異世界宿屋の住み込み従業員

熊ごろう

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161話 「お祭りですって」

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吐く息がすっかり白くなったころ。規模は小さいながらも街の中心部でメインの通り沿いの街並みが完成したのを祝う祭りが開催されていた。
中央の広場では八木達も設計に関わった特製のステージ上で街のお偉いさんが何やらありがたいお話をしているようだ。
だが、祭りに参加した人々の大半が恐らくその話を聞いていない。

「はい、これ3個入り。あとホットミルクはこっち」

「アイネさん、追加の焼けたよー」

寒い中じっとしているのは辛いものである。皆それぞれ気になる屋台に並び暖を取るべくあたたかな食事を買っていく。
加賀とアイネ、それにうーちゃんの屋台も例外ではない。チョコという珍しい食材で且つ美味しいと言う事で屋台の前にはちょっとした列が出来ていた。

「残りいくつ?」

「もう材料ないからこれで最後、あと10個だね」

それなりの数を用意して臨んだこのお祭りであるが思ってた以上に売れ行きは好調だ。
加賀に残り10個と言われ保温機を覗き込んだアイネであるが、中にはどうみても10個以上はいっている。
ちらりと加賀に視線を向ければ誤魔化すようにちろっと舌をだし横を向く。
どうやら自分たちの分はしっかり確保しておいたらしい。

「……本当、無くなるのはやいね」

「……ねー」

考えていた事は同じと言う事か。ちらりと中身を除いたアイネもにっこりと微笑みを浮かべるとそっと保温機の蓋をしめる。

「お、間に合ったかな? 加賀ちゃん一個おくれー」

ふと聞いた事のある声に加賀が顔を上げればそこに居たのはパン屋のオージアスであった。

「ほい、1個ですねー……オージアスさん、屋台はどうしたんです?」

加賀の記憶が正しければオージアスも加賀達と同じく屋台をやっていたはずである。
まさか屋台を放り出してきたわけではないだろうが一体どういう事だろうかと首を傾げる加賀。

「いや、それがあっという間に売り切れちまってさ、おかげで自分の分も確保できなかったよ」

と笑いながら商品を受け取るオージアス。
そのまま近くにある椅子に腰かけ、まだ熱々の内にぱくりと頬張る。

「……あっつ。思ってたより熱いがうまい……しかしこれチョコたっぷりだな、うちのパンでも出来ないかなこれ」

焼きたてのフォダンショコラはかなり熱かったようで持っていた飲み物で流し込むオージアスであるが、あいにくと持っていた飲み物も熱々である。上顎を舌で探りつつ感想を述べるオージアス、パンに使えないかと考えているらしく二口目からはじっくりと味合う様に食べて行く。

「あ、そうだオージアスさん」

「うん?」

自分たちの分以外は全て売り切れ屋台は早々に店仕舞いする事になった加賀であるが。まだ食べ続けているオージアスに何かを思い出したように声をかける。

「ちょっと前にコーヒーって飲み物手に入れたんですよー。パンに使えるかも知れないんで今度お裾分けしますね」

「ほー? どっかで聞いたことはあるけど……すまんね、ありがたく貰うことにするよ」

屋台の傍にいた客も屋台を片付け始めたところで本当に売り切れたのだと徐々に別の屋台へと移っていく。
オージアスも食べ終わり帰ったところで3人は空いていた席につくと残しておいた商品の入った袋をテーブルに置く。

「それじゃお疲れさまー。これ食べたら他の屋台もちょっと見てまわろうか?」

「ん……そうね、これだけじゃ足らないだろうし」

うー(うままま)

仕事が終わった打ち上げと言う事でまだ温かいフォダンショコラをぱくつく3人。
その様子を遠目に見ていた人物がゆっくりと3人に近づいてく。

「あの……もし」

「ふぁい?」

突如後ろから掛けられた声に口にくわえたまま返事をする加賀。
そこには申し訳なさそうに軽く頭を下げるフードを被った女性がいた。

「……んっ、何でしょう?」

ホットミルクで無理やり流し込み女性に向かい尋ねる加賀。
女性はまだ袋に残ったフォダンショコラを指さし、それと呟く。


「売っていた屋台ってどこか分かりますか……? 探したんですけど見つからなくて」

「あー……」

屋台をやっていたのは自分たちで、しかもその屋台はもう店じまい。そう言おうかどうか悩む加賀。
何せ目の前でその商品をぱくついていたのだ、さすがにちょっと言い辛いものがあるのだろう。
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