3 / 156
木の中にいる
「2話」
しおりを挟む
あれからそろそろ1週間がたつ。
さすがに毎日地面から養分吸っていると、この木の体にもいい加減慣れてくるものだね。あまり慣れたくはなかったけど……はははっ。
ちなみに今何をしているかというと寝起きに朝食というなの養分をちゅーちゅー地面から吸っているところだったりする……これ腹が膨れるのはいいんだけどやっぱ味気ないというか、そもそも根っこだから味覚もくそもないというか……。
いかんいかん、飢えと渇きから解放されるだけでも良しとせねば。
しかし暇だ。
てかね養分吸うの時間掛かりすぎなんだよね。 食事はさ、ほら手を動かして、噛んで味わってと楽しみがあるじゃない? でもこれただ黙って座ってるしかないんだよね。
うん、暇だ。
暇すぎるので養分吸ってる自分の手足の様子をまじまじと見てみる。
元気に根っこ生やしてますね、はい。
いつも通りですねーふふふー。
本当慣れるもんだよね、ほんと。
はふうと大きなため息が出た。
「最初は本当に神様を呪ったけど……まあ便利っちゃ便利な体だよなあ……便利なんだけど」
……なんというか地味だ、こういかにも吸ってます! って感じで根っこがぐいんぐいん動いたりとか、なんかないのだろうか?
異世界きてこんな体になって出来ることと言えば根っこ生やしてちゅーちゅー吸うだけという。 地味すぎる。
ううむ……せめてぱぱっと一気に養分吸ったり出来ないもんかね? なんて俺が考えたその瞬間だった。
「……っうお!?」
俺の考えに反応したのだろうか根っこが一気に波打ち、養分を吸い始めたのだ。
なんだよやれば出来るじゃまいかマイボディ。
これなら食事?もすぐ終わるなー……って、あれ?
もうお腹はいっぱいな感じなんですけど……?
え、待ってなんか吸いすぎじゃない? な、なんか体がミチミチいいだしたんですけど!?
「おおおぉぉぉっおぉお!?」
地面から急激に養分を吸い上げたからか木の部分がミチミチと怖い音を立てて膨れ上がっていく。
右半身は当初左半身と大差ない太さだった、だがものすごい勢いで膨れ上がったそれは既に元の2倍ほどの太さへとなっている。
「すっごい吸ってる! けどすっごい勢いで枯れてね!?」
そして異変が起きたのは俺の体だけじゃなかったらしい、自分を中心にして半径10mほどの範囲にある草木が猛烈な勢いで枯れだしたのだ。
これ、もしかしてもしかしなくても俺のせいだよね……。
なんか養分というか生命力とかそんなのまで吸っている気がする。
1分ほどで根っこは養分だか生命力だかを吸うのをやめる。
吸っている間ずっと膨れ続けた手足は最終的に元の3倍ぐらいになっていた。
「やべえ……こんなん出来たのかよ」
ごんぶとになった手足をしげしげと眺める。
……なんかもうすっごいマッチョだ。 木なんだけどすっごい肉久々しいというか……すっごい詰まってそうな感じ。
「ところでさっきからこう……力が溢れてやばいってか、なんかハイになってきたんだけど。 これやばくね?」
そう、吸いきってからというもの何というか力が溢れてきて、全能感というかなんか色々と滾っていてやばい。
じっとしているのが辛い……なんだこれ、何か発散させないと不味いんじゃないのこれ。
でも発散させるといったってどうやって……と考えて握りしめた自分の拳を見て、そして目の前にある干からびた感じの大木を見る。
俺は深く考えることなくおもむろに拳を振りかぶり、大木に叩きつけてみた。
「ほぁっ!?」
何気なくやったことだけど思ってた以上の結果がまっていた。
ゴリュッという音と共に拳大に幹がえぐれちゃったのだ……これ、やばい。てか手がむちゃくそ痛い。これ折れたんじゃね?ってぐらい痛い!
