異世界宿屋の住み込み従業員

熊ごろう

文字の大きさ
67 / 332

66話 「残りのメンバーが来たようで」

しおりを挟む
ガイ達が著てからおよそ一月が立ったったある日の朝、宿の食堂に二人の人物がいた。
一人は八木、もう一人はチェスターである。

八木はもう朝食を食べ終えたのだろう、空になった食器を前にぼーっとチェスターのほうを眺めていた。
それに気がついたチェスターは手を止めると八木へと声を掛ける。

「どうしました? ぼーっとして」

「あ、失礼。いやあチェスターさんのその格好も見慣れてきたなと思って……」

「着るようになってから一月たちますしね、最近は外でもじろじろ見られることが減ってきました。代わりにどこで売っているのかと聞かれることが増えましたけど」

そう話しながら食事を再開するチェスター。
咲耶が作った服を着るようになってからもう一月である、宿の中でも外でも見慣れた光景となっていた。

「へえ、まわりの評判どんな感じです?」

「悪くないですよ、じろじろ見られるといってもどちらかというと興味引かれてといった感じですし。先ほども言った通りどこで売っているのかと聞かれますから、購入したいと考えてる人も結構いるようですよ。他のメンバーも話し聞く限り似たり寄ったりといった感じですね」

チェスターの言葉の通り、咲耶は一月の間にチェスターだけではなく他のメンバーの服も作成していた。
どれも咲耶の趣味全開で作られたものであり、作った本人は作りたいものを思う存分つくれて満足。チェスターたちも安く上等な服が手に入りこちらも満足と実にウィンウィンな関係となっている。

「ここだけの話し最初はちょっと恥ずかしかったんですけどね、慣れると前の服には戻れません」

「大分気に入ったんですね、それきいたら咲耶さんもっと張り切りそうすね」

「たしかに……張り切りすぎて無理しないといいんですが」

チェスターの言葉に天井を見る八木。
再び視線を戻すと口を開く。

「今の所暇なときに作ってるだけみたいなんで大丈夫とは思いますよ?」

「そうですか……他のメンバーきた時にどうなるかですね、おそらく皆ほしがるでしょうから……」

「そこは咲耶さんに自重して貰うしか……そういやそろそろ他のメンバーさん来るんでしたね」

ガイたちが来てからそろそろ一月がたつ、もう他のメンバーいつ来てもおかしくはない。

布巾で口を軽くぬぐいコップを手に取るチェスター。
コップの中身は絞りたての牛乳だ、コップを傾け一気にあおると満足げに息を吐く。

「そろそろ来るはずですね、来たらギルドで待つよう言付けてあるので、もう街に来ているのなら夕方には宿に来るでしょうね。もし昨晩来てたのなら今朝ギルドに向かった彼らと合流しているはずなので……あ、ごちそうさまです」

「お粗末様でした。下げちゃいますね、飲み物のお代わりはいりますかー?」

「ありがとうございます。もう少しで出るのでお構いなく」

お代わりが必要かなと厨房から顔を覗かせた加賀であるが、もう出ると聞いて食器を下げ始める。
食器を片付け終わりチェスターがそろそろ席を立とうかと言うところでふいに宿の外が騒がしくなる。

「噂をすればと言うやつですかねえ」

「えっ、てことは……」

「ええ、残りのメンバーが来たようですね」

そう話している間にもがやがやとした音は徐々に大きくなっていき、ふい八木が何かに反応したようにピクリと動く。

「……いま女の人の声が聞こえたような」

「ああ、全部で4人ですがいますよ」

「あ、やっぱ少なめなんですね?」

「ええ、体を使う職業なんでそのへんはしょうがないですねえ」

では、ちょっと挨拶してきますね、と言い席を立つチェスターとそれを追うように同じく席を立つ八木。
扉の手前まできたところで加賀が八木をよびとめる。

「どうした? 加賀は行かんの?」

「行くけどその前に言っておこうと思って」

「うん?」

加賀の言葉に怪訝そうな顔をする八木。
加賀はチェスターが部屋から出たのを確認するとやや声のトーンを落とし八木へと話しかける。

「チェスターさんから聞いたんだけど、この世界だとモンスターを倒すことによって強くなるそうなのね」

「へえ、やっぱそう言うのあるんだなあ」

「それでね……」

加賀の言葉を聞いて感心した様子の八木。加賀はそれを見てちょっと言いにくそうに言葉を句切る。

「後衛でも女性でも倒すだけでむきむきになると思うの」

「………………」

「だからショック受けても大げさに驚かないように気をつけてね?」

おう、と小さく返事する八木を押すように玄関へと向かう二人。
玄関ではバクスと咲耶の二人が対応しているところであった。
玄関へと出てきた八木と加賀に気付いたバクスが声を上げる。

「二人とも良いところに来た! すまんが鍵渡したお客さんから部屋に案内してやってくれ」

「はーい。それじゃそちらの方から案内しますねー」

「……はっ えっとじゃあそちらの方案内します、こちらです」

二人が最初に案内したのはどちらも女性でしかもエルフであった。
八木の方は肌が浅黒く恐らく違う種族……ダークエルフと呼ばれる存在のようだ。
気にしていた体格のほうはやはり筋肉質ではあったがアルヴィンらよ比べると大分普通である。
軽い足取りで案内する加賀とやや足取りの重い八木を見るに、加賀としては範囲内で八木としては範囲外だったのかも知れない。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...