異世界宿屋の住み込み従業員

熊ごろう

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283話 「収穫の時期」

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お昼を食べ終え、休憩がてらに加賀の部屋で本読む八木と加賀の二人。
だがどうも加賀の様子がおかしい、時折本を読む手を止めにまにまとした笑みを浮かべている。
そんな加賀の様子を八木は奇妙なものを見るような目で見ていた。

「……ふへへ」

「……」

ついには笑い声まで発し始めた。
八木の眉がきゅっと八の字になる。

「む、なにさー」

「いや……急に笑い出すから」

加賀の方もそんな八木の様子に気が付いた様だ。
ぷくっと頬を膨らませた顔を八木に向ける。

「だってさー、もうすぐ秋なんだよ?」

「……うん?」

確かにもうすぐ秋だがそれが笑い出すのと何か関係あるのだろうか。
八木はいまいち理解が出来ないといった様子でただ首を傾げるばかりである。

「収穫の時期だよ収穫のー」

「まあ確かにそうだけど……そんな喜ぶ事か? 別に去年は普通にしてたべ……何かあったっけ?」

収穫の時期と言うのは確かに加賀に取って喜ばしいことではあるだろう。
だがそうだとしても先程の加賀の様な反応になるとは八木には思えなかった。
現に八木の記憶が確かなら去年の加賀は普通な様子であったはずである。

「有るに決まっているよきみぃ~」

「急に上司風の口調にならないでください」

「ノリ悪いぞー」

乗ってこない八木にぶーぶー文句を言う加賀。
少し恥ずかしかったのか軽く咳払いをすると口を開いた。

「まーあれだよ。この間の食べ物のなる木あったでしょ、森に行ったときにそろそろ成るって教えてもらったんだよね」

以前森で見つけた過去の神の落とし子が残していった建造物、その隠し部屋で手に入れた特殊な種。
守護者を兼ねていた像に託していたが、ついに実りの時期がやってきたらしい。

「っほー。随分と早いな……」

「そこはほら、神の落とし子特製だし?」

ついにとは言ってもほんの数ヶ月しか経っていなかったりするが……。
なる物も特殊だがその成長過程もまた特殊である様だ。

「まあな……んで、いつ頃収穫に行くん?」

「来週だねー。皆もやっぱ連れて行きたいしー」

何を植えるかは宿の皆から話を聞いて決めている。
それもあって加賀は皆を出来るだけ連れて行こうと考えているのだ。

「そうだなあ」

「八木も誘ってみたら?」

「ん……そうだな、せっかくだしそうするか」

それにせっかく皆で行くのであれば、何も宿に居る人限定で無くとも良い。
二人は各々思い浮かぶ人達へと声をかけに行くのであった。


宿の探索者達への声掛けは加賀が担当する様で、夕食を前に帰ってきた探索者達を見つけては声をかけている。

「ねーねー。来週のどこかで暇な日ってなーい?」

まずは皆の開いている日を確認する必要がある。
全員が同じ日に暇になる事は無いだろうが、出来るだけ大勢で行けるならそれに越したことは無い。

「有るっちゃ有るけど、無いっちゃ無い」

「むー?」

「何も無ければダンジョンに行きますが、何か有るのでしたら何時でも休めますよ」

「そかそか。えっとね、実はね――」


一方の八木はやはりと言うかエルザへと声をかける為ギルドへと向かっていた。
モヒカン達は後回しらしい。

「エルザさん、来週なんですけど……どこか開いている日ありますか?」

「……そうですね、どの日でも大丈夫ですよ。あ、でも出かける当日に言われるとさすがに厳しいです……」

「ちゃんと事前に言いますんでその辺は大丈夫っす。実はですね――」

ドラゴンへの声掛けはリザートマンへメッセージを託すことにした様だ。
リザートマン達の住処にある祭壇のような場所でリザートマン達が身振り手振りを交えながらドラゴンへと預かったメッセージを伝えていた。

「ほう、また何かイベントがあると」

「今度は森の中でやるようです」

「我が輩は行くとして、主らも時間はあれば参加すると良いだろう」

割と暇なドラゴンであるが、特に悩むことも無く参加する事を即決する。

「後は彼奴らだが……」

そう言って振り返った先に見えるのは汽水湖の中央に位置する島。
そこでは現在2匹の飛竜が住処を作成中だったりする。
邪魔するのも悪いかと考えたドラゴンであるが、やはり声だけは掛けてみるかとゆっくりと水中へと潜って行く。



なお、泣きながら断られた模様。
先日の出来事がトラウマになっているらしい……。
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