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21話 「焼きたてパンと悩みごと」
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「ちょっとこいつ食ってみてくれないか? バクスも」
そういってオージアスはバクスと加賀へ籠を差し出す。
差し出された籠の中には人の顔ほどもある大きさの丸形のパンが入っていた。
生地に何か練りこまれているのだろう、所々パンの表面から出た何はこんがりと狐色に焼けていた。
パンを受け取ったバクスはパンをちぎるとひょいと口に放り込む。
焼き立てなのだろうバスクが咀嚼するたびに良い音が響いている。
「…焼き立てやっぱうまいな、中に入ってるのはチーズか」
「焼き立てっいただきます!」
焼き立てという言葉を聞いた加賀もパンを手に取りちぎると口へ運ぶ。
ほんのりと温かいパンを一口かむとぱりっと言う音と共に香ばしく焼けた小麦の香り、果物の様な酵母の香り、それに少し遅れてチーズの芳醇な香りが口の中へと広がる。
パンの中は表面とちがってまだ熱く中にはいっていたチーズはトロトロに溶けており、パンの外側のぱりっとした食感、中身のふんわりとした食感と合わさりいつまでも噛んでいたいと思わせるような見事な出来栄えであった。
加賀もバクスも相当気にいったようだ、その顔にはオージアスのように満面の笑みが浮かんでいる。
「んっめっちゃ美味しいですねー! チーズまだとろとろだー」
「うむ、うまい。こりゃパンだけでもがんがん食えるな」
美味しいという二人の反応をみてずっとにこにこしていたオージアスだったが、不意に少し落ち込んだような表情になると二人へと話しかける。
「おうおう、ありがとうよ! ……実はそのパンの事でちょっと相談したい事があってな」
「相談…ですか? ボクは構わないですけど」
小麦粉のお礼もあり、相談の内容も食べ物に関する事である。
加賀は特に気負った様子もなく、相談を受けると返事をする。
「実はそのパンな確かにみんな美味しいって言ってくれるんだけど…売れないんだよ」
「売れないですか…チーズも使ってますしちょっと高いとか?」
加賀の言葉にバクスはちらりと値札に目を向けこう言った。
「いや…普段売ってるパンにチーズの値段足したぐらいだな、これぐらいなら別に高いってことはないと思うぞ?」
売れない理由と聞いて加賀はチーズの値段分高くなり買いたくても買えないのでは、と考えたようだ。
が、それはバクスによって否定される。どうやらこの国ではチーズ自体そこまで高価なものではなく、チーズ代を足したとしてもあまり高くなる事はないようだ。
そうなるとほかにどんな理由がと頭をひねる加賀にオージアスが話かける。
「すまん、実は理由は分かっててな…チーズ入ってる分焼き立てはめちゃくちゃ美味いんだが、持ち帰ってから食うとなるとどうしても冷めたものを食う事になる。そうなると味が落ちる、チーズ入りと期待してた分がっかり感も多くて次からはもう買わないって具合だな。」
「あー…」
「たしかにこいつは焼き立てを食いたいよなあ」
オージアスのそれもそうだと納得するバクスと加賀、そんな二人をみてオージアスは言葉をつづける。
「そんなわけでじょ…加賀ちゃんが住んでいた所でもこういったパン売ってなかったかい? 売ってたとしたらどうやって食べてたか教えてほしいんだ。」
「どうって…焼き立てが美味しいですし、普通にトーストして食べてましたよー」
「やっぱそうだよなあ…」
一瞬何かを言いかけたオージアスをスルーすると加賀は質問に答える。
加賀にとったはパンをトーストして食べるのはごく当たり前の事であったが、オージアスの反応を見るにそうではないのだろうかと口を開いた。
「あまりトーストして食べないんですか?」
「それなりに手間かかるからなあ、気が向いた時ぐらいかな…加賀ちゃんとこは普段からトーストして食べてたのかい?」
「はい、専用の道具もありましたしー」
