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79話 「八木春 2」
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「諸君、おはよう!」
普段からは考えられないぐらいテンションの高い八木。
歯がキラリと光りそうな笑みを浮かべ事務所の皆に挨拶をする。
「……ちょっと八木さんどうしたんです?」
「知らないよ……頭でも打ったんじゃないの」
そんな八木をみてひそひそと話すニコルとチャール。
オルソンに至っては何か化け物でも見たかの様な視線を向けている。
「あ、オルソン」
「はっ、はい」
びくりと体を跳ねさせ、思わず席を立つオルソン。
「俺、今日は現場行くからあとよろしくう!」
「……はい? え、何言ってんですが今週出さないと不味いのがまだ」
「じゃ、そう言う訳だから!」
「え、ちょ、まっ……まてええぇぇぇ!!」
それから少しして街の中心へと向かう大通り、その一角に八木の姿があった。
事務所を出た八木はまっさきに親方の元へと向かっていた、そこで仕事がないかと尋ねると丁度休んだ奴がいるとの事で仕事にありつくことが出来たのだ。
「なあ、なんであいつはあんな張り切ってるんだ」
「さあ……分からないすね」
そうか、と呟き再び視線を八木へと向ける親方。
現場にでた八木は張り切っていた。
夏が終わる気配があるとは言えまだまだ日中は暑さが厳しい、今日の仕事は家の解体であった事もあり、すぐに汗だくとなった八木はいつのまにか上半身裸となっていた。
「さっきから気になってたんだが、あいつなんで上半身裸なんだ?」
「知らないっすよ……俺にきかんでください」
そうか、と呟いて視線を別の所へと向ける親方。
気にしてもしょうがないかと考えたのだろう。
出合いを求めて外へとでた八木であったが、体を動かす内に次第にその事を忘れ作業に集中していく。
このまま何も起こらず一日が終わるかと思われたが、神様の計らいだろうかそんな八木の姿を物陰からじっと見つめるものがいた。
「八木、一反休憩いれるぞー荷台も満載になっちまった」
「うぃっす……っあぶねえ!」
親方の言葉に振り返り、そこで解体された木材などが堆く積まれた荷台から、その一部が荷台の側にいた人に対しては崩れ落ちようとしているのを視界に捕らえる。
「……きゃっ」
咄嗟に体が動く、八木は荷台の側にいた人を抱えて荷台から飛び退る。
突然発生した大きな音に辺りは一次騒然となる。
「あぶねえ……間一髪だな……ぐぅっ」
「あ、ありがとう御座います……背中に傷がっ」
間一髪の所で女性を救った八木であるが、その代償として背中の皮膚をごっそりと削られていた。
背中から溢れ、流れ落ちる血に顔を真っ青にさせながらも女性は懐から赤みがかった液体の入った入れ物を取り出すと、中身を八木の傷へと振りかける。
すさまじい効果のポーションだった。
八木の背中はまるで逆再生するかのように傷が癒えて行く。
よく見ると八木が助けた女性はかなり身なりの良い格好をしている。
これだけの効果があるポーションを持っている辺り相当な金持ちか、貴族なのだろう。
「お前ら無事か!?」
「あ、親方……俺の方は大丈夫です、ポーション使って貰っちまったみたいで……」
「私も無事です、この方に庇って頂きましたので」
それを聞いて心底ほっとした様子をみせる親方。
そして徐々に顔が赤くなっていく、そして次の瞬間荷台で作業していた者たちへ親方の雷が落ちる。
「親方……ほどほどにね」
「お嬢様! ご無事でしたか……」
ふいに後ろから聞こえたその言葉に八木が振り返ると、そこには執事だろうか、びしっとした服を着こむ壮年の男性に先ほど助けた女性が何やら耳打ちしていた。
「かしこまりました。直ちに手配致します」
そう言って現場から離れていく執事と思しき男性。
女性は八木のほうに歩みよると改めて礼を述べる。
「先ほどは危ないところを助けた頂きありがとうございます。このお礼はいずれ……まずはこの現場を片付けてしまいましょうか、このままで通行の妨げになってしまいます」
