家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう

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「16話」

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ゴブリンの姿を確認した俺は一度扉から離れる。

「ポーションはまだある」

いくつ使ったか忘れていたが、バックパックを漁ると持ってきたポーションはまだ5つ程残っていた。


(こいつら倒せばきっと……! 倒す、絶対に倒す!)

負けるのは許されない。
必ずこいつらを倒さないといけない。

出来るだけ勝率を上げるにはどうすれば良い? 俺は答えを求めて奴らをじっと観察する。


ゴブリンは3体。
3体共に手に粗末な刃物が握られている。


武器だ、初めて武器を持つ相手だ、どうする? 武器を持っているがどうすれば良い?

気にするな、こっちの防具は防刃仕様だ刺さりはしない。
刺さったとしても重要な箇所はプロテクターで守っている、ダメージは少ないはず。


まず1体確実に仕留めよう、可能なら奇襲がしたい。

奴らは皆こちらに背を向けている。だがどう言う理屈かは知らないが、こいつらは部屋に入ると必ずこちらに気が付く。背後から忍び寄るのは不可能だ。 部屋に踏み込むと同時に振り返るだろう。

ではどうするか? 扉を開けておいて距離を取って助走しよう。
奴らが振り返ったときには既に射程内だ。

1体に盾を叩きつけて、もう1体に全力で攻撃をする。
もう1体は気にするな、ダメージは覚悟の上だ。

大丈夫だ、俺は冷静だ、きっと奴らを倒せる。倒さないといけない。クロが待ってる、奴らを殺そう。


「ふーっ……ふーっ……」

ポーションを飲み干し、扉を開けて距離を取る。
まだ動いていないにも関わらず、呼吸が荒くなる。 血走ってるだろう瞳はゴブリンをじっと見つめて離さない。

妙に時間の流れが遅く感じる中、俺は身を屈め……そして両足に一気に力を込め、ゴブリンに向け飛び出した。



「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ!!」


無意識に叫んでいた。

部屋に一歩踏み込み、そこから全速力でゴブリンへと向かう。

俺の射程に奴らが入るのと、振り向くのは同時だった。

「あ゛っ!」

俺はまず左端にいる奴に向けて盾を全力で突き出す。
そして振りかぶっていた鉈を中央のゴブリンに向けて叩きつけた。

ゴブリンも俺に対し刃物を突き出そうとしていた、だがそれよりも早く俺の攻撃がヒットする。

盾を顔面に受けたゴブリンは吹き飛ばされ壁へ激突し、濡れた音を立てる。
鉈を受けたゴブリンは頭がザクロの様に割れ、はじけ飛んだ。


そして一拍遅れて俺の右足に痛みが走った。

残ったゴブリンが俺の足に刃物を突き立てていたのだ。
が、刃は通っていない。痛みは尖った金属の先端を打ち付けられた為だ。

ゴブリンはさらに追撃するつもりなのだろう、刃物を振り上げると再び俺に突き立てようとして――

「っぁ!」

――振りはらうように振るった鉈に腕と顔を引き裂かれ、はじき飛ばされる様に地面に倒れ込んだ。

そして身を起こす暇も無く喉を踏み抜かれ、ビクリと身を震わせるとそれっきり動かなくなる。

「……」

壁に激突したゴブリンはズリズリと壁を擦りながら落ちていき、床に座り込むような体勢のまま動かなくなっていた。

俺は念の為そいつの首に鉈を叩き込んでおいた。



「……勝った?」

余りにもあっさりと終わった戦いに、理解が追いつかない。

ゴブリンの死体をつま先で突いたり、あたりをキョロキョロ見渡すも俺以外に動く物はいない。

そこまでしてやっと勝てたのだと実感が湧いてきた。

「……そ、そうだ! 何かないのか? 宝箱とか何かっ??」

明らかに雰囲気の違う扉だったんだ。
それにゴブリンとか明らかにモンスターなのが出て来たんだ、今までと違う何かがあったって良いはずだ。

俺はそう考えて何かないかと必死に辺りを見渡した。
そして見つけた。

「扉が現れた……?」

俺が入ってきた扉に対し、部屋の反対側の壁に扉が新たに出現していたのだ。
入ってきた時に無かったのは間違いない……あの扉の向こうに何かがあるのか、それとも待っているのか。

はやる気持ちを抑え、俺はそっと扉に手を掛けた。



「……部屋?」

扉の先には部屋があった。
それも1階の休憩所と同じぐらい広い部屋だ……中に入ってみるが部屋は殺風景で1階の様に噴水があるわけでもなく、ただただ殺風景――



「突破おめでとう」

――殺風景だったはず、部屋には何もなかったはずであった。

それはあたかも最初からそこに居たかのような雰囲気で存在していた。

人型の人の言葉を話す生き物。

そいつは拍手をしながらそう言うと俺へと近付いてきた。
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