攻撃力だけじゃなく防御力もあげてくれよとしばし悶え苦しむ俺であった。
数分後、拳の痛みはすっかり引いていた。
なんていうかこれ回復力?みたいのも上がってる気がする。そうじゃなければあの痛みがこんな短時間で引くはずないし……正直折れたかと思ったね、ほんと。
あと防御力上がってないかと思ったけど、実は上がってるかも知れない。
木の幹をあんだけえぐるとなると鉄製のハンマー叩きつけるでもしないと無理なんじゃないかな? 当然そんな威力でぶっ叩けば拳が無事ですむわけもなく、それで指がぼっきぼきになってない……ただ痛いだけで済んだんだ。防御力も上がっていると考えていいだろう。
しかし……地味な能力かと思ったけどこんな隠し球があったとは。
予想外の能力に思わず頬が緩んでにやけてしまう。
「これ実はチートなんじゃ……いや、まて、待つんだ俺。その判断はまだ早いぞ」
俺はにやけた頬をぴしゃりと叩き、自分に言い聞かせるように呟いた。
何せ比較対象がない。
チートに見えて実はくそ雑魚ナメクジな可能性もある……。
変に調子に乗ると後で手痛いしっぺ返しを食らいかねない。
「とにかく人里に行かんことにはどうにもならんか」
比較対象を探すにしても、これからの生活をどうするかにしてもこのまま森の中にいたんじゃどうしようもない。
ここ10日間ぐらいずっと歩き続けて未だに道を見つけることすら出来ていない……けど。
「でも……この体なら」
そう、さっき木をぶん殴ったときの力。あれがおそらく足でも発揮できるはずだ。片足だけってのがネックだけど上手く行けば……。
そう思い俺は前歩を見据え右足へとぐっと力を込めた。
すると右足は地面をえぐり、まるで何かが爆発したかのような加速度を俺に与えていた。
「うおぉおぉおお!? いってぇぇええっ!!」
予想以上の加速に最初は戸惑って体をあちこちぶつけたけど……何とかコツを掴み木々を避けながら駆け出すことに俺は成功していた。
「やっぱりだ! 全力で走ってるのに全っ然疲れない!」
速度もそうだけど、この右半身は全く疲れなというものを感じなかった。まさに期待通り……いや、期待以上のパフォーマンスを見せてくれる。
高速で移動しているのにまったく疲れない、そのことに俺はまるで今までの鬱屈を晴らすかのように夢中で森の中を駆け抜けた。
さすがに毎日地面から養分吸っていると、この木の体にもいい加減慣れてくるものだね。あまり慣れたくはなかったけど……はははっ。
ちなみに今何をしているかというと寝起きに朝食というなの養分をちゅーちゅー地面から吸っているところだったりする……これ腹が膨れるのはいいんだけどやっぱ味気ないというか、そもそも根っこだから味覚もくそもないというか……。
いかんいかん、飢えと渇きから解放されるだけでも良しとせねば。
しかし暇だ。
てかね養分吸うの時間掛かりすぎなんだよね。 食事はさ、ほら手を動かして、噛んで味わってと楽しみがあるじゃない? でもこれただ黙って座ってるしかないんだよね。
うん、暇だ。
暇すぎるので養分吸ってる自分の手足の様子をまじまじと見てみる。
元気に根っこ生やしてますね、はい。
いつも通りですねーふふふー。
本当慣れるもんだよね、ほんと。
はふうと大きなため息が出た。
「最初は本当に神様を呪ったけど……まあ便利っちゃ便利な体だよなあ……便利なんだけど」
……なんというか地味だ、こういかにも吸ってます! って感じで根っこがぐいんぐいん動いたりとか、なんかないのだろうか?
