異世界宿屋の住み込み従業員

熊ごろう

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157話 「荷物が届いたらしい」

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その日、皆が食い終わっても一人泣きながらピーマンと格闘するヒューゴの姿があったとか何とか。

翌日のお昼前、食堂では宿の従業員一同とパン屋のオージアスが書類をテーブルに並べ何やら話し込んでいる。

「……作るのは大変そうだが、これがあれば小麦の供給については目処が立ちそうだ。それに上質な小麦が安く手に入るとなればこっっちとしては大助かりだ」

「いいんすか? オージアスさんの店の売りが減ってしまいますけど……」

「かまわんよ、小麦粉が安くなりゃその分凝ったパン作れば良い、今まではさすがに高すぎて売りに出せなかったが……小麦粉が安くなりゃいける」

そう言われてみればと思い浮かぶのは加賀がオージアスに伝えた数々のパン達。
いずれも試食し味は好評であったがコストの点から採用を見送った品々である。小麦粉か安くなればそれらも店頭に並べる事が出来るのだろう。

「しっかしこんだけでかいローラーとなるとなあ……この街で加工できるか分からんなこれ」

「あ、やっぱ難しいです?」

テーブルに置かれた紙を改めて眺め渋い表情を見せるオージアス。
そこには一組のローラーを使い小麦を精製する機械、その図が描かれていた。

「もっと小さいなら問題無いと思うが……まあそこは相談するよ」

そう言って紙をカバンにしまい込み皆に礼をいって宿を後にするオージアス、すぐにでもこの後機械を再現できそうな職人の元に行くつもりなのだろう、大通りを歩くその姿は心なしか早歩きである。


「皆おつかれ。とりあえずこれでたまってた依頼は終わりかな」

首をごきりと鳴らし、周りの面々を見る八木。
依頼も終わり皆思い思いの方法でくつろいでいるようだ。加賀に至ってはソファーの上に寝そべるうーちゃんに顔をうずめる様にしてうつ伏せになっている。

「んー……さくっと終わってよかったねー、今日荷物届くらしーし早く終わって助かったー」

手足をぐぐっと伸ばし体の凝りをほぐす加賀。
だらりと手足を伸ばしリラックスした表情を浮かべている。

「荷物? 何たのんだん?」

荷物が届くと聞いて反応する八木。
加賀の荷物と言えば恐らくは何か食材だろうと思い、次は何を作るのかと興味を引かれたのだ。

「コーヒー豆」

「あ、まじ? あったんだ」

加賀の荷物はコーヒー豆であった。
ココアは手に入った物のコーヒーは見つからなかった為ギルドに依頼し探してもらっていたのである。

「海渡った先では普通に飲まれてるらしーね。こっちだと飲む習慣ないみたいだけど」

だから届くまで時間かかっちゃったんだよねと言う加賀であるが、その顔には遅くなった不満はなくもうすぐ届くコーヒー豆に対する期待が現れていた。

「豆ってことは自分で挽かないといかんの? あのゴリゴリやる道具もあったのかな」

「うんにゃ、あっちはゴートンさんに作ってもらっちゃったー」

どうやら加賀はゴートンの仕事の合間を見てちゃっかりコーヒーミルを作ってもらっていたらしい。
聞けば夕食をゴートンのリクエストで作る事を条件にタダで作ってもらったとの事。

「はやく届かないかなー……ん? うーちゃんもしかして誰かきた?」

加賀の下でうーちゃんの耳がぴくりと動く。
その耳は玄関の方を向いており加賀は誰か来たのだろうかとうーちゃんへ尋ねる。
そしてこくりと頷いたうーちゃんを見てがばりと身を起こした加賀、軽く駆け足で玄関へと向かって行くのであった。

「はりきってんなーおい」

「……そんなコーヒーとやらが好きなのか?」

「そうっすねー……」

加賀が食堂から消えるのを苦笑を浮かべながら見送ったバクス。
残った八木にコーヒーについて尋ねる。

「俺と加賀は結構好きですね、一日一杯は飲んでたかも……このみは分かれると思うんすけどね、お菓子にも使えるし……まあ、お茶みたいなもんすね」

「なるほどな」

そう呟き顎に手を当て何か考える仕草を見せるバクス。
程なくして玄関から加賀の助けを呼ぶ声が聞こえてくる、どうやら荷物が多く一人では持ちきれないらしい。バクスは顎から手を放し再び苦笑しつつ玄関へと向かうのであった。 
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