「ん、ああそうだな。それじゃ──」
「いえ、人はこちらで手配しましたので大丈夫ですわ」
他の連中に声をかけ散らばった残骸を片付けようとする八木であるが、女性に静止される。
「これもお礼の一つと言う事で……八木様はどうぞ作業にお戻りくださいな」
「でも……それじゃあ悪いけどお言葉に甘えて……」
一瞬断ろうかと考えた八木であるが、先ほどの執事と共に屈強そうな男衆が現れたのをみて女性の提案を受けることにする。
その背中に女性からの熱い視線を受けながら八木は現場へと戻るのであった。
「ってなことがあったんだ。あの熱い視線、きっと間違いない!」
「へー」
「ほー」
「ふーん」
夜の食堂にて昼間の出来事を上機嫌で語る八木。
「反応うっす! もうちょいなんかないのっ」
「まあ、よかったねえとしか……それでその子なんて名前なん?」
反応がうすいと嘆く八木をスルーして質問を投げかける加賀。
名前は?と聞かれてぴしりと固まる八木、名前を聞くのを忘れていたのだ。
「しまった! 聞いてないぞ!」
「あーららー、せっかくの機会だったのにねえ」
「いや、まだだ……彼女はいずれお礼をと言っていた! まだ機会はあるはずだ!!」
そう言って拳を握りすくっと立ち上がる八木。
「明日にそなえて寝るぜええぇ」
そのテンションのまま果たして寝れるのであろうか。
もう夜も遅い、一同は呆れ顔をしつつ各自の部屋に戻るのであった。
そしてあくる朝、さっそく現場に向かおうとした八木であるがその前に八木を訪ねる人物が現れた。
玄関にでた咲耶からその事を聞くと途端に朝からテンションマックスになった八木は玄関へと走っていく、
「昨日はどうも、八木様……おや、いかがなされましたかな?」
玄関にいたのは先日女性と会話をしていた執事らしき人物であった。
髭を軽く扱きながら無機質な視線を向ける執事。八木のテンションは一気に最低レベルまで落ち込む。
「あ、いえお構いなく…………それで何のご用件でしょうか」
「ええ、実は──」
執事の話、それは先日のお礼にお嬢様が館に招待したいと考えていること、そしてその招待状を持ってきたという内容であった。
現金なもので途端にテンションが上がる八木、招待状を受け取り執事と別れるとそのテンションのまま食堂へと向かう。
「へぇ、貴族様からの招待状ですか……」
「八木っちよかったじゃん。玉の輿?狙えるよ!」
「良かったじゃねーの、行くのは明後日だってな?」
宿の皆の反応も悪くはなかった。
八木はさんざん見せびらかせ、仕事へと向かうのであった。
「貴族からの招待ねえ……本当だいじょうぶなのかなー」
「……一応相手の事については調べてもらうつもりだ。そこで特に問題なさそうな相手であればいくつか魔道具を持たせる。だめな相手だったらどうにかして断るしかないな」
相手が貴族ということで、加賀だけではなくバクスも心配してはいたようだ。
とりあえずは相手の事を調べ、それ以降については結果待ちとなる。
そして二日後の約束の日。
八木は迎えの馬車に乗り込みにこにこしながら皆に手を振っていた。
調査の結果は特に悪い噂は聞かない人物と、家であることが判明した。
八木は解毒効果などのある魔道具を持たされ見送られる事となった。
「………」
「ん? どったの加賀っち」
八木を見送ったきりずっと無言の加賀。
気になったシェイラが問いかける。
「いやー……今更だけどなんで相手は八木の名前しってたのかなーって」
「………あー」
「八木は貴族の仕事も受けてるって言うし……でもまずくね?」
八木様。
相手は八木の事を最初から名前で呼んでいた、いま思えば引っかかるところではあるがもう八木は出発してしまっており、今頃は貴族街と一般街をしきる門の向こう側、後の祭りである。
「領主の館並みに広いなあ……」
一方貴族の館についた八木応接室へと通されていた。
出されたお茶を飲みつつ待つことしばし、扉をたたく音が聞こえ八木が軽く返事をすると扉をあけ女性が入ってくる。
「八木様、お待たせいたしました。」
入ってきたのは依然助けた女性本人であった。
軽く挨拶をかわし、椅子に座る女性。
