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85話 「ダンジョン再び 6」
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「おっと、こっちも見てくれよ」
そしてラヴィにばかり構えば反対側に居るギュネイとヒルダへの対応が疎かになる。
二人は地竜の注意が向いてないのを良いことに、左前足の鱗の薄い部分を狙い、剣を突き刺していた。
地竜が動きあぐねているのを見て、四方八方に散っていった他の者も物陰から攻撃を開始する。
入り口からはあまり分からなかったが所々に柱や崖のような物が存在し地形を利用しながら戦えるようだ。
先端ににどろりとした液体を纏い、甲高い音を立て空気を切り裂き飛来するいくつもの矢は分厚い鱗を貫き肉へと突き刺さる。
狙う箇所をあらかじめ示しわせていたのだろう、矢は全て後足の片方に集中していた。
空中にぷかりと浮かぶいくつもの水球。
杖の先端に纏わりつく冷気を帯びた淡い光。
魔法を扱えるものはソシエとロレンを除いて発動直前で魔法を維持している、前衛組に何かあった際にとっさに援護にはいる為だろう。
ロレンは少し距離を取りラヴィの傷を癒やしていく、距離の関係か治療には手間取っているようだが確実にラヴィの傷は癒えて行く。
そしてソシエの頭上に浮かぶ赤熱した長大な棒状の光。
普段使う魔法よりも数段長い詠唱と膨大な魔力を以って発動したその魔法をソシエは地竜に向けて放つ。
放たれた矢の如く加速する赤熱した光は地竜の後ろ足へと吸い込まれるように向かっていく、そして当たるかに見えた直前、突然何かに散らされ光が細く、減衰して行く。
ドラゴン系はいずれも魔法に対する抵抗力が高い、下位の竜とは言えその抵抗力は備わっていたようである。
最初に放たれた雷の魔法もあまり堪えた様子がなかったのはその抵抗力によるものなのだろう。
火花が散り、焼けた鉄板に肉を押し当てたような音が辺りに響く。ソシエが放った魔法は減衰されながらも地竜の甲殻を赤熱させる。
地竜は今までにない大きな悲鳴を上げ無茶苦茶に暴れ出した。
「グォッ」
激しく暴れる地竜の体当たりを受けてしまったラヴィ。
握っていたロープは手を離れ、自身は10m以上はじき飛ばされてしまう。
転がりながらも身を起こして顔を上げると、地竜はラヴィに向かい角を向け突進しようとしていた。
「水の精霊よ……」
聞き慣れない言語で精霊に呼びかけるシェイラ。
咄嗟に盾を構えたラヴィであるが、それで地竜の突進を凌ぎきれるとは思えない。
魔法を使うなら今だと判断したのだ。
意志を持ったように蠢く水球から幾つもの水柱が上がる。それは凄まじい水流となってラヴィへと向かう地竜を押し流して行く。
地竜の突進はラヴィからそれ、地面に溝を掘るに留まる。
地竜は諦めなかった。首をしならせ鞭の様に角をラヴィに叩きつける、だが普通の相手であれば十分有効なその攻撃もラヴィに対しては悪手。
「ツカ、まえタ」
「ラヴィ! そのまま固定しといて!」
地面を滑りながらも振るわれた角を盾で受け止め、そのままガッシリと脇に抱えるラヴィ。
そこにイーナの魔法が発動し地面に溜まっていた水ごと地竜の後ろ半分を氷漬けにする。
万全の地竜であればさほど苦労する事無く氷から脱する事が出来た。だが後脚に攻撃を集中されたことが影響し氷から中々抜け出せないでいる。
動けなくなった地竜はただの的である。
残った前脚の鱗の薄い部分に矢が剣が次々と突き立てられていく。
「タフすぎだろ……でもそろそろ」
前脚をいくら攻撃しようとも弱った様子を見せない地竜。
氷にもヒビが目立つようになり、このまま行けば氷から逃げ出しのは目に見えていた。