そう言って加賀はオージアスに加賀がいた世界ではトースターと呼ばれる機械が普及している事、さらにはその仕組みなどを簡単に説明していく。
オージアスはふむふむと頷きながら加賀の言葉を聞いている、その顔はかなり真剣で最初に会った時のような厳しい表情となっていた。
「てな感じですー」
「…なるほど、ありがとう参考になったよ」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「それじゃ、また来てくれ。次はパンの事いろいろ聞かせてくれよな」
「はいっありがとうございましたー! またきますねー」
パンを入れた袋を手にし店を後にするバクスと加賀、オージアスは加賀にパンの事で聞きたいことが色々とあったようだが二人以外にも客が続々とやってきてたのでまたの機会に、となった。
二人が家に戻り玄関を開けると、すでに起きて来ていた八木が食卓ノ椅子へ腰かけていた。
「たっだいまー」
「おかえりー、おーいい匂い。」
「八木も起きてる事だし飯にするか、加賀またスープ作ってもらっても良いか? 俺は…昨日のトマトのソースが残ってるな、ちょっと貰っていいか? オムレツでも作るよ。」
そういうとバクスは玉ねぎを刻み細かく切った塩漬け肉と共に炒めていく。
ある程度炒め終わったところで火から外すと今度は卵を割り、牛乳をいれ溶き、油をひいて熱したフライパンに一基に流し込んだ。
バクスは卵が固まりすぎないようにフライパンを揺すりつつ中身をかき混ぜている。
(さすがに手馴れてるなー、具入りのオムレツかな?)
バクスは卵にある程度火が通ったところで炒めた具を入れ卵で器用にくるんでいく。
「バクスさんも料理お上手ですねー」
「はは、そりゃあ10年以上やってるからなあ…それなりにはできる、よっと。」
バクスは綺麗な黄色に焼けたオムレツを皿にひょいと乗せると上に温めなおしたトマトソースをかけていく。
「おっし、できたぞ。加賀の方はどうだ?」
「ん、ボクの方もできましたよー、と言ってもトウモロコシ余ってたから昨日と同じスープなんだけどね…」
「なに、いっつも同じようなもんばっか食ってんだ、気にしたもんじゃない。うし、冷めないうちに食おうか」
そういってオージアスはバクスと加賀へ籠を差し出す。
差し出された籠の中には人の顔ほどもある大きさの丸形のパンが入っていた。
生地に何か練りこまれているのだろう、所々パンの表面から出た何はこんがりと狐色に焼けていた。
パンを受け取ったバクスはパンをちぎるとひょいと口に放り込む。
焼き立てなのだろうバスクが咀嚼するたびに良い音が響いている。
「…焼き立てやっぱうまいな、中に入ってるのはチーズか」
「焼き立てっいただきます!」
焼き立てという言葉を聞いた加賀もパンを手に取りちぎると口へ運ぶ。
ほんのりと温かいパンを一口かむとぱりっと言う音と共に香ばしく焼けた小麦の香り、果物の様な酵母の香り、それに少し遅れてチーズの芳醇な香りが口の中へと広がる。
パンの中は表面とちがってまだ熱く中にはいっていたチーズはトロトロに溶けており、パンの外側のぱりっとした食感、中身のふんわりとした食感と合わさりいつまでも噛んでいたいと思わせるような見事な出来栄えであった。
加賀もバクスも相当気にいったようだ、その顔にはオージアスのように満面の笑みが浮かんでいる。
「んっめっちゃ美味しいですねー! チーズまだとろとろだー」
「うむ、うまい。こりゃパンだけでもがんがん食えるな」
美味しいという二人の反応をみてずっとにこにこしていたオージアスだったが、不意に少し落ち込んだような表情になると二人へと話しかける。
「おうおう、ありがとうよ! ……実はそのパンの事でちょっと相談したい事があってな」
「相談…ですか? ボクは構わないですけど」
小麦粉のお礼もあり、相談の内容も食べ物に関する事である。
加賀は特に気負った様子もなく、相談を受けると返事をする。
「実はそのパンな確かにみんな美味しいって言ってくれるんだけど…売れないんだよ」