異世界きてこんな体になって出来ることと言えば根っこ生やしてちゅーちゅー吸うだけという。 地味すぎる。
ううむ……せめてぱぱっと一気に養分吸ったり出来ないもんかね? なんて俺が考えたその瞬間だった。
「……っうお!?」
俺の考えに反応したのだろうか根っこが一気に波打ち、養分を吸い始めたのだ。
なんだよやれば出来るじゃまいかマイボディ。
これなら食事?もすぐ終わるなー……って、あれ?
もうお腹はいっぱいな感じなんですけど……?
え、待ってなんか吸いすぎじゃない? な、なんか体がミチミチいいだしたんですけど!?
「おおおぉぉぉっおぉお!?」
地面から急激に養分を吸い上げたからか木の部分がミチミチと怖い音を立てて膨れ上がっていく。
右半身は当初左半身と大差ない太さだった、だがものすごい勢いで膨れ上がったそれは既に元の2倍ほどの太さへとなっている。
「すっごい吸ってる! けどすっごい勢いで枯れてね!?」
そして異変が起きたのは俺の体だけじゃなかったらしい、自分を中心にして半径10mほどの範囲にある草木が猛烈な勢いで枯れだしたのだ。
これ、もしかしてもしかしなくても俺のせいだよね……。
なんか養分というか生命力とかそんなのまで吸っている気がする。
1分ほどで根っこは養分だか生命力だかを吸うのをやめる。
吸っている間ずっと膨れ続けた手足は最終的に元の3倍ぐらいになっていた。
「やべえ……こんなん出来たのかよ」
ごんぶとになった手足をしげしげと眺める。
……なんかもうすっごいマッチョだ。 木なんだけどすっごい肉久々しいというか……すっごい詰まってそうな感じ。
「ところでさっきからこう……力が溢れてやばいってか、なんかハイになってきたんだけど。 これやばくね?」
そう、吸いきってからというもの何というか力が溢れてきて、全能感というかなんか色々と滾っていてやばい。
じっとしているのが辛い……なんだこれ、何か発散させないと不味いんじゃないのこれ。
でも発散させるといったってどうやって……と考えて握りしめた自分の拳を見て、そして目の前にある干からびた感じの大木を見る。
俺は深く考えることなくおもむろに拳を振りかぶり、大木に叩きつけてみた。
「ほぁっ!?」
何気なくやったことだけど思ってた以上の結果がまっていた。
ゴリュッという音と共に拳大に幹がえぐれちゃったのだ……これ、やばい。てか手がむちゃくそ痛い。これ折れたんじゃね?ってぐらい痛い!
攻撃力だけじゃなく防御力もあげてくれよとしばし悶え苦しむ俺であった。
数分後、拳の痛みはすっかり引いていた。
なんていうかこれ回復力?みたいのも上がってる気がする。そうじゃなければあの痛みがこんな短時間で引くはずないし……正直折れたかと思ったね、ほんと。
あと防御力上がってないかと思ったけど、実は上がってるかも知れない。
木の幹をあんだけえぐるとなると鉄製のハンマー叩きつけるでもしないと無理なんじゃないかな? 当然そんな威力でぶっ叩けば拳が無事ですむわけもなく、それで指がぼっきぼきになってない……ただ痛いだけで済んだんだ。防御力も上がっていると考えていいだろう。
しかし……地味な能力かと思ったけどこんな隠し球があったとは。
予想外の能力に思わず頬が緩んでにやけてしまう。
「これ実はチートなんじゃ……いや、まて、待つんだ俺。その判断はまだ早いぞ」
俺はにやけた頬をぴしゃりと叩き、自分に言い聞かせるように呟いた。
何せ比較対象がない。
チートに見えて実はくそ雑魚ナメクジな可能性もある……。
変に調子に乗ると後で手痛いしっぺ返しを食らいかねない。
「とにかく人里に行かんことにはどうにもならんか」
比較対象を探すにしても、これからの生活をどうするかにしてもこのまま森の中にいたんじゃどうしようもない。
ここ10日間ぐらいずっと歩き続けて未だに道を見つけることすら出来ていない……けど。
「でも……この体なら」
そう、さっき木をぶん殴ったときの力。あれがおそらく足でも発揮できるはずだ。片足だけってのがネックだけど上手く行けば……。
そう思い俺は前歩を見据え右足へとぐっと力を込めた。
すると右足は地面をえぐり、まるで何かが爆発したかのような加速度を俺に与えていた。
「うおぉおぉおお!? いってぇぇええっ!!」