だが、ここで変化が起きる。
急に呼吸が荒くなり口から泡を吹き出した地竜。
矢に塗っていた毒がようやく効き始めたのだ。
抵抗力が弱まったのを見てラヴィは角を掴んだまま後ろへと徐々に下がっていく。
それに連れまるでスッポンか何かのように伸びていく地竜の首。
「おっし、二人とも頼んだ!」
伸びきった所でギュネイが声を上げる。
その声を受けていつの間にか高台へと登っていたアントンとアルヴィンの二人が手に武器を持ち高台から飛び降りる。
狙うは伸びきって甲殻の重なりがなくなった首である。
「ふんぬっ」
最初に攻撃を当てたのはアントンである、空中で体をひねり落下速度に遠心力を加えた槌を地竜の首へと叩き込んだ。
鈍く重い激突音が響き、地竜の首を覆っていた甲殻がはじけ飛ぶ。
そこに一拍遅れてアルヴィンの持つ剣が骨と骨隙間に突き刺さり、そのまま柄を両手で持ち体重を掛けて剣を捻る。
ゴキリと鈍い音が辺りに響く。
ビクリと一瞬体を震わせる地竜であったが、そのまま悲鳴を上げる事もなく地面へと倒れ込んだ。
「おつかれさん」
「やっぱ地竜はタフだよなあ」
「四肢もいでもしばらく暴れ続けるからねえ……やっぱ首をやるのが一番早いさね」
倒れたまま動かない地竜を横に誰からとでもなく座りこむ探索者達。
前衛組は元より後衛組も魔力をかなり消費しており、疲労の色が浮かんでいる。
「ロレン、すまんが手の治療だけ頼んでもいいかの」
「承りましょう」
地竜の甲殻を砕いたアントンであったがその反動で腕をかなり痛めていたようだ、腕をぶらぶらしているあたり折れているかも知れない。
「ラヴィも治療受けとけよ」
「うム」
地竜の攻撃を何度かその身で受けていたラヴィ。
途中で治療を受け出血は止まっているがまだ完治したわけではない。
皆疲労していたり怪我をしたりと楽勝とまでは行かなかったが、それでも戦闘不能者が出るなどの大きな損害はない。
治療と休憩が終われば後はお楽しみの時間が待っている。
何せ居たのはドラゴンだ、皆期待に胸を膨らませるのであった。
そしてラヴィにばかり構えば反対側に居るギュネイとヒルダへの対応が疎かになる。
二人は地竜の注意が向いてないのを良いことに、左前足の鱗の薄い部分を狙い、剣を突き刺していた。
地竜が動きあぐねているのを見て、四方八方に散っていった他の者も物陰から攻撃を開始する。
入り口からはあまり分からなかったが所々に柱や崖のような物が存在し地形を利用しながら戦えるようだ。
先端ににどろりとした液体を纏い、甲高い音を立て空気を切り裂き飛来するいくつもの矢は分厚い鱗を貫き肉へと突き刺さる。
狙う箇所をあらかじめ示しわせていたのだろう、矢は全て後足の片方に集中していた。
空中にぷかりと浮かぶいくつもの水球。
杖の先端に纏わりつく冷気を帯びた淡い光。
魔法を扱えるものはソシエとロレンを除いて発動直前で魔法を維持している、前衛組に何かあった際にとっさに援護にはいる為だろう。
ロレンは少し距離を取りラヴィの傷を癒やしていく、距離の関係か治療には手間取っているようだが確実にラヴィの傷は癒えて行く。
そしてソシエの頭上に浮かぶ赤熱した長大な棒状の光。
普段使う魔法よりも数段長い詠唱と膨大な魔力を以って発動したその魔法をソシエは地竜に向けて放つ。
放たれた矢の如く加速する赤熱した光は地竜の後ろ足へと吸い込まれるように向かっていく、そして当たるかに見えた直前、突然何かに散らされ光が細く、減衰して行く。
ドラゴン系はいずれも魔法に対する抵抗力が高い、下位の竜とは言えその抵抗力は備わっていたようである。
最初に放たれた雷の魔法もあまり堪えた様子がなかったのはその抵抗力によるものなのだろう。
火花が散り、焼けた鉄板に肉を押し当てたような音が辺りに響く。ソシエが放った魔法は減衰されながらも地竜の甲殻を赤熱させる。