「売れないですか…チーズも使ってますしちょっと高いとか?」
加賀の言葉にバクスはちらりと値札に目を向けこう言った。
「いや…普段売ってるパンにチーズの値段足したぐらいだな、これぐらいなら別に高いってことはないと思うぞ?」
売れない理由と聞いて加賀はチーズの値段分高くなり買いたくても買えないのでは、と考えたようだ。
が、それはバクスによって否定される。どうやらこの国ではチーズ自体そこまで高価なものではなく、チーズ代を足したとしてもあまり高くなる事はないようだ。
そうなるとほかにどんな理由がと頭をひねる加賀にオージアスが話かける。
「すまん、実は理由は分かっててな…チーズ入ってる分焼き立てはめちゃくちゃ美味いんだが、持ち帰ってから食うとなるとどうしても冷めたものを食う事になる。そうなると味が落ちる、チーズ入りと期待してた分がっかり感も多くて次からはもう買わないって具合だな。」
「あー…」
「たしかにこいつは焼き立てを食いたいよなあ」
オージアスのそれもそうだと納得するバクスと加賀、そんな二人をみてオージアスは言葉をつづける。
「そんなわけでじょ…加賀ちゃんが住んでいた所でもこういったパン売ってなかったかい? 売ってたとしたらどうやって食べてたか教えてほしいんだ。」
「どうって…焼き立てが美味しいですし、普通にトーストして食べてましたよー」
「やっぱそうだよなあ…」
一瞬何かを言いかけたオージアスをスルーすると加賀は質問に答える。
加賀にとったはパンをトーストして食べるのはごく当たり前の事であったが、オージアスの反応を見るにそうではないのだろうかと口を開いた。
「あまりトーストして食べないんですか?」
「それなりに手間かかるからなあ、気が向いた時ぐらいかな…加賀ちゃんとこは普段からトーストして食べてたのかい?」
「はい、専用の道具もありましたしー」
そう言って加賀はオージアスに加賀がいた世界ではトースターと呼ばれる機械が普及している事、さらにはその仕組みなどを簡単に説明していく。
オージアスはふむふむと頷きながら加賀の言葉を聞いている、その顔はかなり真剣で最初に会った時のような厳しい表情となっていた。
「てな感じですー」
「…なるほど、ありがとう参考になったよ」
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「それじゃ、また来てくれ。次はパンの事いろいろ聞かせてくれよな」
「はいっありがとうございましたー! またきますねー」
パンを入れた袋を手にし店を後にするバクスと加賀、オージアスは加賀にパンの事で聞きたいことが色々とあったようだが二人以外にも客が続々とやってきてたのでまたの機会に、となった。
二人が家に戻り玄関を開けると、すでに起きて来ていた八木が食卓ノ椅子へ腰かけていた。
「たっだいまー」
「おかえりー、おーいい匂い。」
「八木も起きてる事だし飯にするか、加賀またスープ作ってもらっても良いか? 俺は…昨日のトマトのソースが残ってるな、ちょっと貰っていいか? オムレツでも作るよ。」
そういうとバクスは玉ねぎを刻み細かく切った塩漬け肉と共に炒めていく。
ある程度炒め終わったところで火から外すと今度は卵を割り、牛乳をいれ溶き、油をひいて熱したフライパンに一基に流し込んだ。
バクスは卵が固まりすぎないようにフライパンを揺すりつつ中身をかき混ぜている。
(さすがに手馴れてるなー、具入りのオムレツかな?)
バクスは卵にある程度火が通ったところで炒めた具を入れ卵で器用にくるんでいく。
「バクスさんも料理お上手ですねー」
「はは、そりゃあ10年以上やってるからなあ…それなりにはできる、よっと。」
バクスは綺麗な黄色に焼けたオムレツを皿にひょいと乗せると上に温めなおしたトマトソースをかけていく。
「おっし、できたぞ。加賀の方はどうだ?」
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