予想以上の加速に最初は戸惑って体をあちこちぶつけたけど……何とかコツを掴み木々を避けながら駆け出すことに俺は成功していた。
「やっぱりだ! 全力で走ってるのに全っ然疲れない!」
速度もそうだけど、この右半身は全く疲れなというものを感じなかった。まさに期待通り……いや、期待以上のパフォーマンスを見せてくれる。
高速で移動しているのにまったく疲れない、そのことに俺はまるで今までの鬱屈を晴らすかのように夢中で森の中を駆け抜けた。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~
御峰。
ファンタジー
転生を果たした主人公ノアは剣士家系の子爵家三男として生まれる。
十歳に開花するはずの才能だが、ノアは生まれてすぐに才能【アプリ】を開花していた。
剣士家系の家に嫌気がさしていた主人公は、剣士系のアプリではなく【一秒クッキング】をインストールし、好きな食べ物を食べ歩くと決意する。
十歳に才能なしと判断され婚約破棄されたが、元婚約者セレナも才能【暴食】を開花させて、実家から煙たがれるようになった。
紆余曲折から二人は再び出会い、休息日を一緒に過ごすようになる。
十二歳になり成人となったノアは晴れて(?)実家から追放され家を出ることになった。
自由の身となったノアと家出元婚約者セレナと可愛らしい子犬は世界を歩き回りながら、美味しいご飯を食べまくる旅を始める。
その旅はやがて色んな国の色んな事件に巻き込まれるのだが、この物語はまだ始まったばかりだ。
※ファンタジーカップ用に書き下ろし作品となります。アルファポリス優先投稿となっております。
気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした
高坂ナツキ
ファンタジー
衝撃を受けた途端、俺は美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生していた!?
これは、自分が制作にかかわっていた美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生した主人公が、報われないサブヒロインを救うために人生を賭ける話。
日常あり、恋愛あり、ダンジョンあり、戦闘あり、料理ありの何でもありの話となっています。
おばさん冒険者、職場復帰する
神田柊子
ファンタジー
アリス(43)は『完全防御の魔女』と呼ばれたA級冒険者。
子育て(子どもの修行)のために母子ふたりで旅をしていたけれど、子どもが父親の元で暮らすことになった。
ひとりになったアリスは、拠点にしていた街に五年ぶりに帰ってくる。
さっそくギルドに顔を出すと昔馴染みのギルドマスターから、ギルド職員のリーナを弟子にしてほしいと頼まれる……。
生活力は低め、戦闘力は高めなアリスおばさんの冒険譚。
-----
剣と魔法の西洋風異世界。転移・転生なし。三人称。
一話ごとで一区切りの、連作短編(の予定)。
-----
※小説家になろう様にも掲載中。
才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!
にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。
そう、ノエールは転生者だったのだ。
そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
転生したら鎧だった〜リビングアーマーになったけど弱すぎるので、ダンジョンをさまよってパーツを集め最強を目指します
三門鉄狼
ファンタジー
目覚めると、リビングアーマーだった。
身体は鎧、中身はなし。しかもレベルは1で超弱い。
そんな状態でダンジョンに迷い込んでしまったから、なんとか生き残らないと!
これは、いつか英雄になるかもしれない、さまよう鎧の冒険譚。
※小説家になろう、カクヨム、待ラノ、ノベルアップ+、NOVEL DAYS、ラノベストリート、アルファポリス、ノベリズムで掲載しています。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる