崇拝に近い思いを持っている彼らを無視してドラゴンのもとに向かうのは不味い、と言うラヴィの意見を聞いてひとまず集落にきた一行。とりあえずは一歩前進といったところだろうか。
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