地竜は今までにない大きな悲鳴を上げ無茶苦茶に暴れ出した。
「グォッ」
激しく暴れる地竜の体当たりを受けてしまったラヴィ。
握っていたロープは手を離れ、自身は10m以上はじき飛ばされてしまう。
転がりながらも身を起こして顔を上げると、地竜はラヴィに向かい角を向け突進しようとしていた。
「水の精霊よ……」
聞き慣れない言語で精霊に呼びかけるシェイラ。
咄嗟に盾を構えたラヴィであるが、それで地竜の突進を凌ぎきれるとは思えない。
魔法を使うなら今だと判断したのだ。
意志を持ったように蠢く水球から幾つもの水柱が上がる。それは凄まじい水流となってラヴィへと向かう地竜を押し流して行く。
地竜の突進はラヴィからそれ、地面に溝を掘るに留まる。
地竜は諦めなかった。首をしならせ鞭の様に角をラヴィに叩きつける、だが普通の相手であれば十分有効なその攻撃もラヴィに対しては悪手。
「ツカ、まえタ」
「ラヴィ! そのまま固定しといて!」
地面を滑りながらも振るわれた角を盾で受け止め、そのままガッシリと脇に抱えるラヴィ。
そこにイーナの魔法が発動し地面に溜まっていた水ごと地竜の後ろ半分を氷漬けにする。
万全の地竜であればさほど苦労する事無く氷から脱する事が出来た。だが後脚に攻撃を集中されたことが影響し氷から中々抜け出せないでいる。
動けなくなった地竜はただの的である。
残った前脚の鱗の薄い部分に矢が剣が次々と突き立てられていく。
「タフすぎだろ……でもそろそろ」
前脚をいくら攻撃しようとも弱った様子を見せない地竜。
氷にもヒビが目立つようになり、このまま行けば氷から逃げ出しのは目に見えていた。
だが、ここで変化が起きる。
急に呼吸が荒くなり口から泡を吹き出した地竜。
矢に塗っていた毒がようやく効き始めたのだ。
抵抗力が弱まったのを見てラヴィは角を掴んだまま後ろへと徐々に下がっていく。
それに連れまるでスッポンか何かのように伸びていく地竜の首。
「おっし、二人とも頼んだ!」
伸びきった所でギュネイが声を上げる。
その声を受けていつの間にか高台へと登っていたアントンとアルヴィンの二人が手に武器を持ち高台から飛び降りる。
狙うは伸びきって甲殻の重なりがなくなった首である。
「ふんぬっ」
最初に攻撃を当てたのはアントンである、空中で体をひねり落下速度に遠心力を加えた槌を地竜の首へと叩き込んだ。
鈍く重い激突音が響き、地竜の首を覆っていた甲殻がはじけ飛ぶ。
そこに一拍遅れてアルヴィンの持つ剣が骨と骨隙間に突き刺さり、そのまま柄を両手で持ち体重を掛けて剣を捻る。
ゴキリと鈍い音が辺りに響く。
ビクリと一瞬体を震わせる地竜であったが、そのまま悲鳴を上げる事もなく地面へと倒れ込んだ。
「おつかれさん」
「やっぱ地竜はタフだよなあ」
「四肢もいでもしばらく暴れ続けるからねえ……やっぱ首をやるのが一番早いさね」
倒れたまま動かない地竜を横に誰からとでもなく座りこむ探索者達。
前衛組は元より後衛組も魔力をかなり消費しており、疲労の色が浮かんでいる。
「ロレン、すまんが手の治療だけ頼んでもいいかの」
「承りましょう」
地竜の甲殻を砕いたアントンであったがその反動で腕をかなり痛めていたようだ、腕をぶらぶらしているあたり折れているかも知れない。
「ラヴィも治療受けとけよ」
「うム」
地竜の攻撃を何度かその身で受けていたラヴィ。
途中で治療を受け出血は止まっているがまだ完治したわけではない。
皆疲労していたり怪我をしたりと楽勝とまでは行かなかったが、それでも戦闘不能者が出るなどの大きな損害はない。
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