「リーザ = フェーエンベルガーと申します。リーザと及びくださいな」
名乗って無かった事を謝罪し、改めて名を名乗る女性。
彼女はフェーエンベルガー家の長女であるそうな、ただ兄がいるため自分が家を継ぐことはなく、わりと自由気ままに暮らせている、との事。
「へぇ……鎧を作っていると」
「ええ、お恥ずかしながら……どちらかと意匠のほうがメインなのですけど、小さいころに少し触れて以来ずっとのめり込んでいまして……実は本日及びしたのはお礼はもちろんなのですが、意匠について相談できたらなと思ったからなのです」
その言葉を聞いて私で良ければ喜んでと承諾する八木。
そのまましばらく話込み、話題は八木の背中の文様にうつっていく。
「じつは八木様の背中の文様を一目みて気に入ってしまいまして……ただ八木様は神の落とし子、その文様をそのまま使用することは出来ません」
「あぁ……消えてしまうのですね」
神の落とし子の性質の一つが障害となりローゼは鎧のその文様を刻むことができないでいた。
ものは試しにと八木が模様を描いてみるが、やはり消えてしまう。
「少し休憩にしましょうか」
少し気落ちした様子で休憩を提案するローザ。
八木もずっと話して為喉が渇いていたおり、ひとまず休憩となる。
「あまり気落ちしないでください……ほかの意匠についてはいくつか心当たりがあります、俺で良ければ相談に乗りますよ」
「そう、ですか。ありがとうございます……実は一つだけ折り入ってお願いしたい事がございまして。休憩が終わったら聞いていただけると……」
ぐいっと茶を一気に飲み干す八木。
そして笑顔で俺で良ければ喜んでと答えるのであった。
「えっと……ちょっと話すのはお恥ずかしいのですが」
耳まで真っ赤になり、顔を伏せ気味にするローザ。
(うひゃー……可愛いなあ、おい。加賀も見習えってんだ)
「その……私、八木様の……」
(八木様の? 八木様のなんだ。心が欲しいってか!?)
顔には何とか出さないでいるが八木のテンションはうなぎ登りである。
「私、八木様の……」
そこまで言うとローザは意を決したように顔を上げ、そっと八木の手を取り目を合わせ、言葉を続けた。
「皮が欲しいの」
普段からは考えられないぐらいテンションの高い八木。
歯がキラリと光りそうな笑みを浮かべ事務所の皆に挨拶をする。
「……ちょっと八木さんどうしたんです?」
「知らないよ……頭でも打ったんじゃないの」
そんな八木をみてひそひそと話すニコルとチャール。
オルソンに至っては何か化け物でも見たかの様な視線を向けている。
「あ、オルソン」
「はっ、はい」
びくりと体を跳ねさせ、思わず席を立つオルソン。
「俺、今日は現場行くからあとよろしくう!」
「……はい? え、何言ってんですが今週出さないと不味いのがまだ」
「じゃ、そう言う訳だから!」
「え、ちょ、まっ……まてええぇぇぇ!!」
それから少しして街の中心へと向かう大通り、その一角に八木の姿があった。
事務所を出た八木はまっさきに親方の元へと向かっていた、そこで仕事がないかと尋ねると丁度休んだ奴がいるとの事で仕事にありつくことが出来たのだ。
「なあ、なんであいつはあんな張り切ってるんだ」
「さあ……分からないすね」
そうか、と呟き再び視線を八木へと向ける親方。
現場にでた八木は張り切っていた。
夏が終わる気配があるとは言えまだまだ日中は暑さが厳しい、今日の仕事は家の解体であった事もあり、すぐに汗だくとなった八木はいつのまにか上半身裸となっていた。
「さっきから気になってたんだが、あいつなんで上半身裸なんだ?」
「知らないっすよ……俺にきかんでください」
そうか、と呟いて視線を別の所へと向ける親方。
気にしてもしょうがないかと考えたのだろう。
出合いを求めて外へとでた八木であったが、体を動かす内に次第にその事を忘れ作業に集中していく。
このまま何も起こらず一日が終わるかと思われたが、神様の計らいだろうかそんな八木の姿を物陰からじっと見つめるものがいた。
「八木、一反休憩いれるぞー荷台も満載になっちまった」
「うぃっす……っあぶねえ!」
親方の言葉に振り返り、そこで解体された木材などが堆く積まれた荷台から、その一部が荷台の側にいた人に対しては崩れ落ちようとしているのを視界に捕らえる。
「……きゃっ」
咄嗟に体が動く、八木は荷台の側にいた人を抱えて荷台から飛び退る。
突然発生した大きな音に辺りは一次騒然となる。
「あぶねえ……間一髪だな……ぐぅっ」
「あ、ありがとう御座います……背中に傷がっ」
間一髪の所で女性を救った八木であるが、その代償として背中の皮膚をごっそりと削られていた。
背中から溢れ、流れ落ちる血に顔を真っ青にさせながらも女性は懐から赤みがかった液体の入った入れ物を取り出すと、中身を八木の傷へと振りかける。
すさまじい効果のポーションだった。
八木の背中はまるで逆再生するかのように傷が癒えて行く。
よく見ると八木が助けた女性はかなり身なりの良い格好をしている。
これだけの効果があるポーションを持っている辺り相当な金持ちか、貴族なのだろう。
「お前ら無事か!?」
「あ、親方……俺の方は大丈夫です、ポーション使って貰っちまったみたいで……」
「私も無事です、この方に庇って頂きましたので」
それを聞いて心底ほっとした様子をみせる親方。
そして徐々に顔が赤くなっていく、そして次の瞬間荷台で作業していた者たちへ親方の雷が落ちる。
「親方……ほどほどにね」
「お嬢様! ご無事でしたか……」
ふいに後ろから聞こえたその言葉に八木が振り返ると、そこには執事だろうか、びしっとした服を着こむ壮年の男性に先ほど助けた女性が何やら耳打ちしていた。
「かしこまりました。直ちに手配致します」
そう言って現場から離れていく執事と思しき男性。
女性は八木のほうに歩みよると改めて礼を述べる。
「先ほどは危ないところを助けた頂きありがとうございます。このお礼はいずれ……まずはこの現場を片付けてしまいましょうか、このままで通行の妨げになってしまいます」
「ん、ああそうだな。それじゃ──」
「いえ、人はこちらで手配しましたので大丈夫ですわ」
他の連中に声をかけ散らばった残骸を片付けようとする八木であるが、女性に静止される。
「これもお礼の一つと言う事で……八木様はどうぞ作業にお戻りくださいな」
「でも……それじゃあ悪いけどお言葉に甘えて……」
一瞬断ろうかと考えた八木であるが、先ほどの執事と共に屈強そうな男衆が現れたのをみて女性の提案を受けることにする。
その背中に女性からの熱い視線を受けながら八木は現場へと戻るのであった。
「ってなことがあったんだ。あの熱い視線、きっと間違いない!」
「へー」
「ほー」
「ふーん」
夜の食堂にて昼間の出来事を上機嫌で語る八木。
「反応うっす! もうちょいなんかないのっ」
「まあ、よかったねえとしか……それでその子なんて名前なん?」
反応がうすいと嘆く八木をスルーして質問を投げかける加賀。
名前は?と聞かれてぴしりと固まる八木、名前を聞くのを忘れていたのだ。
「しまった! 聞いてないぞ!」
「あーららー、せっかくの機会だったのにねえ」
「いや、まだだ……彼女はいずれお礼をと言っていた! まだ機会はあるはずだ!!」
そう言って拳を握りすくっと立ち上がる八木。
「明日にそなえて寝るぜええぇ」
そのテンションのまま果たして寝れるのであろうか。
もう夜も遅い、一同は呆れ顔をしつつ各自の部屋に戻るのであった。
そしてあくる朝、さっそく現場に向かおうとした八木であるがその前に八木を訪ねる人物が現れた。
玄関にでた咲耶からその事を聞くと途端に朝からテンションマックスになった八木は玄関へと走っていく、
「昨日はどうも、八木様……おや、いかがなされましたかな?」
玄関にいたのは先日女性と会話をしていた執事らしき人物であった。
髭を軽く扱きながら無機質な視線を向ける執事。八木のテンションは一気に最低レベルまで落ち込む。
「あ、いえお構いなく…………それで何のご用件でしょうか」
「ええ、実は──」
執事の話、それは先日のお礼にお嬢様が館に招待したいと考えていること、そしてその招待状を持ってきたという内容であった。
現金なもので途端にテンションが上がる八木、招待状を受け取り執事と別れるとそのテンションのまま食堂へと向かう。
「へぇ、貴族様からの招待状ですか……」
「八木っちよかったじゃん。玉の輿?狙えるよ!」
「良かったじゃねーの、行くのは明後日だってな?」
宿の皆の反応も悪くはなかった。
八木はさんざん見せびらかせ、仕事へと向かうのであった。
「貴族からの招待ねえ……本当だいじょうぶなのかなー」
「……一応相手の事については調べてもらうつもりだ。そこで特に問題なさそうな相手であればいくつか魔道具を持たせる。だめな相手だったらどうにかして断るしかないな」
相手が貴族ということで、加賀だけではなくバクスも心配してはいたようだ。
とりあえずは相手の事を調べ、それ以降については結果待ちとなる。
そして二日後の約束の日。
八木は迎えの馬車に乗り込みにこにこしながら皆に手を振っていた。
調査の結果は特に悪い噂は聞かない人物と、家であることが判明した。
八木は解毒効果などのある魔道具を持たされ見送られる事となった。
「………」
「ん? どったの加賀っち」
八木を見送ったきりずっと無言の加賀。
気になったシェイラが問いかける。
「いやー……今更だけどなんで相手は八木の名前しってたのかなーって」
「………あー」
「八木は貴族の仕事も受けてるって言うし……でもまずくね?」
八木様。
相手は八木の事を最初から名前で呼んでいた、いま思えば引っかかるところではあるがもう八木は出発してしまっており、今頃は貴族街と一般街をしきる門の向こう側、後の祭りである。
「領主の館並みに広いなあ……」
一方貴族の館についた八木応接室へと通されていた。
出されたお茶を飲みつつ待つことしばし、扉をたたく音が聞こえ八木が軽く返事をすると扉をあけ女性が入ってくる。
「八木様、お待たせいたしました。」
入ってきたのは依然助けた女性本人であった。
軽く挨拶をかわし、椅子に座る女性。
「リーザ = フェーエンベルガーと申します。リーザと及びくださいな」
名乗って無かった事を謝罪し、改めて名を名乗る女性。
彼女はフェーエンベルガー家の長女であるそうな、ただ兄がいるため自分が家を継ぐことはなく、わりと自由気ままに暮らせている、との事。
「へぇ……鎧を作っていると」
「ええ、お恥ずかしながら……どちらかと意匠のほうがメインなのですけど、小さいころに少し触れて以来ずっとのめり込んでいまして……実は本日及びしたのはお礼はもちろんなのですが、意匠について相談できたらなと思ったからなのです」
その言葉を聞いて私で良ければ喜んでと承諾する八木。
そのまましばらく話込み、話題は八木の背中の文様にうつっていく。
「じつは八木様の背中の文様を一目みて気に入ってしまいまして……ただ八木様は神の落とし子、その文様をそのまま使用することは出来ません」
「あぁ……消えてしまうのですね」
神の落とし子の性質の一つが障害となりローゼは鎧のその文様を刻むことができないでいた。
ものは試しにと八木が模様を描いてみるが、やはり消えてしまう。
「少し休憩にしましょうか」
少し気落ちした様子で休憩を提案するローザ。
八木もずっと話して為喉が渇いていたおり、ひとまず休憩となる。
「あまり気落ちしないでください……ほかの意匠についてはいくつか心当たりがあります、俺で良ければ相談に乗りますよ」
「そう、ですか。ありがとうございます……実は一つだけ折り入ってお願いしたい事がございまして。休憩が終わったら聞いていただけると……」
ぐいっと茶を一気に飲み干す八木。
そして笑顔で俺で良ければ喜んでと答えるのであった。
「えっと……ちょっと話すのはお恥ずかしいのですが」
耳まで真っ赤になり、顔を伏せ気味にするローザ。
(うひゃー……可愛いなあ、おい。加賀も見習えってんだ)
「その……私、八木様の……」
(八木様の? 八木様のなんだ。心が欲しいってか!?)
顔には何とか出さないでいるが八木のテンションはうなぎ登りである。
「私、八木様の……」
そこまで言うとローザは意を決したように顔を上げ、そっと八木の手を取り目を合わせ、言葉を続けた。
「皮が欲しいの」
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