異世界宿屋の住み込み従業員

熊ごろう

文字の大きさ
214 / 332

212話 「夏の過ごし方10」

しおりを挟む
隙を見て投稿(´・ω・`)明日は更新お休みになります。




何となく想像はつくが一体何があったか確かめるべく加賀は声の元へと近付いていく。
プールの床を歩くように進む加賀の肩にはぷかぷかと水中に浮かんだアイネがしっかりしがみついていたりする、アイネも念の為ついて行くつもりの様である。

「何かあったのー?」

「おや、加賀さんと……アイネさん。 いやなに、何時ものあれですよ」

騒動の中心から少し離れていた所で遠巻きに見ていたチェスターに声をかける加賀。
声をかけられたチェスターは振り返ると加賀の肩にしがみついていた手を見てビクリと身を震わせる。一瞬手だけが肩にしがみついている様に見えたのだ。
手がアイネのものだと認識したチェスターは騒動の中心を指さして呆れたようすで言葉を続ける。

「あーなるぼどね。今回は何が原因で?」

「どっちが泳ぐの速いとかそんな話だったんですけど……今はただ悪口言い合ってるだけです」

予想通りの光景に納得して騒ぎの原因を尋ねる加賀であるが、やはりそちらも予想通り些細なことが原因であった。

「ふーん……実際泳いで確かめれば良いのにねー」

「まあそうなんですが……」

実際泳いで確かめれば良い、そう言った後に何か思いついたように手をぽむっと叩く加賀。

「せっかくだし皆で競争でもしてみたらー? 優勝者には豪華賞品が――」

豪華賞品と口にした瞬間周囲に居た者の視線が一斉に加賀へと向かう。

「ほう?」

「それはあれかい、また好きなもの作ってくれるとか?」

「まじっすか!」

以前の雪合戦で勝者の食べたい物作る権利を賞品にした事を皆きっちりと記憶していたのだ。前回もそれなりに反響はあったが今回は皆の食いつき具合が違う。と言うのも前回と違って皆どうしても食べたい物があるのだ。

「――……なんちゃって」

「聞こえてない見たいよ」

ぼそりと呟く加賀であるがもはや手遅れである。
アイネの落ち着いた指摘の声にやっちゃったと言う表情を顔に浮かべるのであった。


「あーん? 皆で競争するだあ?」

「……競争する意味あるのでしょうか、どうせ皆頼むものは同じでしょう」

皆で競争、勝ったら豪華賞品と聞いて一旦言い争いをやめた二人であったがその口からは何で競争するのかと否定的な言葉が聞こえてくる。

「カレーっす」

「カレーだの」

「カレー以外あり得ない」

アルヴィンの言葉通り皆の口から出るのはそろってカレーという単語のみであった。
それ見たことかと軽く息を吐くアルヴィンであったが、そこでふとある事に気が付いた様だ。

「誰が勝ってもどうせカレーに……ああ、でも毎月一回だけのカレーが二回になるのです。やる意味は大いにありますね」

「それもそうだな。何だよ、たまには良いこと言うじゃねーか! いやー、楽しみだな。俺はスパイシーでほろほろになった牛肉が好きで――」

月に一度しかないカレーの日がもう一日増える。そう分かった途端にころっと態度を変える二人。
ヒューゴに至っては自分の好きなカレーについて語り始めるが、それを聞いた一部の者の顔が一気に本気になる。

「は? 何言ってるんです。シーフード一択でしょう? とうとう暑さで頭までやられましたか」

「あぁっ!?」

「落ち着くっす二人とも。自分はボアのが良いっす」

心の底から見下した表情を見せるアルヴィンに青筋立ててガン付けるヒューゴ。
止めに入ったガイまでちゃっかり主張し始める。

「牛はシチューとかぶるし、ボアもええが食い慣れた鳥がええのお」

「牛か鳥」

「同じく」

一人が言い出すともう止まらない。普段は無口な地味ーずの二人まで言い出す始末である。

「収集つかねーぞこれ……くそっ、おめーらはどっちだ?」

皆が口々に自分の好みのカレーが一番だと語り出し、しかも票が見事に分かれている為中々収まりがつかなくなる。
どこかに票が寄れば騒ぎの収まるかとヒューゴは議論に参加していない者にも話を振り始める。

「え? 私は別に何でもいいよ……食べたいのはデザートだけど、頼まなくてもどんどん新作くるし」

「ぐ……ラヴィッお前は?」

「……卵がイイ」

「お前らに聞いたのが間違いだったよ、ちくしょうっ」

だが女性陣や卵大好きなラヴィはカレー自体にそこまで興味を示す事はない。
その騒ぎは加賀が中止でいいかなー?と発言するまで続くのであった。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...